第17話 まともな会話をしている奴が1人もいない
剣同士がぶつかり合う音が森の中で響き渡る。
だが今までとは違い、魔物達との戦闘は明らかに減っていた。
おそらく、ババア……ウホン、ファンが俺の本を出せなくなり、俺たちの居場所が分からないって事だな。
さらに1回に遭遇する魔物の数も、以前より明らかに少ない。そして今回からはベアルも俺達に同行している。これで魔物達に不覚を取るなんてありえないでしょ。
だって俺が銃を抜く前に敵がいなくなっている事もあるんだよ。
TVゲームやアプリなら一緒に戦闘するとレベルアップするけど、これはさすがにしないよね。まあ、死ぬ可能性が減るから良いんだけどさ。
あれ? この戦闘もそうだけど、ベアルが覚醒して殲滅した方が早くねぇ?
って、こんな事を考えている間に敵がいなくなっているよ。俺、今回の戦闘で1発も撃ってないぞ。こいつら無双すぎるだろ。
「先生、終わったよ」
「お前ら、凄すぎだろ。銃を抜く暇もなかったぞ」
「ヌくだなんて。で、麒麟様は誰でヌこうとしましたの?」
「誰でもねぇよ。というか、そういう意味じゃねぇ」
「あんたは普段は馬鹿で役に立たないんだから。戦闘ぐらいは役に立ちなさいよ」
「パンチャの言う通りだよ。キリーは馬鹿で変態で役に立たないんだから」
「先生、立たなくて役立たず……ED?」
「立つよ! いや、戦闘では役に立ってないけどね! そして、どこでそんな言葉を覚えてきたんだよ!」
誰とは言わないが、変な事をラビィーに教えるんじゃねぇ。
駄目だ、こいつらにラビィーを任せたらとんでもない事になる。
俺がもっと頑張らないと、ラビィーが確実に常識って言う道を踏み外す。
……それとツッコミし過ぎて疲れた。
神様、お願いします。エレファがツッコミでありますように。
「ベアルはなんで覚醒しないんだ? 覚醒したら一瞬で戦闘は終了するだろ?」
「キリー。そこに踏み込んでくるの? ちゃんと理由があるんだよ」
なにこのベアルの真剣な顔。凄い凛々しいじゃねぇか。
綺麗だし、惚れちゃうよ。……おっと、男だったわ、こいつ。俺と同じ物がしっかりとついていたね。思い出したくもない黒歴史だ。永久にあの部分だけ記憶を封印しないとね。
「僕が覚醒したら、あの可憐なパンチャの活躍を見られないだろう。小さな身体で大きな十文字槍を振るう。揺れるツインテール。鎧や服の隙間から見える脇や生脚。これで興奮しない奴はいない! そして戦うその姿は、まさに天使以外何者でもない! 僕が覚醒して敵を殲滅したら、その姿が見られなくなるじゃないか!」
「欲してもない豆情報をありがとう」
「先生。先生も生足を見たいの?」
「はしたないから、やめような」
ラビィー、ミニスカートをめくって無理に生脚を出さなくていいから。
そんな事をしなくても、お前は十分魅力的だよ。お前のその姿に、発情したロリ体型娘の息が荒くなっているから生脚は隠しなさい。
「麒麟様、ベアルは完全に覚醒したわけではないので、覚醒出来る時間が決まっているんですわ」
「はあ?」
「ベアルの覚醒時間は1日におよそ蝋燭1本。それ以上は覚醒出来ないのです。どうもベアルは中途半端に覚醒しているみたいなのです。まあ、ベアルは性格も性別もキャラも中途半端なので問題ないですわ」
「問題が有りまくり過ぎて、何が問題なのか分からないレベルっ」
大体、1日に蝋燭1本ってなんなんだよ。わかりにくいわ。
何分だか分からないけど、カラータイマーが鳴るわけね。今時、その設定ってなかなか無いよ~。なんか逆にちょっと新鮮に感じるのは俺だけか?
「これから先、どんな強敵が待ち構えているかわからないのよ。ほいほいとベアルを覚醒させてピンチになったらどうするのよ! そんな事も分からないの? あんた馬鹿~?」
「俺の目には、お前が2号機のパイロットにしか見えない」
「私達の覚醒はもちろん、特にラビィーの覚醒は魔王を倒すために必須ですわ。ちなみに麒麟様も覚醒が出来ると思いますわ。やり方は分かりませんが。もし寂しいのなら覚醒とは違いますが、私が色々と開発の手助けをいたしますが?」
「やっぱり変態教育係ね(だね)」
「パンチャ、ベアル。声を揃えて言うんじゃねぇよ。ラビィー、その手に持っているムチはなんのためだ? 俺は俺自身を開発するつもりはないからね。だからそれは捨てなさい」
「さあ、もうすぐ(北の城)に着きますわ。いい加減、そろそろお風呂に入らないと匂いフェチの麒麟様が私に襲い掛かってくるかもしれませんので。でも、私はそんなシチュエーションは嫌いではないので、お待ちしております」
「俺に勝手な設定を作るんじゃねぇ。ラビィー、自分の身体の匂いを嗅ぐんじゃありません。いちいち反応しなくていいから」
早く行こうよ。こんなにツッコミを入れていたら、ツッコミのバリエーションがなくなるって。……マジでバリエーションを増やす事を検討しようっと。
俺がそんな事を思っているとラビィーがいきなり馬を走らせる。
「お、落ちる! ラビィー、いきなり馬を走らせるな!」
「先生、聞こえない?」
「な、何が!」
「ほら」
耳を澄ましてみると怒号や斬撃の音が届いてきた。




