ルミナの森
ルミナの森の空気は、街とはまるで違っていた。
木々の葉が空を覆い、やわらかな緑の光が地面に落ちている。
風が吹くたび、枝がささやくように揺れた。
ヒロは思わず深呼吸する。
「いい森ですね」
ひよりが小さく頷く。
「この森、食材が多いんです」
「だからグルメギルドの依頼もよく出ます」
足元の土はしっとりしていた。
木の根の近くには苔が広がっている。
ひよりがしゃがみこんだ。
「この辺りです」
ヒロも覗き込む。
小さな茸が、群れるように生えていた。
「お、これか」
ひよりが説明する。
「森茸です」
ヒロはカバンから小刀を取り出した。
ガランからもらったナイフだ。
「こういうのって……」
「根元から切ればいいんですよね?」
ひよりが微笑む。
「はい」
ヒロは慎重に茸を切り取る。
ぽとり、と手のひらに落ちた。
ヒロは少し嬉しそうに言った。
「なんか、採取って楽しいですね」
ひよりがくすっと笑う。
ヒロはガランにもらった収納袋に茸を入れていく。
そのときだった。
木の影から、なにかがちらっと動いた。
ヒロが顔を上げる。
「あ」
草の間を、のそのそと小さな生き物が歩いていた。
緑色の鱗。
長い尻尾。
「トカゲだ」
ひよりも振り向く。
「あ、森トカゲですね」
森トカゲは、こちらを一瞬見てから、のんびり歩いている。
ヒロは少し笑った。
「森トカゲには害はありません」
「おとなしいです」
ヒロは安心したように言う。
「よかった」
すると、ひよりがさらっと言った。
「でも」
「食べられます」
ヒロ
「え?」
ひより
「おいしいですよ」
ヒロは森トカゲを見る。
トカゲはのそのそ歩きながら、草の影に入っていった。
ヒロは苦笑する。
「……この世界、なんでも食材ですね」
ひよりが微笑む。
「作り手は特に」
ヒロはもう一度トカゲの消えた方向を見る。
「今日は見逃してやるか」
ひよりがくすっと笑った。
森の中は静かだった。
風が葉を揺らし、光がゆっくり動く。




