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第21話 北の城の子供達



 俺を置いて隠れていた最低な人間たちがコソコソと出てくる。

 なんて女郎達だ。1人、野郎が交じっているけど。


「ほら、みんな~。今日はこのお姉ちゃんたちが遊んでくれるのですわ。遠慮なく遊んでもらうと良いですわ」


「無表情なお姉ちゃん。絵本読んで」


「う、うん」


 良かったな、ラビィー。旅の最中にした勉強の成果を見せるんだ。

 ……平仮名なら何とかなるだろう?


「お、お姉ちゃん? 一緒に遊んでよ」


「あたいに対してなぜ疑問形なのかは聞かないであげるわ」


「おにぃ……お姉ちゃん?」


「お兄ちゃんで良いよ」


 ……子供って色々正直だね。

 いつも無表情なラビィーが凄く困り顔をしているのはなんか新鮮だ。


 パンチャに至ってはどっちが子供だか分からないよ。主に見た目がね。

 そしてベアル。純粋な子供の目を汚すんじゃねぇ。子供達が変な扉を開いたら誰が責任取るんだよ。俺には責任ないからね。


「そろそろ食事の時間ですわよ。みんな手を洗ってきなさい」


「は~い」


「お、終わり? この嵐は終わったの?」


「み、みたいだな」


 子供達が部屋を出ていくのを見送った俺は、あまりの疲労感から座り込んだ。流石のパンチャも俺と同じようにその場に座り込む。


 なんで子供って言うのはあんなに元気なの? 俺の隣では子供達のおもちゃにされていたベアルは、恍惚な表情で倒れているし。

 子供達に馬乗りされて罵倒されて楽しめるってどんだけなんだよ。ドMかっ!


「ラビィーは凄いな。俺達以上に子供達と遊んでいたのに。全然疲れた顔になってないな」


 いつも通り、無表情で感情を出さずに俺の側に立っているラビィー。

 流石は勇者。俺達以上に子供達に弄られていたのに全然平気そうだな。ってあれ?


(バタッ)


「やっぱり限界だったのかよ! 表情に出ないから分かりにくいわ!」


「子供と遊ぶ体力と戦闘の体力は違いますから」


 そう言いながら子供達を送って行ったシープが部屋に戻ってくる。


「シープさん、あの子供達って……」


 俺がシープにそう質問すると、いつもニコニコ笑顔を絶やさないシープの顔が少し曇り始めた。

 なんで? 俺、なんか変な事を聞いたか?


「あの子たちは戦災孤児なんです」


「戦災孤児?」


「そうですわ。この(北の城)が統治する地方の国境にはスブデンという国とアミレプという国あります。スブデンという国は、魔物の国で残念魔王が封印された時に作られました。残党になった魔物達が集まり、国になったのです。歴代勇者達が何回も攻め込んで滅ぼそうとしましたが、未だに上手く行っていません。そして色々と面倒臭い国なのがアミレプですわ」


 シープの説明によるとアミレプと言う国は6代目勇者のお兄ちゃんが作った国なんだってさ。

 その頃はまだ世襲制の考えが強くて、勇者になった弟に『兄より優れた弟なんかいない』と言って無理やり国王になろうとして弟の勇者に追い出されたと。


 なんだ、それ。どっかのアニメのもっとも弱い兄貴じゃねぇか。

 で、建国して色々とリーグエスにちょっかいをかけてくると。この国の人間なら誰でも知っているんだって。


「生まれた分の勇者候補を育てる権利は我が国にあるとか、四武太守候補を渡せとか、昔からこの地域はアミレプの領地だったとか、色んなイチャもん付けてくるのよね~。面倒臭いって言ったらありゃしない。あんたの変態行為が可愛く見えるわ」


「どこの世界も言い掛かりを付けてくる国ってあるんだな。って、お前の俺への絡み方が言い掛かりばかりだろ!」


「国境付近では、小さな戦闘が絶える事はありません。あの子達は、その戦闘で親を亡くした子供達です。ここはそんな子供達の為に私が作った養護施設ですわ。麒麟様の光源氏計画の為ではありませんわよ」


「その余計な一言が無ければ素直に感動出来たのに」


「先生。私、眠くなってきた」


「ラビィー。君はいつでもどこでもマイペースだね~」


「ラビたん、眠たいの? 急いで帰ろうか。あっ、はぐれるといけないから手を繋いでいこうね。帰ったらあたいが添い寝してあげるからね」


「お前も本当にブレないね。良い意味でも悪い意味でもね。見た目はお前が添い寝される側なのにな」


「さて、私達もお城に戻りましょうか」


 確かに外も完全に暗くなったし、帰りましょうかね。

 疲れたから、ゆっくりと寝られそうだし。んじゃ、楽しそうに食事をする子供達に挨拶して帰るか。


 親がいなくてもたくましく生活はしているみたいだけど、やっぱり寂しいだろうな。早く平和な日々が送れるように頑張らないと。

 俺はラビィーを立派な女王にする! 当の本人はもうウトウトしているけどね。


「ほれ。俺がおんぶしてやるから背中に乗れ」


「背中でラビたんの胸の感触を合法的に堪能しようとしているの? キモッ! そしてセコッ! 無い知恵を振り絞ってその程度?」


「善意のおんぶが非難される流れになるのはなんでだろ~?」


「だったら僕がパンチャをおんぶしていくよ。ご希望ならお姫様抱っこでも問題ないよ。一番の希望は僕が馬になるからパン……へぐぎゃ!」


 殴られて当然だね。でも、この殴られる事すらベアルには


「ご褒美! ありがとうございます!」


 って、事になるんだよね。ポジティブシンキングにも限度があるぞ。

 全然、全く羨ましくないけどな。


 しかし、これが国民をまとめる勇者&四武太守の姿で良いのか? どっかの国なら革命が起きてもおかしくないレベルじゃねぇ?

  どうでもいいから早く帰ろうぜ。ウトウトしているラビィーを見ていたら、俺も眠くなってきた。

 

 城に戻った俺達はとりあえず就寝。

 俺の背中で爆睡していたラビィーを女子部屋まで送った後のパンチャから一言。


『女子部屋に入ってきたら三途の川を3回往復させるから』


『三途の川は往復出来るもんじゃねえ。確実に一方通行だ』


 しっかりとツッコミを入れて、男部屋に戻る。

 ベアル、何をしているんだ? 忍び装束なんて着てよ。


 でも、頼むからくノ一の衣装はやめてくれ。妙にセクシーで変な気分になるじゃねぇかよ。そしてパンチャの寝床に忍び込む気満々なんだな。


 うん、こいつが勝手に三途の川を往復するのは俺には関係ない。

 さて、今日は集団戦闘もあったし、子供達との戦闘モドキもあったし、ゆっくり寝ましょうかね。久々のベッドだしな。おやすみなさい~っと。



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