第28話 初代勇者もツッコミ所しかない
ここってさ、勇者が余生を過ごした屋敷なんだよな?
部屋の中があまりにも殺風景じゃねぇ?
まあ800年も経っていれば当然と言えば当然だけどさ。
しかも盗賊か何かに荒らされた跡もあるし。勇者に対してリスペクトが足りなさすぎだろ。
「で、何か見つかったのか?」
「はい、凄い発見がありましたわ。まるで新しい性感帯を発見したぐらいの嬉しさですわ」
「例えが下手過ぎる上にチョイスが最低すぎで~す」
自信満々の笑顔で答えるシープ。
その笑顔だけで終われば可憐風で物静かそうな美人で終わるのに。綺麗なお姉さんキャラなのになんでなんだろう。
非常に残念。これこそ本当の残念美人だね。
「麒麟お兄ちゃん、ここなのです!」
「ん? エレファまでおかしくなったの?」
「それは酷いですの!」
だってエレファの指が指している場所って何もないんだもん。
本棚と本棚の間に人1人が入れそうな隙間があるだけ。何もないただの空間だし。このボケに対して、俺はどう反応すればいいの?
「えい! ですの♪」
「うわぁ!」
エレファが俺の背中をかなり強く押す。当然よろめく俺。
壁にぶつかる! と思った瞬間、俺の身体は壁を通り抜けた。
そして『なんじゃこりゃ~!』 と某有名俳優のセリフが自然と口から出てきた。
モノマネじゃないからね。2回も同じネタで笑いを取りに行くほど、俺には勇気ないから。
で、なんでそんな声を上げたかというと、壁を通り抜けたらでっかい部屋なんだよ。
なにこれ? さっきの所がワープゾーンになっていたの?
しかも壁一面が本棚でぎっしり詰まっている。これ、今から調べるの? また徹夜?
・・・・・・すいません、マジで勘弁してください。
「ここって……」
「初代勇者の隠し部屋ですの」
「先生。ここ、封印がしてある。この部屋、勇者、教育係、四武太守しか入れない」
「この部屋の発見には苦労しました。薄目で集中して、それでやっと封印されているドアが見える程度でしたので。都市伝説を信じ、薄目で見るとモザイクがはっきり見えると信じている中学生になった気分でしたわ。見えるはずないのに、思春期男子はなぜ薄目にするのでしょうね?」
「なんで俺がその理由を知っている前提で話が進んでいるのかが不思議だぜ」
危ねえ。超トラップに引っかかるところだったぜ。
やっぱりシープ姉さんはラビィーとは違う意味で要注意だな。
そんな事を思っていたら、突如床が光りだして魔法陣が浮かび上がってきた。
おいおい、何が起きるんだよ? 罠じゃないよね?
「ラビィー様、麒麟様、パンチャ、ベアル、エレファ。油断は禁物ですわ」
「……先生。禁物って響きだけ聞くと、ちょっとエロいね。キンモツ……」
「この状況で出るセリフがそれかよ。ラビィーが完全にシープさんに毒され始めてるよ!」
初代勇者が今のお前を見たら泣くよ。
もっと女王らしい風格を持つなら、シープは絶対に見習っては駄目だと思うぞ。
そんな事をやっていると魔法陣から1人の男性が浮かび上がってきた。
この人ってもしかして……
「私は初代勇者『ペシャル』だ。私には誰だか分からぬが、ここに来たという事は、何か重大な事が起きたという事だな」
「これって、なんなの?」
いつの間にか部屋に入ってきていたパンチャから質問の声が上がる。
お前が来ると人として終わっている奴もついてくるんだよな。大事な話みたいだから邪魔だけはするなよ。
「おそらく魔法か何かで記録した映像ですの!」
「勇者様の魔法ってこんな事も出来るんですわね。初めて知りました」
「私は18代目勇者ラビィー」
「ラビィー、映像に向かって話しても返事が返ってくることはないよ」
「そうか。お前が今の勇者か」
「おい、なんで映像が返事をするんだよ」
なにこれ? 映像じゃないの? 録画じゃないの? テレビ電話みたいなものなの? それとも残留思念とか幽霊みたいなものなの?
やめてくれよ、ちょっと怖くなるだろ。
「ここで現勇者が名を名乗ると思ったのだ」
「初代、凄い」
「やるじゃない、初代勇者」
「さすが初代勇者様ですわね」
「絶対違うと思うよ」
おい、最年長。そんなわけないだろう。
ラビィーやパンチャが信じるのは分かるけど、あんたは否定しろよ。未来予知が出来るのだったら、魔王復活の件を予知しているだろ!
