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第24話 30秒で支度しな



「入っていいですわよ」


「失礼します」


 あっ、昨日会ったこの城の副隊長さんだ。なんかあったの? 

 また魔物の軍勢が攻めてきた? それともあの残念魔王が直接来たのか? 


 それならこんなにゆっくりしている場合じゃないよ。早く態勢を整えて、迎え撃つ準備をしないと。かしこまってなくていいから。何が起きたか早く言ってくれ。

緊張した面持ちで副隊長さんが口を開くのを待つ。


「ラビィー様達の出発準備が整いました。いつでも出発出来ます」


「そうですか。なら、出発しましょうか」


「早っ! 準備早っ! ご都合主義にもほどがある!」


 ありえねぇぐらい早すぎるだろ! 

 さっきラビィーが決めた分なのに、何この早さ! どれだけ仕事出来るんだよ! 


 そして俺の緊張を返せ! まあ、上司がこいつらだから仕事出来るようになったんだろうな。

 女王候補のラビィーは戦闘以外に何も出来ないのがしっかりとわかったし。まあ、あとのメンバーも……。うん、それなら納得。そう思った瞬間、俺の頭部に衝撃が走った。


「痛って! 何すんだよ、パンチャ!」


「あんたの考えている事なんて本を読まなくても分かるのよ!」


 せめて本を読んでからにして頂けますかね。もう、このくだり、飽きたよ。

 心を読まれるのは何回目だよ。こんなんだから俺の呪いの存在とか忘れるんだよ!


「先生、私の事を戦闘馬鹿だと思ってる? ……これがギャップ萌え?」


「ギャップの意味を履き違えるんじゃねぇ」


 このギャップで萌える人間なんているのかよ。

 というか、準備が出来ているなら出発しようよ。この物語、本題から外れ過ぎなんだからさ。


「では、出発しましょうか。エレファ、この城の守りを頼みましたよ」


 あっ、エレファはお留守番なんだ。

 まあ、確かにこの城を守るのにエレファの策略は必須だけど。はぁ~、また俺1人でツッコミをしまくる旅が始まるのか。


 さようなら、最大の俺の理解者。さようなら、俺の安寧の日々。

 本当に少しだけ楽が出来たよ。って、ん? どうした、エレファ。思いつめた顔をして。お姉ちゃん達がいなくなるのが寂しいのか? まあ、まだ12歳だし、仕方がないか。

 そんな風に思っているとエレファの口から俺の予想外の言葉が発せられた。


「わ、私はお留守番ですの?」


「エレファ、我儘を言わないでください。私がいないこの城を、そして国民たちを魔物達から守り切れるのはあなただけなんですよ。今も避難民がこの国に避難してきています。あなたの指揮で1つで西の城、いえリーグエスの運命が決まると言っても過言ではないのですよ。ラビィー様を城無しの女王にするつもりですか?」


「で、でも、でもですの」


「エレファ!」


 シープに一喝され、しょげるエレファ。

 う~ん。可哀想だけど、仕方がないのかな。確かに国民達の安全は最重要で必須項目だしね。そりゃ、一緒に来てくれれば色んな意味で安心出来る。主にツッコミだけど。だけど、そんな理由で一緒に行こうとは言えないし。


 そんな重苦しい空気の中、さっき部屋に入ってきた副隊長が口を開いた。


「シープ様。この城、この地域の守りは万全です。エレファ様はあらゆる危険を想定し、我々に策を講じてくれました。シープ様とエレファ様の2人がいなくとも半年ぐらいなら守り切れます。どうか、ご一考して頂けませんか?」


「お前たちはエレファに甘いのです! エレファは天才軍師と呼ばれてもまだ12歳。本来なら四武太守になる為の訓練をまだしている時期なのですよ。もしもラビィー様や私達に何か起こった時、次の勇者が現れるまではエレファがこの国を治めなければいけないのです。それを分かって言っているのですか!」


 この場の空気が止まる。いつも笑顔のシープが怒ると凄い迫力あるな。

 そっか。エレファの見た目は高校生ぐらいに見えるけど、まだ12歳。小学6年生ぐらいなんだよね。


 そんな女の子が危険な旅に一緒に行くって確かにまずい気がするわ。

 でも、なんかシープが1番エレファの心配をしている気がするのは俺だけか?


 まだ、言い足りなそうなシープ。

 口を開こうとした瞬間、ラビィーがそれを制した。


「エレファ。責任を背負える覚悟はある? シープがこの城に留守にして、エレファまで居なくなる事でこの城は魔物達にやられるかもしれない。それでも一緒に行く?」

 

 静まり返る部屋の中。ラビィーがエレファに問いかける。

 俺にはラビィーがエレファに言いながら、自分に問いかけているように感じた。近い将来、いや、魔王との決着がついたらリーグエスを治める事になるラビィー。

 

 まだ、迷っている……いや、怖いんだろうな。

 自分の一言で国が滅亡する事がある事を知っているんだ。

 

 目線を下げていたエレファがまっすぐな眼をラビィーに向けた。


「行く。行くですの。一緒に行きたいですの」


「……言い方がエロく聞こえる」


「確かにですわね。イく。イくですの。一緒にイきたいですのって」


「エロいわね」


「声だけ聞くとエロいね~」


「エレファの決意にお前ら土下座しろ!」


 良いシーンが台無しだよ!

 何回目だよ。コントじゃないんだからオチは必要ないだろよ!近年、まれにみるウザさだ。エレファを見てみろ。完全に引いちゃってるよ。

 お前らはエレファの、国民の見本になれるように努力しろ!


「先生、行くよ」


「うん、行こう。ラビたん」


「行きましょうか」


「パンチャと一緒ならどこでも天国だよ」


「エレファの事はスルーかよっ」


 俺に向けていた視線をエレファに移すラビィー。そして一言。


「行くんでしょ、エレファ。30秒で支度しな」


「飛行石を狙う空中海賊の女船長かよ」


 無表情なラビィーが少しだけ微笑んだ気がした。ううん、間違いなく微笑んだ。 

 最期の一言は余計だったと思うけどね。しかし、ラビィーの一言を聞いたエレファが最高の笑顔で、そして大きな声で


「はい。すぐ支度するですの」


 と言って、部屋を飛び出して行った。守らないといけない人が増えちゃったかな。

 まあ、ラビィーが(私が守るわ)って言う顔をしているけどさ。俺も微力だけど、ラビィーの手助けをしますか。ラビィーの笑顔をもっともっと見れるように。

               

               ~~第18代教育係、真鳥麒麟の書、3章完~~



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