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この世界の呼吸2

「……あら」




ゆっくりと身を乗り出す。




「そのタグ……」




ヒロはきょとんとした。




「ああ、これ?」




耳のピアスを軽く指で触る。




「島で世話になったじいさんにもらったんです」




「……島?」




トワさんの目が細くなる。




「レルネ島ってとこで。魔物に襲われてるとこ助けてもらって」




「そのあとスープご馳走になって……」




そこまで言ったときだった。




「……ちょっと待ちなさい」




トワさんの声が、少し低くなる。




「その人、名前は?」




ヒロは少し考えてから答えた。




「確か……ガランって言ってました」




その瞬間。




トワさんとノエルが、同時に目を見開いた。




「……は?」




ノエルが思わず声を漏らす。




トワさんはしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。




「……あのジジイ」




「まだ生きてたのね」




ヒロが目を丸くする。




「え、知り合いなんですか?」




「知り合いどころじゃないわよ」




トワさんは肩をすくめた。




「昔、このギルドでも散々暴れてた人よ」




「冒険者ギルドでも、グルメギルドでも、鍛冶でもトップの有名人」




「とんでもない変人」




ノエルが苦笑する。




「でも、腕は本物だった」




ヒロは思わず笑った。




「やっぱただの飯好きのジジイじゃなかったんだ」




「当たり前でしょ」




トワさんはふっと息を吐いた。




それからヒロを見て、少しだけ優しい目になる。




「……なるほどね」




「ガランが目をかけたってわけ」




ヒロは首を傾げた。




「目をかけた?」




「ええ」




トワさんはゆっくりうなずいた。




「あの人が、自分の作ったタグを渡すなんて滅多にない」




「それだけで十分よ」




ヒロは少し照れくさそうに頭をかいた。




「まぁ……飯食わせてもらっただけですけど」




トワさんはくすっと笑った。




「その“だけ”が特別なのよ」




少し間を置いてから、ふっと言った。




「ところで」




「あなた、宿は?」




ヒロは一瞬固まった。




「あー……」




苦笑する。




「今日この街に着いたばっかで」




「まだ探してないんですよ」




ノエルが呆れたように笑う。




「この時間から?」




「野宿する気?」




「いやいや、さすがにそれは」




ヒロが慌てて手を振る。




トワさんは肩をすくめた。




「なら、泊まっていきなさい」




「……え?」




「店の裏が家なのよ」




「客間も空いてる」




ヒロは驚いて目を瞬かせる。




「いや、そんな……」




トワさんは軽く笑った。




「ガランが送り込んだ客を、外に放り出すほど冷たくないわ」




「それに」




厨房の奥で作業しているひよりをちらりと見る。




「もう少し、話もしたいしね」




ヒロはしばらく迷ってから、小さく頭を下げた。




「……じゃあ、お言葉に甘えます」




トワさんは満足そうにうなずいた。




その横で、ひよりが少しだけ驚いた顔をしていた。




でもすぐに、ふっと笑う。




その笑顔を見たとき。




ヒロの胸の奥が、また静かに温かくなった。




(……なんだろうな、この感じ)




✦To be continued✦

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