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第10話 教育係、発信器扱いされる

「はあ、はあ、まだ来るのかよ!」


 俺は手に持ったアサルトライフルを撃ちまくり、魔物達を次々に倒していく。

 周りを見渡せば少しずつだが魔物の数は確実に減っているように思える。


 ……あれ? 

 俺って結構強くない?


「気のせいよ」


「ラビィー、俺の呪いの本も読んでないのに心の中を読まないでくれるか?」


 両手に剣を持って、クルクルと回りながら魔物達を次々と倒していくラビィー。

 何あれ? どっかのアニメの無敵ヒロインなの? 


 これで常識があれば、ヒロインの座は完全安泰なのに。

 どうしたらそんな風に育つ事が出来るのか教えて欲しいよ。 


「おっと、パンチャ。今、フォローに入る!」


「あんたの手助けなんて必要ないわ!」


 パンチャは自分の身長よりも長い十文字槍を器用に振るって、敵を薙ぎ払っていく。

 端からその様子を見ていると、とてつもなくシュールな映像だ。小学生にしか見えないパンチャが、自分よりも大きな槍を操り、自分よりも大きな魔物達を次々に倒していく。

 ロリ好きが見たら引くのだろうか? う~ん、やっぱりシュール。


「麒麟様、そんなにパンチャを視姦しないように。ロリコンがばれてしまいますよ」


「……」


「今度は放置プレイですか? 麒麟様はMと見せかけて実は隠れSだと。困りましたわ。私、隠れMなので弓を持つ手が震えてしまいますわ」


「スルーしてもこれかよ!」


 俺の後ろから長弓で次々と矢を放ち、敵の急所を確実に撃ち抜いていくシープ。

 時には3本の矢を同時に放ち、3体同時に倒すという離れ業を見せる。


 美人でスタイルが良くて、ラビィーとは違う系統。

 これで下ネタを言わなければ完璧なのに。言葉のチョイスが悪すぎ。

 そんな事を思っていた俺の左耳すれすれをシープの矢がシュッと音を立てて通って行った。


「うぉ! あぶねえっ!」


「ごめんなさいですわ。少しだけ手元が狂ってしまいました。何か良からぬ空気を感じたもので」


 ……ねぇ、この世界の人たちって心を読めるの? ニュータイプなの? なら俺の言葉や心情を物語にすることないと思うんだ。

 まあ、今思っている事もどうせ後でこいつらに読まれて、俺はボコボコにされるのは間違いないんだけど。


 そうこうしている間に魔物達は全て倒され、周りから殺気が完全に消えた。

 やっと中二病の舞台から解放される。


 3人娘たちが返り血を拭きながら集まってくる。

 えっと、こういう裏側は出来れば見たくないと思うのは俺だけじゃないと思う。


「なあ、なんか魔物との遭遇率が高くないか? 城を出発してからもう12回目の戦闘だぞ。これがアニメだったら1クール12話、ずっと戦闘シーンで低視聴率は間違いないぞ」


「先生、ごめんなさい。本当に何を言っているかわからないわ」


「なんかごめん。本当にごめん」


「でもここまでの魔物との遭遇率の高さの原因はわかっていますわ」


「えぇ。原因はあんたよ。破廉恥教育係馬鹿!」


「すまん、罵詈雑言は1つに絞ってくれ。1つならまだ受け入れられる」


 しかし、俺が原因? なんでだ? 俺に発信器にもついているのか?

 ……あっ、付いているね。決して取れない発信器が。呪いと言う名の発信器がね。


「馬鹿にもわかったみたいね。あんたの見るもの、聴くもの、感じた事、全てが本に載るのよ。つまり、あんたがいる限り、私達の通る道や場所が魔王ベスボルに筒抜けなのよ。あのババアが伝えているに違いないわ」


「まあ、今までの遭遇率を考えれば間違いないだろうな」


「ふっ、安心しなさい。馬鹿のあんたには考えもつかない解決方法を、あたいは思いついたわ」


「マジで? この呪いと言う名の罰ゲームから逃れる方法って?」


「簡単よ。あんたが死ねばいいのよ。あたいが三途の川を見に行かせてあげるわ。痛くないように見に行かせて……あ・げ・る」


 見た目は可愛い幼女が、凄い笑顔で十文字槍を持ってにじり寄ってくる経験ってみなさんありますか? 

