第31話 エレファが凄すぎる
可哀想に。敵だけど気持ちは分かるし、ちょっとだけ同情してあげるよ。
で、パンチャは自分で自分を蔑んでいるけどいいのか? 余裕があるのかないのか分かんないぞっと。
「お前の相手はこの僕だよ! 今度の僕は今までとは違うからね。うぉぉぉ~。パンチャにカッコいい所を見せて、貸しを作って、身体で返してもらうんだ~」
ベアルは覚醒すると同時にケバスットへ突っ込んでいく。
「その恰好と本音が透けていなければカッコ良かったのかもな!」
女装姿でケバスットに飛び掛かるベアルと同時に俺は援護射撃を始める……はずだった。
撃とうと思ったんだよ。
でもね、あの人類外の戦いに参加するって無理、無茶、無謀ってもんですよ。だって、2人の動きが線でしか見えないんだよ。
何をやっているかも分からないんだよ。
下手に撃ったらベアルに当たるんだよ。それは駄目でしょ!
「麒麟お兄ちゃん。私の言うタイミングで戦闘の中心に向かって撃ってくださいですの!」
「はあ~?」
「ベアルになら当たっても良いという事」
「まあベアルになら」
「ベアルですしね」
「そんな事は思ってないですの! 今は互角に戦っていますけど、ベアルちゃんの覚醒は時間制限付きですの! 覚醒が切れたら私たちを含めて瞬殺されますの!」
そうでした。あったね、忘れちゃいけない重要設定が。
ベアルの覚醒は3分でカラータイマーが鳴るんだった。覚醒が切れたら、あいつに瞬殺って……もう死へのカウントダウンが始まってるじゃん!
「撃ってですの!」
エレファの大きな合図で俺は戦闘している中心に向かってライフルを撃つ。
戦闘中の2人が大きく後ろに飛び去って距離を取った。と思いきや、すぐさま同じように戦いが始まる。
しかし、俺には視認すら出来ない戦闘をエレファは見えているって事なの?
みんな見えているのか? 俺だけ見えてないの? 俺ってそんなに役立たずなの?
「先生、大丈夫。私にもほとんど見えてない」
「その台詞でどうしてドヤ顔が出来るの? 全然大丈夫じゃないよ~。意味が全く分かんないよ~」
「お兄ちゃん……今ですの!」
「おっ、おう!」
あ、危ねぇ~。油断していたわ。
いつ合図が来るか分かんないから銃は構えとかないと。しかし、エレファって凄いんだな。ラビィーにも見えないのに、エレファには見えるって事だよね。
ちょっとラビィーさんや。勇者が四武太守に負けてどうする。
お前の、そして年上としての存在意義が無くなっちゃうよ。
エレファと戦っているベアルを除いた3人の顔を横目でチラリと見る。
天然ボケ、ツンデレ、下ネタ、変態行為しか示せてないね。
「先生、そんな残念そうな目で見ないで。興奮するわ」
「ドン引きされてもおかしくないレベルっ」
「ラビィー様、甘いですわ。私はあの麒麟様の目で1回イってますわ」
「あんたはもう少し恥じらいを持て」
「何見ているのよ。三途の川を見に行きたいの?」
「俺は言論の自由も無ければ、見る権利さえないのかよっ」
「ごめん、キリー。ツッコミよりも手助けをお願いできるかな」
「ボケ倒すこいつらが悪いと思うのは俺だけなのか?」
「撃ってですの!」
エレファの合図と同時にライフルを撃つが、トロールのケバスットは首を少し動かすだけで避ける。
そしてベアルと戦いながらも横目でチラッと俺を確認してにやりと笑った。
おいおい、敵キャラのくせに主人公の俺よりも目立つなよ。
カッコいいじゃねぇかよ。
しかし、エレファの指示はこれで3回目。しかも確実に敵だけを狙っている。
ラビィーは見えてないって言っているけど、見えていないと指示なんて出せないでしょ。
「エレファにも見えてないですわ」
「えっ、そうなの? マジで? というか、いい加減に俺の心の中を読まないでくれよ」
見えてないのに指示って出せるものなの?
なんなの? エレファって心眼とか邪眼、第3の目の使い手だったの? それともやっぱりお前らはニュータイプ?
「エレファは戦いの流れを読んでベアルとトロールの行動を読んでいるだけ」
「天才軍師と呼ばれるエレファだからこそ出来る芸当ですわね。私やパンチャ、ラビィー様でも出来ない事ですわ」
「エレファ、凄いな」
「あまり褒めないでくださいですの。照れちゃいますの」
「麒麟様、エレファは罵倒されるのが好みだそうですわ」
「どういう思考をしたらそういう結論に達するんだよ!」
しかし簡単に言っているけど、これってめちゃめちゃ凄い事だよね。
ベアルとトロールの2人の思考、行動パターンを読んで俺に撃つ指示を出すって、人間業じゃないだろ。
天才って言う言葉1つで絶対に片付けちゃ駄目じゃねぇ?
エレファはどれだけ高スペックなんだよ。
「ご。ごめん。そろそろやばいんだけど……」
「もう少し頑張りなさいよ! 早すぎるでしょ! 男なら頑張りなさい!」
「ベアル、もう少し我慢して」
「パンチャもこう言っていますわ。ベアル、男性としてもう少し頑張らないとパンチャは満足しませんわよ」
「思春期男子の妄想を膨らますような言い方をするんじゃねぇ」
でも、そろそろ本当にやばいんだよね。
あのケバスットってトロール、ベアルの覚醒バージョンと戦っているのに、まだ余裕がありそうだし。
打開策も見つからない。
逃げようとしても(しかし回り込まれてしまった!)とか画面が出るんだろうな。
覚悟を決めますかね。確か、ラビィーと出会った時にもこんな感じだったな。
せめてラビィー達だけでも逃がさないとね。
教育係として、男として、女性たちを、ラビィーを助けないと俺がこの世界に来た意味が本当になくなっちゃう。
さて、悪あがきをしますか!
~~第18代教育係、真島麒麟の書、4章完~~




