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第42話 神殿に巣食う悪意



 パンチャとベアル、エレファは城門へ。

 俺とラビィー、シープは街の中に入り込んだ魔物を退治していく。


「またつまらぬ物を切ってしまったわ」


「前から思っていたけど、お前ら昭和、平成アニメに詳しすぎない?」


 住民を避難させながらアサルトライフルで敵を倒す。ヘッドショットが次々と決まり、魔物を一掃しながら街中を走る俺。


 くぅ~、異世界ファンタジーはこうでないと。

 その時、視界の中に神殿の一部が崩れる様子が飛び込んできた。


「リンネ神殿が魔物に襲われてる。神官戦士どもは何やってんだ!」


「今、あそこには牢屋に閉じ込められた子供たちが……」


 シープの顔が一気に青ざめる。


「先生、シープを連れて子供たちを助けてあげて」


「ラビィー様! 今はそんな場合では……」


「シープ。普通の勇者は牢屋にいる少ない子供たちを捨てて、たくさんの市民を守るかもしれない。でも、私は違う。たくさんの市民も助け、牢屋の子供たちも助ける。それが現勇者ーーマンシュリー・ラビリティーのやり方。どう、先生。私、勇者っぽい?」


「その余計な一言が泣ければ全米が泣いたレベルで良かったと思うよ」


「ラビィー様、感謝します」


 短くそう言い放ったシープは横道に逸れ、リンネ神殿を目指し、走る速度を上げる。その様子を見ていたラビィー。


「先生。シープは何か隠してる。まだ私たちに言えないことかもしれない。だから、精一杯フォローしてあげて」


 ん? なんとなくだけど、ラビィーが不機嫌そうだけど。しかも、シープが隠し事? あのためらいもなく下ネタを言うキャラで隠し事?


 う~ん、そうなのか? まあ、ラビィーにとってはシープはお姉ちゃんだからな。

 いつもと違う雰囲気とか分かるのか? とりあえず了解っと。


「分かった。ラビィーも気をつけてな」


 そう言って俺はシープの後を追った。

 

______________________________________


 崩れかけたリンネ神殿の中を駆け抜ける。石床には血痕と瓦礫。

 さっきまで偉そうにしていた神官たちの姿はなく、代わりに魔物の死体と、逃げ遅れたのか腰を抜かしている神官が数人転がっていた。


「た、助けてくれ! 魔物が地下に……」


「知ってる。お前らが隠してた“都合の悪いもの”がある場所だろ」


 泣きついてきた神官を無視して、俺は隠し通路へ滑り込む。

 階段を飛ぶように下りた瞬間、鉄のぶつかる音と、子供たちの悲鳴が耳をつんざいた。


「いやああああっ!」


「黙れ! お前らは神に捧げる供物なんだよ!」


 その声を聞いた瞬間、俺の中で何かが切れた。

 地下牢の前では、三匹の魔物と数人の神官が入り乱れていた。


 檻は半分壊れ、子供たちは隅に固まって震えている。

 その前に立つシープは、血のついた鎖を片手に、いつもの柔らかい笑顔を完全に消していた。


「麒麟様!」


「遅くなった!」


「焦らしプレイは大好きですわ」


「緊張感がなさすぎじゃねぇ?」


 なんだ、いつも通りのシープじゃん。ラビィーの心配は杞憂だったね。

 俺はアサルトライフルを構え、シープの横を抜けるように一体目の魔物の頭を撃ち抜く。

 

 続けざまに二体目、三体目。

 乾いた銃声が地下に響き、魔物の巨体が床に崩れ落ちた。


「うおぉ、今日の俺、ちょっと主人公っぽくない?」


「今だけは認めますわ」


「今だけかよ」


 だが、安心するには早かった。

 奥の祭壇らしき場所から、あの若い神官がひとりの小さな女の子を抱え上げ、喉元に短剣を突きつけていた。


「く、来るな! 近づけばこのガキを殺すぞ!」


「うわぁ、悪役として百点満点の台詞だな、お前」


「ふざけるな! お前たちに何が分かる! この子供たちは神具を起動するための贄だ! 神官長様はこの力で、この街を、いやこの国を支配なさる!」


 チョロ! はい、証拠ゲット。

 というか最悪な情報までセットでどうもありがとう。


「神具の贄だぁ? あれ? なんでお前らが神具のことを知っているんだ?」


 俺が一歩前に出ると、子供を抱えている神官がビクッと震える。

 いいから子供を離せよ。もう完全に詰んでんだろ。まだ神殿の外は大混乱しているんだから、お前らごときに時間を掛けてる場合じゃないんだよ。


 その瞬間だった。

 神官の身体は宙に舞い、壁に叩きつけられた。


 子供は? 気付いたときにはシープが子供を抱きかかえていた。

 シープがとっさに動いていなければ一緒に潰されいていたかもしれない。


「……は? 何が起こったの?」


 空気が変わる。地下牢の奥、祭壇の影。

 そこから“何か”が這い出てきた。

 肉が膨れ、裂け、ねじれながら――人の形を保っている“何か”。


「……神官長、ですか?」


 シープが呟く。

 だがそれは、さっきまでのラブッターじゃない。

 ぶっちゃけ、人間の形してないやん。目は濁り、口元は裂け、脂ぎった顔がさらに醜く歪んでいるよ。


「おぉ……シープ様……そして……教育係……」


「俺の名前は覚えてないのかよ。エロ神官」


「完全に魔物に取り付かれてるみたいですわ。私、触手プレイには興味はありませんの」


「この世界は性癖をカミングアウトしないといけない法律でもあるの?」


 俺はそう言いながら神官長に向かってライフルの引き金を引く。

 しかし当たると思った瞬間、神官長の姿は俺の視界から消えていた。


「どこを見ているのかね。こっちだよ」


 声をする方へ顔を向けるとシープの髪を手に取り、匂いを嗅ぐラブッター。

 キモっ! そしてキモっ! 何してんだこいつ。全国のやってはいけない行動ランキング、ぶっちぎりで1位だろ。ていうか、イケメンでもアウトだわ。


「離れなさい! 私の身体は麒麟様に捧げていますわ」


「いや、捧げられた覚えはないからね」


 瞬時にラブッターへ攻撃を加えるシープだが、その瞬間またもやラブッターの姿が消え、シープの背後に移動していた。


「いやいや、本当に良い身体をしていますな~。少女が大人の女性へとなりつつあるこのタイミング。いや~本当にそそります」


「私はもう大人ですわ。でも、麒麟様がお望みなら剃りますわ」


「何を? いや、言わなくていい」


 まとわりつくラブッターを必死に振り払おうとするシープ。

 だが、必死になっているシープに対してラブッターは余裕に見える。次第にシープの息が上がり、とうとう片膝をついた。




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