 すげぇ~怖いです。夢に出てきそうなほどです。確実にトラウマになりますよ、これ。


「パンチャ、頭良い」


「うわぁ、納得しちゃったよ。俺が死んだらお前の教育係を誰がやるんだよ」


「あっ、そっか」


「思考能力を疑うレベルだよ~」


 ラビィーには一般常識より、まずは生きている事の大事さを教えるべきじゃないのか? 

 それに女の子とキスもした事ないのに死ねるか! しかも味方に殺されるってないわ~。


「じゃあ、先生どうするの?」


「どうするのって言われても」


「だからさっさと三途の川を渡ればいい」


「却下だ!」


 だからなんでその方向に持っていこうとする。

 あっ、パンチャだから仕方ないか。

 でもないよ~。ないない。そんな俺たちの様子をニコニコと見ていたシープが口を開いた。


「なら、こういうのはどうでしょうか?」


 そう言いながら手に持った手拭いで俺に目隠しをする。

 なに? なにをされるの、俺?

 あっ、なるほど。俺が目隠しされて移動すれば、どこにいるのかわからないから敵に場所を知られることがないってことだ。シープさん、頭良い~。


「これで麒麟様の目から入る情報はシャットアウトできました。麒麟様、目隠しプレイだけで大丈夫でしょうか? ご希望なら両手両足、お身体まで縛り上げますが?」


「誰もそんな事を期待してないです。ラビィーも縄なんて用意しなくていいから。ラビィーの方がもう少し常識に縛られた方が良いと思うよ~」


「上手い事を言ったつもりか! 馬鹿のくせに!」


 なんか久々にツッコみを受けた気がする。

 あ~、なんか楽な気がする俺ってなんか間違っている?

 そっか、パンチャは基本的にツンデレ要素だけでボケじゃないからツッコミをする必要性がないんだ。

 あっ、でも、こいつはラビィーやシープにはツッコミすることはないわ。やっぱり俺の役目か。


「縛らないのですか? 残念です。で、聴く方ですが、これは麒麟様には教えない方向で参りましょう。麒麟様はカルサカに来られた分ですので地理には詳しくありません。私達だけが分かっていれば、麒麟様はどこにいるのか分からないのですから、本に記しようがありませんので」


「呪い……じゃない、教育係のカッコいい所が載るはずの本だけど、こうなると厄介でしかないわね」


 パンチャさん。今、呪いって言いました?

 まあ、確かに呪い以外に何物でもないですけどね! これ、解除する方法とかないのか。落ち着いたら調べてみるか。


 このまま個人情報の垂れ流しは色々まずいよね。

 俺がいた世界なら色んな人に狙われるレベルだよ。鴨がネギ背負って鍋まで用意しているレベル。想像しただけで銀行からお金が出ていく感じがするよ。


「では、麒麟様は目隠ししたままラビィーの後ろへ乗ってください。道などは聞かないでくださいね」


「先生、しっかり捕まる」


「こ、この辺?」


「先生。シープほど、胸、大きくないから掴み難いと思う」


「ラビたんのどこに触っとんじゃ~!」


 パンチャの掛け声とともに横腹に強い衝撃。

 あっ、蹴られたんだね、俺。うん、読者の想像通り、馬から蹴り飛ばされていますよ。今回はどれぐらい飛ぶのかな~。衝撃からすると最高記録並の衝撃だけどね。


 でもさ、見えないんだからしょうがないでしょ! 確かに柔らかい物の感触が手の平に残っている。意外に大き……いやいやいやいや、これ以上の描写は控えよう。

 後世に残るのだから、色んな所から苦情が来て俺の命の危険もありそうだ。特にパンチャの容姿なんて描写なんてしたら……うぉ、考えただけで三途の川が見えちゃったよ。


「さあ、いつまでもここにいては危ないですわ。先を急ぎましょう」


「先生、置いて行くよ」


 いや、見えねぇって。しかし、蹴られて飛んで行った俺の心配は全くしないのね。この現状に慣れてきた自分が少し怖い。

 朱に交われば赤くなる。初めてこの言葉の意味が分かった気がするわ。



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