星空の下の無表情勇者
トイレから書庫に戻る最中、中庭にある噴水の淵にラビィーが座っているのを発見する俺。
いつも無表情で飄々としているラビィーが落ち込んでいる。
なぜだか分からないけど、俺にはそれが分かった。自然とラビィーがいる中庭に足が向かう。
星空の下、月明かりに照らされるラビィーは本当に綺麗だった。
シープのように大人の女性でもなく、パンチャのような可愛らしさでもない。
言葉では言えない、文章では表現するのが難しいほどの美しさ。……この映像を読者のみんなにお見せできないのがカッチカッチの悔しいです!
古かったね。さて、どうやって話しかけようか? 童貞男子にはかなり高いハードルだな。
「そこにいるのは……先生?」
あっ、ラビィーに先を越されちまった。……誰だ、チキン野郎って思った奴はよ。
「お、おう、俺。だけどよく分かったな。そっちからだと影で誰か分からないだろうに」
「先生の気配はみんなと少し違うから」
なんだよ、その特別扱いは。勘違いしちゃうよ、俺。
「隣、座っていいか?」
「うん」
ラビィーの隣に座る俺。
ねぇ、これ、なんかのフラグが立っているの? アニメやラノベの主人公になっている?
俺は鈍感主人公と違ってフラグには敏感だよ。こうなるとリアルはクソゲーじゃないね。
「で、お前何やってんの?」
「……」
「まあ、言いたくないならいいよ」
下を向くラビィーに対して俺は上を向き、星空を眺める。
ネットに『聞き上手はモテる』って書いてあったから、こういう時はラビィーが言い出すのを待った方が良いんだよね?
・・・・・・なにか間違ってる?
「先生、私、本当に立派な王様になれるのかな?」
「あ~、そう言えばシープさんがそんなこと言っていたな。勇者はいずれ国を治めるって」
「でも、私、何も出来ない。文字も読めない。先生たちのお手伝いも出来ないし、先生がよく言う常識が分からない。戦いでしかみんなの役に立てない。こんな私が王様になれるはずがない」
ラビィーは無表情で感情を表に出す事はない。
初めて会った時からずっと表情は変わらない。マイペースで何を考えているか全くわからない。
でも、やっぱり17歳の女の子なんだな。ラビィーにも色々悩みがあったんだ。
うん、可愛いじゃねぇか、こいつ。
さて、どうしようか?
童貞男子にはもはやハードルじゃなく、ドデカい壁並の高さだけど、ここは引けないよね。とりあえず、下を向くラビィーの頭を撫でて……
「大丈夫。お前は立派な王様になれるよ。歴代でも最高の王様になれる。俺が教育係なんだからさ。文字も常識も俺が教えてやる。ラビィーにはシープもパンチャもベアルもいる。みんなそれぞれ見習う所がある。お前の足りない所は、みんなが補ってくれる。無理に立派な王様にならなくてもいいんだ。お前がやれる範囲で良いんだ。俺もお前の側にいてやるから」
「先生……わかった。立派な女王に私はなる!」
「ゴム人間の海賊頭みたいに言うな! でも、頑張れ」
笑顔をラビィーに向ける。あれ、俺、ちょっとイケてない? そんな時、俺の頭に物凄い衝撃が走った。
「ぐあぁ!」
「なに私のラビたんと良いムードを作ってんのよ! 三途の川を見に行きなさい!」
遠すぎてパンチャを視認出来ない距離なのに声だけは大きい。
……まあ、パンチャは元から小さくて視認し辛いんだけどさ。あんな遠くから、花瓶をダイレクト&クリーンヒットのどストライクで俺の頭に当てるって、どれだけ強肩なんだよ。
あんたは振り子打法のレーザービームを投げる人なの? それとも2刀流で165キロを投げる人? もし俺がいた世界にパンチャを連れていけたら、プロ野球の入団テストを受けさせよう。
「先生、大丈夫?」
「ラビィー。心配するなら心配そうな顔をしてくれ」
「ごめんなさい。どんな顔をしたらいいのか分からないわ」
……無表情の美少女にこの言葉を言われたら返す言葉は1つだよね。
「笑えばいいと思うよ」
「あはは」
ごめん、マジごめん。振っておいてなんだけど、棒読みで乾いた笑いは違うよ。
元ネタの白いプラグスーツの似合う美少女に失礼だ。
せめて同じ笑うでも(ニコッ)で止めておいてほしかった。
やっぱあんな場面はそう簡単に出来るもんじゃないね。前に言った言葉を訂正します。リアルはやっぱりクソゲーだ!
「ラビたん~。シープ姉さまが呼んでるよ~。すぐ来てだって~」
「先生、行こう」
そう言ってラビィーが倒れている俺に手を差し出す。な、なんか照れるな。やっぱりラビィーは確かに可愛いぞっと。
「へげらっ!」
「馬鹿なの? 死ぬの? ラビたんの手を握ろうなんて1000年早いわよ!」
パンチャさん、それだけ時間が過ぎたら、俺はもう確実に死んでますよ。
というか、2つ目の花瓶も僕の頭にクリティカルヒットしてますんで、今にも死にそうですけどね。




