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第41話 愛の力で完全覚醒



 次の日の朝、早速神殿に向かおうと支度をする俺たち。

 しかし、そんな穏やかな朝にならないことを俺たちはすぐに知ることになった。



 ドンドンドン、けたたましく叩かれる玄関のドア。

 静寂を破るようにドアが開かれ、正規軍の紋章を付けた兵士が慌ただしく入ってきた。


「ラビィー様、大変です。魔王軍が防衛ラインを突破し、城壁まで辿り着きました。まもなく城門が破られます」


 シープとエレファの顔が一気に青ざめる。

 ラビィー、パンチャ、ベアルの表情も一気に引き締まった。


「神官戦士部隊は何をやっているのです! なぜここまで接近を許したのですか!」


「防衛ラインにいた神官戦士部隊は部隊長が暗殺され、指揮系統が寸断され壊滅した模様。接近を許した城壁守備隊の神官戦士たちは我先にと逃げ出し、我々正規軍まで連絡が来なかったのです」


 うわぁ~、敵よりも怖いのは無能な味方とはよく言ったもんだ。

 連絡もなしって、報・連・相って言葉を知らないのかよ。

 しかも逃げんのかよ。市民を守るのが守備隊の役目だろ。


「現状はどうなっていますの?」


「正規軍が市民を避難させつつ、城門を守っていますが、いかせん圧倒的な兵数の差がありまして城門が破られるのは時間の問題かと」


 兵士と話していると外から悲鳴が聞こえてくる。時間がない。


「パンチャお姉ちゃんは覚醒して城壁の外へ。後続を断ち切ってください。ベアルちゃんは城門に行って魔物の侵入を食い止めてください。私を含め、残りの方は避難誘導をしながら街に侵入した魔物を撃破ですの」


「ちょっと待ったぁぁぁ~」


「おっと~、ここでベアルのちょっと待ったコールだぁ~。ってネタが古すぎるわ。50代以上じゃないと知らないネタだからな」


 お父さん、お母さんでも知らない人がいるかも。

 昭和の時代に集団お見合い番組があって、その番組の中で言われていたセリフなんです。

 詳しく知りたい読者はググってね。


「ごめん。あのケバスット戦の後から覚醒出来ないんだ。何回も試しているんだけど、あのぐわぁ~って上がって来る感じがしないんだ」


「擬音がぐわぁ~って。いや、なんとなく伝わるけど」


「はあぁぁぁ~? 何言ってんの、あんた」


「……パンチャが覚醒して僕はパンチャを守れない。パンチャの隣にいる資格がないんだ」


「大丈夫。中途半端に覚醒しているのがベアルだから」


「ラビィー。例えがピンポイント過ぎて俺の涙が止まらない。そしてシリアスなシーンなんだから、食べているバナナは置いておきなさい」


「パンチャどころか、国民さえ守れないんだ。僕は駄目なやつなんだ」


 ベアルにかける言葉が見つからない。

 半分とはいえ覚醒していたベアルが覚醒できなくなるのは、明らかに戦力ダウン。


 そのうえ推し(と書いて生き甲斐と読む)がパンチャが完全覚醒してベアルの助けを必要としていない。

 そりゃ男としてはカミングアウトはなかなかできないよね。気持ちは分かるぞ、ベアル。


「城門の防御は……僕一人じゃ……」


「ごちゃごちゃうるさい~。ベアル、そこに正座! そして目を閉じなさい!」


 パンチャの命令で犬のように正座するベアル。

 そして怒られるのを待つ子供のようにぎゅっと目を閉じる。


 おぉ~、これは王道の展開か? ベアルを励ますためにパンチャが頬やおでこにキスするとか? それともベアルにビンタして喝を入れるのか?

 どちらにせよ、最後はパンチャがデレるんだよな。さあ、諸君。貴重なシーンを見逃すな。


 正座しているベアルにつかつかと歩いて近づくパンチャ。

 そしてベアルの目の前に辿り着く瞬間、床に落ちていたバナナの皮で盛大にすっ転んだ。


 盛大にベアルの頭の頂点に頭突きを食らわすパンチャ。

 ものすごい音が部屋中に響く。あまりの痛さにパンチャ、ベアルともに悶絶している。


「あっ、さっき先生に言われてその辺に捨てたバナナの皮だ」


「ゴミはゴミ箱に捨てなさいって教えただろ! シリアスなシーンが台無しだよ」


「えっ? ラビたんの食べかけのバナナがあるの? あたいが最後まで食べきるから」


「こいつはこいつでブレねぇな」


 痛みから復活したパンチャが、バナナの皮を探す。

 が、俺たちの視線にすぐに気付き、取り繕う。


「いやいや、今更取り繕ってもさっきまでの緊迫感は、もう出ないから」


 それでもパンチャは一呼吸おいてまだのた打ち回るベアルに説教をし始めた。


「ベアル。あんたは私を守る、守るって言うけど、私は守ってもらう存在じゃないの。私に必要なのは隣で共に歩いてくれる存在なの。一緒にラビたんを支えてくれる、シープ姉さまやエレファのように、ラビたんが女王になった時代を共に助け合っていける存在が必要なのよ!」


 おぉ~名言出た!

 ラビィーこれはメモっておけよ。そしてここまでパンチャたちがお前を慕ってくれているんだ。平和で誰もが笑顔になる国を作らないと駄目だぞ。もちろん俺も協力するからな。


 ん? ベアルの悶絶が止まった。と思ったら、肩が小刻みに震えている。

 どうした。ラノベでよくある(俺がお前でお前が俺で)の人格交換でもなったか?


「きたきたきたーーきたーーー!」


 そう絶叫するベアル。身体中に光を身に纏い、仁王立ちをする。

 その光はパンチャが覚醒したときに放つ光と全く一緒だった。


「か、覚醒したのですの?」


「嬉しい誤算なんですけど……え~と」


「覚醒したよ。僕は天才だから! パンチャの隣に立つのは僕だよ」


「天から与えられた才能じゃなくて、天からの災いで天災の間違いだろ」


そっか、こいつ。半覚醒の時もバナナの皮で頭を打って半覚醒したんだっけ。

 ベアルらしいっちゃらしいけど、良いのか、そんなんで。




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