第4話 絶望的状況なのに会話が噛み合わないんだが
「顔と行動が状況に全く合ってないよっ。そんなに合っていないのは初めて見たわ! ついでにそんなに簡単に言うな~!」
「ごめんなさい。何を言っているのか分からないわ」
「それはラビィーさんの口癖なの?」
首を傾げ、可愛い仕草をするラビィー。
こ、こいつ、この仕草は天然か。いや、計算でやっていたら怖いけどさ。
「そんな可愛い仕草で……騙さ、されな、騙されそう……。って、今のこの状況は全く変わらないだろ~!」
「来る!」
ラビィーは短くそう言うと、向かってきた魔物達に突っ込んでいった。
俺もすぐさま銃を構え、魔物達に向かって撃ち始める。
こんなにたくさんの魔物相手に無理に照準を合わせることは無い。
とりあえず目の前の魔物の群れに向かって連射。
うん、これが正攻法だよね。で、11発撃った所で弾切れ。
カチカチと虚しい音だけが手の中で響き渡る。
「くそっ、弾切れかよ。こんな小さな銃でこの魔物の群れを相手するって無理だろぉ~!」
「1度マガジンを出して、精神を集中して弾丸を補充するイメージをする。そうすればまた使える。でも先に背中のアサルトライフルを使った方がいいと思う」
器用に敵をかわしながら1匹、また1匹と魔物を倒していくラビィーの声が俺の耳に届く。
「そういう事は先に教えてくれ! こっちはゲームでしか戦ったことがないんだから!」
「ごめんなさい。何を言っているかわからない」
「この銃口をお前に向けたいと思う事は悪いことかな?」
そう言いながら俺は背中に担いでいたアサルトライフルを魔物達に向けて撃ち始めた。アサルトライフルは思ったほど反動が少ない。
(これなら……)
アサルトライフルを脇で固定して片手で撃ちまくる。
その間にハンドガンのマガジンを空いた左手で出して弾丸の補充をする。
1度も行ったことの無い動作が滑らかかつ、スムーズに行える自分に俺は驚愕した。
だけど、今はそんな事に驚いている場合ではないね。何体倒しても次々に襲いかかってくる魔物達。
しつこいよ……。
あまりの敵の多さに俺の体力は次第に無くなっていくのが分かるし。
ラビィーを見れば無表情だが肩で息をし始めているしね。
この状況。ヤバ過ぎでしょ!
「おい、ラビィー! 必殺技とか超魔法みたいなものはないのかよ!」
「そんなファンタジー的な物があるわけない」
「欲していない知識をありがとう。って、この世界がファンタジーだろ!」
俺は銃を必死で乱射するが、一向に敵の攻撃が止まる気配はない。
(どう考えてもかなりのピンチだよな~。女の子を守るのは男の役目! それが物語、主人公の正しい行動だよな……。彼女の1人も出来なかった人生か……)
覚悟を決めた俺はラビィーを大声で呼んだ。
「ラビィー!」
俺の声に気付いたラビィーは目の前の魔物に飛び蹴りを加え、そのまま回転しながら俺の横に戻ってくる。
……カッコいいじゃないか。この世界って主人公よりカッコいいヒロインって有りなのね。
「先生、何か用? 見て分かる通り、かなり忙しいんだけど」
「お前だけじゃねぇよ。俺だって忙しかったわ。んで、用って言うのはな、俺が脱出経路を何とか作るからそこを通って逃げろ。わかったな」
ラビィーにそう告げると俺は両手に銃を構えて魔物の中に突っ込もうと駆け出そうとした。
だがその瞬間、ラビィーに後ろ襟を掴まれて首が絞まり、思いっきりタイミングを外すカッコ悪い俺。
「ぐぇ! ゴホッ、ゴホッ。なにするんだよ! お前、いい加減にしないと俺が本当に死ぬだろうが!」
「先生、どうせ死ぬつもりだった。なら、今私に殺されても同じ」
「全然違うだろ! お前だけでも助けないと。それが物語の主人公ってものだろう」
「私を助ける? ごめんなさい。何を言っているのか分からないわ」
「……殺意ってこうやって生まれるんだな。初めて知ったわ、俺」
こうしている間にも魔物達は態勢を立て直し、また少しずつ距離を詰め始めてくる。
目で周囲を確認してみるが、もはや蟻の子すら逃げられはしない。あまりの緊張感からゴクリと喉を鳴らす俺。
「おい、俺を止めたからには何か良い作戦があるんだよな?」
「ないわ」
「うわぁ~。ラビィーさん、マジパねぇっす……」
大きく息を吸い込んだ俺はもう1度覚悟を決める。
隣にいるラビィーの顔を見てみると、相変わらず無表情だがなんとなく秘めた決意が見える気がする。
(俺の物語はゲロと羞恥プレイで終わりかよ。多分カルサカ創設以来、1番短くて1番情けない教育係で語り継がれるんだろうな……。まあ悪あがきぐらいして、少しでもカッコ良い所を他の人に読んでもらうとするか)
そう思った俺は両手に持った銃のマガジンに弾丸を補充し、最後の悪あがきに備える。その様子を横目で見ていたラビィーが口を開いた。
「先生。私が突破口を開く。先生はそこから逃げて」
意外な言葉が俺の耳に届く。一瞬だけ思考した俺は驚きの顔へと移行する。
「先生、顔芸は文章では伝わりにくいわ。ちゃんと言葉にしないと」
「何で俺の物語の心配しているんだよ。自分の心配をしろよ」




