第22話 勇者余生の地とか嫌な予感しかしない
小鳥の囀りで起きる朝。素晴らしいね。その日の幸せが約束された気分だ。
ん? なんで俺のベッドの横にラビィーが寝ているの? あっ、目を開いた。
「なにしているんだ、お前?」
「先生、昨日は凄かったわ」
「……」
「こう言ったら男の人は喜ぶって言われたわ。先生は喜ばないの?」
自他共に認める童貞男子の俺にそんな事を聞かれても分からねぇよ。
なんなんだよ、この展開。寝起きで頭が働いてないから全然ツッコミが思い浮かばないし。
「ラビィー、本当の目的は?」
「先生の息子の状態を確認しておいた方がいいって。朝の処理はしなくていいの? 手伝った方がいいの?」
「誰に入れ知恵された。って、聞かなくても分かるわ。そして余計なお世話だ」
前言撤回。幸せなんて約束されてなかったわ。
なんで平和そうな1日の始まりを下ネタで始めなきゃいけないの?
俺の人生、なんでこうなった?
この世界で俺のツッコミをする事が無くなる日は来ない。そう断言できるレベルに達したと思う今日この頃でした。
「とりあえず、朝ごはんが出来ているからって」
「了解だ。すぐ行くから、布団から出てくれるか?」
「わかった」
……俺はなぜこの状況を予測出来なかったんだ。予測出来たはずだ。
ラビィーが衣服を着てないと言う事を! ラビィーの天然ならありえた事。
そしてこの展開。
パンチャが部屋に入って来て、ボコボコにされる未来が見える! 前にもこんな展開があった気がする!
こういうのを業界用語で『天丼』って言うんだよ。
読者のみんな、覚えておいてね。さて、とりあえず急いで布団をラビィーに巻き付けないと。
「麒麟様、ラビィー様、まだですか? パンチャやエレファが待っていますよ。ベアルは女子部屋に忍び込んだ罪で……って」
口に手を当てて驚くシープ。
遅かったか。まあ、部屋に来たのがシープで良かった。
三途の川を見に行かなくてよさそうだ。
安堵のため息が出るって、俺はどれだけパンチャを恐れているんだろ。
で、ベアルはどうなったんだ?
こっちの状況に食いついて、オチは言わないのかよ。本当に三途の川を往復したの? めちゃくちゃ気になるよ。
「あらあらあらあら」
「シープさんの思っている状態にはなってないから目線を下げるんじゃねぇ」
「前屈みにならないのですか?」
「そんな心配は無用だ! そしてラビィー。さっさと服を着なさい。とりあえず下着だけでもすぐに履け」
「下着ってどれ?」
「そこからなのかよ!」
シープさん。くだらない入れ知恵をするぐらいなら女性としての常識をラビィーに教えてやってください。
その部分は、その部分だけは、俺には教える事が出来ないので。
土下座ぐらいならしますのでどうかお願いします。
「ラビィー様。いつの間にか胸が大きくなってきていますね。もうこのカップじゃ入りませんね。というか、こんな話題を麒麟様の前でしたら、麒麟様の下半身が大きくなってしまいますか?」
「2人とも、寝起きから飛ばすな……」
「飛ばすのは先生の役目」
「若いのでかなり飛びそうですわね」
「ラビィー、しっかりメモっていたんだね。そしてそのネタ2回目~。うん、2人ともさっさと出ていけ!」
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朝食を食べて会議室に移動。
うん、もちろん朝食中にも一悶着あったみたいだよ。
目をつぶり、耳を塞ぎ、ツッコミ放棄した俺には何も分からない。
多分、エレファが何とかしてくれただろう。
こうすれば俺の黒歴史に新たな1ページが加わる事は無いよね。
俺の名誉だけじゃなくて、ラビィーやシープたちの名誉も守った。じゃないと俺の本を読んだ国民が不安になる事、間違いないしね。
うんうん。俺の判断は正しかった。エレファの疲れ切った様子を見れば分かる。
朝食後のエレファの目がちょっと怖かったけどね。
「さて、お腹も満たされた事ですし、これからの指針を検討しましょう」
「はい、シープお姉ちゃん。昨日、食事した後に色々調べましたですの」
「さすが天才軍師と言われるエレファ。どっかの役に立たない変態馬鹿教育係とは違うわね~」
「しみじみ言うんじゃねぇ。確かに役には立ってないけどさ」
朝から毒舌が過ぎませんかね、パンチャさん。
俺的にツンデレの割合は10回に1回ぐらいはデレを見せても良いと思うよ。
まだ1度たりともデレを見せてもらってないんですけど。そんなんじゃ、キャラ人気は出ないと思うよ。
ラビィーはお腹が膨れて眠くなったか? ウトウトしてんじゃねぇよ、おい。
人の話を聞くことも国王になる資質だぞ。
「ほら、起きろ。ラビィー。エレファが何か良い案があるみたいだぞ」
「そんなに期待されると困るのですの。でも、少し色々とわかったのですの」
「で、何が分かったの? あのババアに一泡吹かせそうな案?」
「パンチャ、そんなに身を乗り出しちゃ駄目だよ。野次馬根性丸出しに見えちゃうよ」
「麒麟様のお好みなら、チラ見せぐらいにしておかないといけませんわね」
「はい、先生。これでいい?」
ラビィー、肩の衣服をはだけさせなくていいから。
ほら、パンチャの目の色が変わっちゃった。でもツッコミを入れるのも面倒なので、あえてスルー。
「で、何が分かったんだ、エレファ?」
「はいですの。今までは必要が無かったので、真剣に各教育係の物語を読んだ事はありませんですの。で、昨日しっかり読み返しましたの。シープお姉さまが言っていた通り、初代勇者資料がどこを探しても中途半端ですの。個人的にこの部分が1番引っかかりますの。でも、これに関しては何もわかりません。ですので、2代目教育係の物語に書いてある初代勇者の余生の地を調べる事をお勧めしますの」
「エレファ。余生の地を調べる根拠はありますの?」
「はい、シープお姉ちゃん。まず、初代教育係と2代目教育係を召喚したのは初代勇者ですの。2代目勇者が国王になってから、初代勇者は余生を1人で暮らしてらしいですの。しかも、何か研究していたみたいですの。本当に2代目教育係の物語に少しだけ書いてありましたの。そしてこれ以外に手がかりが何もないのが、本当の理由ですの」
「手がかりが無い事を力一杯言われてもな」
苦笑するしかないね。
まあ、他に手がかりになるような事が何も無いなら、そうするしかないんだけどさ。




