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第3話 俺の黒歴史が全部バレる世界とか聞いてない

 この世界の名はカルサカ。女神リンネが作ったとされる人間と魔物が住む世界。

 

 どうやら俺はこの世界に『勇者の教育係』という立場で召喚されたらしい。

 そして最悪な事に教育係として召喚された人間は自分の行動や心の中で思った事が次々に本に記されていく。


 もはや、呪いとしか思えない事が現実に起こると記されている。


 3代目教育係になったラミンや俺の前の教育係、ファギーの物語を読むと下ネタや放送コードに触れる事まで赤裸々に書き記されている。

 

 まだ最悪な事がある。勇者のラビィーはどうやら一般常識が無いらしい。

 ラビィーに限った事ではなく、勇者は生まれた時から戦闘だけの訓練をして、一般常識を覚えないのが伝統。


 要するに一般常識を教え込むのは、教育係の仕事らしい。


 死ぬまで勇者の、ラビィーの教育係をしないといけないと記されている。

 まだまだある。どうやらその本は、この世界に住む人間ならば誰でも読めるらしい。

 さっきの「マッパ・○○」と叫べば、その叫んだ名前が主人公の本をどこでもいつでも読めるってさ。


 なんで教育係だけが本に記されるんだよ!

 

 本になるならこの世界の住人、全員だろうが! 


 中途半端な事をするんじゃねぇって思うのは俺だけじゃないよね。


 ありえない設定に戸惑いを隠せない俺。

 大きなため息を付いた後、ラビィーの方を見てみると無防備な姿でスヤスヤと睡眠を取っている。


「よくこの状況で寝られるな……」


 小さな声でツッコミを入れるが、ラビィーは全く起きる素振りを見せない。

 そんなラビィーのよく見るとスカートがめくれ、長く細く、そして白くて綺麗な足が完全に見えている。


(うぉ! マジか? なんちゅう無防備な……)


 俺も健全な高校2年生の17歳。

 当たり前だが女性の身体に興味があるお年頃。

 生唾をゴクリと飲みながらそっとラビィーのスカートに手を伸ばしてみる。だが、俺はここである事に気が付いた。


(ま、待てよ。これってもしかして……)


 そう思った俺は少しビビリながら、自分の物語の本を出してみる事にした。


「マッパ・麒麟」


 ……しかし、なんちゅう呪文だ。

 本当に真っ裸にされている気分になるぞ。


 そう思いながら空中から出てきた自分が物語の本のページをめくってみる。

 するとそこには今思った事、ラビィーのスカートに手を伸ばした事まで赤裸々に書かれていた。

 

 あまりの恥ずかしさに悶絶する俺。

 すぐさまラビィーのスカートを直し、平常心を取り戻すために深呼吸をする。

 そして証拠隠滅のため、物語の修正方法がないか他の2冊を事細かく調べてみた。


(ない。何も書かれていない。嘘だろ。文字通り末代までの恥になるのか?)


 そう思った俺はラビィーを急いで起こす事にする。


「おい、ラビィーだっけ? 読み終わったから起きてくれ。これって消す方法は無いのか? 何かあるだろ?」


 遠慮がちにラビィーの肩を揺すり、起こしてみる。

 するとラビィーはクルリと寝返りを打ち体勢を変えて、目を開けずにお約束(?)の言葉を俺に言った。


「あと松明が半分燃えるまで」


「アバウトでわかりにくいわ! 起きろ! こっちは俺のイメージに関わる大問題なんだぞ!」


 ムニャムニャするラビィーの両肩を持って激しく揺する。

 するとようやく目を擦りながら、ラビィーが自力で身体を支え始めた。

 しかし寝ぼけているのか、反応はかなり薄い。

 

 ……頼むから起きてくれよ。俺の黒歴史が本当に本に刻まれるでしょ。


「おい、起きろって! この文章の消す方法ってないのかよ」


「ない」


 ラビィーは小さな声で短くそう言うとまたウトウトし始める。


 ……勘弁してくれよ。


 ラビィーはそのまま俺の方に倒れ込んできた。

 焦りながら俺はラビィーをしっかりと受け止めると、柔らかなラビィーの身体の感触が伝わってきた。俺は思わず赤面する。


「待て! また本に載ってしまうパターンだろ、これ!」


 すぐさまラビィーの肩を持って身体を引き離す。

 開いていた俺の物語の本に新たな文章が浮かび上がってくる。

 どんどん書き加わっていく文章に、俺は当然のごとく焦り始めた。


「おい、頼むから起きてくれって。このままだと変な文章がどんどん増えていくだろ」


「う~ん、だからあと松明が1本消えるまで……」


「わかった。んじゃ、あと1本って……増えていんじゃねぇか~よ!」

 

 ノリツッコミをしながらラビィーの肩を揺らし続ける。

 彼女の頭は前後に激しく揺れるが、全く起きる気配が無い。俺は溜息を大きく付いて、ラビィーをそっと地面に寝かした。


 寝ているラビィーの横に座り直す俺。

 よく見るとラビィーはかなり、いや、俺がいた世界ならアイドルや女優になれるぐらい可愛い。


 部分的に鎧を着けているものの、基本的にはかなり薄手の服を着ている為、身体のラインがくっきりと出ている。胸は少し小さめだが、ウエストが細い為に大きく見える。そしてミニスカートから伸びる白くて細い脚。


 こんな美少女が隣に寝ていたら健全な男子高校生としては色んな妄想はするだろう! いや、見ない方がおかしい。見ない奴はホモ確定だ!