そしてその対策案をしっかりと提示してくれているよ。
シープさんは頭が良いんだからそれぐらい分かろうよ。
「して、ここに来た理由は?」
「魔王が復活した」
「なに! そうか。魔王が復活したか……」
「この会話の流れも予想していたって言うのかよ!」
なにこのふざけた存在。
こいつ、本当に初代勇者なのか? オレオレ詐欺レベルの怪しさじゃない? この言っている事を信じるって、
もう完全に忘れ去られているノストラダムスの大予言を今更信じなさいと言っているレベルだよ。
「ふむ。ではこれからお前たちの道標となるよう、アドバイスを送ろう」
「本当に信じていいのかよ」
「信じる者は救われるぞ」
「映像なのに返答するんじゃねぇ。胡散臭いを通り越して、詐欺確定レベルだ」
「確かにちょっと胡散臭いですの」
ありがとう、エレファ。君だけが俺の味方だ。
で、一応聞くからさっさと話してくれ。このくだり、飽きてきたぞ。
というか初代勇者もボケなのかよ。
この世界ってさ、面倒な人が多すぎじゃねえ? みんなもそう思わない?
「では、まず魔王からだ。魔王は基本的に不死身だ。倒せない!」
「……はあ?」
「倒せない!」
「自信満々に胸を張って言う事じゃねえ。俺達を絶望させたいのかよっ」
「仕方がないのだ。奴には実体がないのだ」
「こいつって言うか、この魔法陣、壊れているんじゃないの? あの残念魔王、実体あったじゃない。ババアもビンタしていたし」
「パンチャの言うことに間違いはないよ。パンチャの放つ言葉はすべてジャスティス~~」
「お前に自分の意見はないのかよ」
確かに。あの残念魔王に実体がないって・・・・・・初代勇者ペシャルだっけ?
今の状況を分かってないんじゃないの? というか、わかっていたらおかしいんだよ。
で、なんでベアルがドヤ顔なの?
このストーカーを通り越してサイコパスになりかけのグレーゾーンの男がさ。
そして、なんで初代勇者のペシャルさんはアメリカン風でやれやれのポーズをしているんだよ。
それ、イラッとするからやめてくれ。ツッコミ所が多すぎてツッコミが間に合わないだろ。
「本当に何も知らないのだな。現勇者と頭がわる・・・・・・愉快な仲間たちよ」
「絶対に今、頭が悪い仲間達って言おうとしただろ」
「魔王は霧のような化け物で、人間の悪意の集合体なのだ。そして倒したとしてもそのまま相手の身体を乗っ取るのだ」
「それってさ、つまり・・・・・・」
「魔王の身体を倒しても、その直後に身体を乗っ取られるって事ですの」
「最悪ですわね」
「僕が今も、これからも、何があってもパンチャを守るよ」
「ウザい……」
「ウゼェ……」
「ウザいですわ」
「ウザいわ」
「ウザいですの……」
「みんな、心で思っている事が言葉になっちゃってるよ! というか、全員なの?」
倒しても身体を乗っ取られて復活する魔王もウザいけど、何かに付けてパンチャ推しのベアルもウゼェ。
というか、ベアルもツッコミが出来るんだな。
そんな事はどうでもいい! 魔王を倒す方法はないのかよ。
しかもここまでどれだけページ数を取っているんだよ。本題は! 本題!
「では、魔王は倒す事が出来ないから封印するしかない。と言う事ですわね」
おっ、珍しくシープが話を立て直した。
国の、ラビィーの軍師的な存在なんだからちゃんとしようぜ。
エレファはまだ12歳なんだしよ。……その他の奴らについては何も語るまい。
「あっ、そうだ。ちなみに今の魔王の身体は2代目勇者の身体だから」
「「「はあぁ?」」」
その場にいた初代勇者以外の人間が、一斉に間抜けな声を上げる。
そりゃそうだ。こんな重要な情報をサラッと言うんじゃねぇ。
むしろ、乗っ取りよりも先に教えてほしいぐらいの情報じゃねえ?
なんで付け足し情報のように言っているの? やっぱり初代勇者もポンコツなの?
「あの魔王の身体は2代目勇者の身体!」
「確かに大事な事だけど、2回言わなくて良いぐらいのインパクトを残したわ! そんなに俺達を絶望させたいのかよ!」
「そんな事はない。魔王に対抗する為に覚醒方法を教えるぞ」
「そういう事は先に教えてほしいですの!」
エレファのツッコミはもっともだ。
勿体ぶらずに先に言えよな。初代勇者、ポンコツ決定の瞬間でしたとさ。
「覚醒の方法は……」
「覚醒の方法は?」
初代勇者ペシャルの次の言葉を神妙な面持ちで待つ俺たち。
・・・・・・ためるんじゃねぇ。勿体ぶらずにさっさと言えよ。




