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第11話 ベアルという怪物

 3日ぐらい馬で走っただろうか? 

 目隠しされているから時間が全然分からん。


 目隠しを外せるのは唯一、お手洗いタイムのみ。そりゃそうだ。誰も俺の下の世話なんてしたくないし、俺もされたくない。

 もし、そんなのをラビィーとかにされた日には、間違いなく俺は自分から三途の川を見に行くよ。


「見えましたわ。西の城ですわ」


「シープお姉さまの予想通りでしたね。やっぱり魔物達にお城を取り囲まれている」


「じゃあ、作戦Aで。先生、目隠しを外していいよ」


 目隠しをいそいそと外す俺。作戦Aって何だ?

 聞いちゃいけないのはわかるんだが、やっぱり気になる。


「作戦Aってなんだ? 俺に教えられる範囲で良いから教えてくれ。すげ~気になる」


「麒麟様。作戦Aなんてありませんわ。ラビィーが勝手に言っているだけです」


「作戦として駄目だし、ボケとしても面白くないって最悪だぞ」


 俺の視界内で両腕を真上に挙げ、手を合わせるラビィー。

 ……それってまさか、Aを身体で表現しているとかか?


 むか~し、昔に西の付く歌手が、YとかCとか身体でやっていたな。知らない人はお父さんやお母さんに聞いてみようって、ツッコミし辛いわ!

 こういう時はスルーに限るね。


「でも、あんなにたくさん魔物がいたらベアルって奴に会えないぞ。なにか作戦があるのか?」


「作戦ならあるわよ。あたいがここにいる事が作戦として成り立っているのよ」


「パンチャさん、何を言っているか分からない。悩みがあるなら聴くよ。その姿、身体だって一部の人たちからは絶大なステータ……ぐあぁ!」


「殴られたいのか!」


「殴る前に蹴るんじゃねぇ!」


 口よりも手が先にで……もとい足が出るって女の子としてどうなんだ? 

 手本になる人が周りに……あっ、ごめん。いなかったわ。


 天然非常識娘にドS下ネタお姉さん。うん、間違いなく見本にしちゃ駄目だ!

 良い子のみんなはこのお姉さん達みたいになっちゃ駄目だぞ。


「麒麟様、パンチャの言う事は間違いではありません。パンチャがここに来た事自体が作戦なのです。おそらくですが、ベアルも麒麟様の本は読んでいるはずです。それならこの城に来ることもわかっているはずですわ。ベアルはここで敵を引き付けて、私たちの所に行かない様にしてくれていたのでしょう。しかし、麒麟様が襲われると興奮するタイプでしたら余計なお節介になってしまいますね」


「途中まで凄い納得していたのに、その一言は余計だぜ!」


「さて、グズグズしていると敵に気付かれちゃうからな、なにせ破廉恥セクハラ教育係馬鹿が目隠しを取って、ここにいる事がばれるのも時間の問題だし」


「おい、前の罵詈雑言よりも1つ言葉が足されている。泣くぞ、俺」


「勝手に泣けば。ついでにそこ邪魔」


 高校2年生になる俺が、どう見ても小学生にしか見えないパンチャに怒られるってどうなの?

 誰だ、ゾクゾクするって思っている奴。俺は全くこれっぽっちもしてないぞ。


 ……本当だぞ。

 俺を押し退け、崖の淵に立ったパンチャが突然大きな声で叫び出した。


「ベアル~! あたいがわざわざあんたの所まで来てやったぞ~。周りの雑魚共をさっさと片付けて、あたいを迎えに来なさい~」


 どれだけ上から目線なんだよ、こいつは。それでベアルって奴が来られるわけないだろ。

 大体、あの城の周りの魔物って、200とか300ぐらいの数じゃないぞ。少なくとも500体以上の魔物を倒して来いってどれだけ無理ゲーだよ。

 DEATHゲーム……デスね。心の中でサムい事を思った瞬間、ラビィーが突如俺の頭を叩いた。


「いてっ! 何するんだよ」


「先生の心の中から悪しき波動を感じたから」


 絶対に俺の本っていらないよね。

 こいつら、完全にニュータイプでしょ。これだけ心の中を読めるなら、本なんか必要ないでしょ。大体、口に出してツッコミを受けるならまだしも、心の中で思った事にツッコミを受ける理不尽さって悪意しかないだろ。


「ベアル~聞こえてる~」


 こんな遠くから聞こえるわけないだろ。

 ベアルって奴はどれだけ地獄耳なんだよ。もし、聞こえるなら地獄耳じゃなくて魔界耳レベルだよ。

 それよりこんなところで大声出したら魔物達が来るってば。


「おい、魔物達に気付かれるんじゃねぇの? 大体、こんな所からお城まで声が届くはずな……なんだぁぁ~?」


 俺の視界内で突然、光の柱が城から立ち上がる。

 5秒? 10秒? 光の柱はすぐに消えた。と思ったら今度は魔物達がいる場所から今度は火の手が上がる。

 何? なにが起こっているの?

 なんか凄い光の弾が魔物達の中を走りまくっているけど、何あれ? 


「来た、来た。うん、やっぱり私の声が聞こえたようね」


「先生、あれ、ベアル」


「相変わらず猪突猛進ですわね」


「あれ、猪突猛進ってレベルじゃないだろ!」


 少しずつだがベアルと呼ばれる人物の確認が出来るようになってきた。

 確かに人間っぽいけど、人間のしている事には見えないよ。大鎌のような物を振るうベアル。


 ある魔物は一瞬で切り刻まれ、ある魔物は逃げだし、ある魔物は態勢を立て直そうと大声を出すが、次々と薙ぎ倒されてく。ちょっと変なドミノ倒しを見ているようだ。

 無双レベルを通り越して無敵レベルじゃん。あの人、絶対にラビィーよりも強くない? あの人単騎で魔王の城に特攻しても大丈夫でしょ。


「それは違いますわ、麒麟様」


「なんかもう本になる事がどうでもいいぐらい心を読まれてる気がするよ」


「あれはベアルが覚醒してるからですわ」


「俺のツッコミはスルーかよ。これだけツッコんでいるんだから、もう少し反応してほしいぞっと。……なんだ、この雄叫びは?」


 遠くの方から確実に近づいてくる雄叫び。

 何これ? ちょっと怖い。でも、俺は男だ。女性たちを守る立場。


 ラビィー達から一歩だけ前に出る俺。おぉ、こうするとちょっと主人公っぽいよね。

 ……誰だ、主人公ならもっと前に出ろよって思った奴は。すっげ~怖いんだぞ。


「何それ、私たちを守っているつもり? そんなの不要よ。ベアルが来ただけよ」


 ……守り甲斐のない奴らだ。まあ、この人たちは俺よりも確実に強いけどね。


「うぉぉぉ~。パンチャァァァ~、マイ・スウィィィィィト・ラヴリィィィ・エンジェルゥゥゥ」


「先生、来たわ。ベアルよ」


「あれが……ベアルだと……」



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