 自分の意見を無理やり正当化させた俺は横目でチラチラと見る。

 安心した顔で俺の隣で寝るラビィー。するとラビィーは寝返りをし、寝る体勢を変えた。スカートがめくれ、下着が完全に見えるようになる。


(うぉ!)


 俺の意思に反して視線がどうしてもラビィーの下半身に行ってしまう。

 しかし、ここで何かをすればまた本に載ってしまうかも知れない。


 いや、間違いなく載る。

 今考えていることすらも物語になって載っているだろう。

 理性と言うブレーキを目一杯踏んで、必死で耐える俺。

 目を閉じて顔を背けながらラビィーのスカートを直そうと手を伸ばした時だった。


 目をカッと開きいきなり起き上がるラビィー。

 俺は驚いて後ろに座ったまんま後ずさりして言い訳をした。


「いや、まだ何もしてないから。ちょっとそんな気持ちも起こらなくも無かったけど、まだ何もしてないから。だから許してください!」


 俺の言い訳を全く聞かず、首を振って周りを見渡すラビィー。

 すぐに立ち上がり、何かに立ち向かうように身構えた。


「先生、来るわ。立って」


「はぁ?」


 俺が疑問の声を上げた瞬間、木の茂みからゲームの中でしか見た事のない魔物が現れた。

 現実リアルに見る魔物達はあまりの禍々しさに目を逸らしたくなる。

 奇声を上げ、こちらを睨み付ける6体の魔物。ゲームとは違って場の空気が緊張から張り詰める。


 急いで立ち上がった俺は、周囲の状況を確認した。

 じりじりと距離を詰めてくる魔物達から、禍々しい殺気がありありと分かる。

 自分に向けられるその殺気で、俺は立っているのがやっとの状態だった。


 命の危険がある時って、人ってこんなに足が震えるのね。

 知らなかった。平和な日常って凄いことなんだね。

 平和な国、日本万歳。


「銃を手に取って。私が合図したら当たらなくても良いから魔物達に向かって撃って」


 ラビィーは小さな声でそう言うと、背中に背負っていた剣を抜いた。

 自分と身長と同じぐらいの剣を構えるラビィーは、俺に小さな勇気を与えてくれる。

 俺はビビリながらもホルスターから銃を抜き、魔物達に向かって構えた。


「撃って!」


 そうラビィーは俺に言うと勢いよく魔物に向かって駆け出した。

 俺もラビィーの合図と共に魔物の頭に狙いを定めて銃を撃った。


 自分が思っていた以上の銃の反動。

 構えていた俺の両腕が自分の意思とは関係なく跳ね上がる。

 だが、弾の方は狙い通りに魔物の頭を吹き飛ばした。あまりの威力に言葉を失う俺。

 

 そんな時、違う場所で魔物の悲鳴が聞こえてきた。

 自分を取り戻した俺はそちらに視線を向けるとラビィーが1人で4体の魔物を相手にして戦っている。

 

 ラビィーは無表情ながらもダンスを踊るようなステップで魔物の攻撃をかわし、剣を振るって1撃で魔物を次々に倒していく。

 援護しようと銃を構えた時にはラビィーは最後の魔物を倒していた。


(俺とたいして変わらないぐらいの歳なのに……強ぇぇ~)


 安心感から俺はその場に腰を下ろそうとしたが、すぐにラビィーが声を上げた。


「まだよ。緊張感を解いてはダメ」


 ラビィーの言葉を聴いた俺はすぐに周囲を確認した。

 すると今度は50体以上の魔物が完全に俺達を囲んでいた。


 マジかよ……。

 まだ敵って出てくるの? ゲームの世界で連戦ってないよ。

 しかも、回復手段もないしさ。これ、無理ゲーじゃねぇ?


「あの~ラビィーさん。これって凄いヤバい状況じゃないですかね?」


 そんな俺の質問に対してラビィーは無表情のまま、親指を立て俺に向ける。


「こ、これぐらいの敵なら大丈夫なのか? お、お前ってそんなに強いのか?」


「ううん。超が付くぐらい凄くまずい状況。簡単に言えばほぼ間違いなく死ぬ」




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