第91話 サンドブラスト技法と吹きガラスの瓶
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スライムには無限の可能性がある。
「何を言ってるんだ?」
工房の作業室で思わず呟いたら、師匠に突っ込まれた。
「スライムの皮の汎用性だよ」
「スライムの皮をどうするんだ?」
「耐熱性があったから小型炉にガラス入れる時下敷きにしたでしょ? ガラスと癒着しないですぐ剥がれたし、焦げ付いたりしなかったんだよね。剥離紙として優秀なんだ。で、このスライムの皮をこうして」
「ガラスに貼るのか?」
「うん」
「貼ってどうするんだ?」
「こうやって、切り抜いて……」
ガラスの板にスライムの皮を貼ってナイフで切り抜く。絵は難しいのはとりあえず本番でやるとして、三角にしよう。
「ふむ?」
俺はおもむろに杖をとりだし、三十センチほど離して先をガラスに向ける。
「おい? 何を……」
「サンドブラスト!」
その瞬間、盾の呪文も素早く唱えて自分を保護する。
細かい砂礫がガラスを襲う!
うん。いい感じ。
「いい感じじゃないだろ」
「はい?」
そこには怒りをあらわにした砂まみれの師匠が!
「ごめんなさい」
俺は即座に土下座した。
「それで? いきなりガラスを攻撃したわけは?」
「そ、それはこれだよ! ほら、前に話して器具作ってもらってるって言ってたやつ!」
「ん? 砂を圧縮してとか…」
「そうそう!」
俺はおもむろにぺりぺりとスライムの皮を剥がした。
ちゃんと三角の形にすりガラスのように白くなっていた。
「ほら! こんな風になるんだよ?」
師匠はまじまじと見つめて顎に手をやって頷く。
「なるほど、こういう模様をガラスに入れたいからずーっとアホみたいに砂の魔法を学んでた、と」
「アホみたいって! ひどい!」
「魔法を使わない方法の器具はもうすぐできるはずだぞ。だが、今の実験で問題点が見つかっている」
「あったかな?」
「この格好を見てわからないのか? ううん?」
あ、まだ砂まみれでしたね! てへ。
「保護メガネと、作業用の服がいるかな?」
「仮面の方がよくないか?」
ガスバーナー使う人の使うようなやつかな?
「そうかも。で、上げ下げできるやつで、目のところは透明なガラスじゃないと作業できないよ?」
「割れないガラスか?」
「割れないガラスはないと思うよ」
「じゃあ、どうする?」
「割れにくくする魔法をかけるとか、できない?」
「そうするとお高くなるぞ」
できるんだ。
「今から強化ガラスの開発は難しいと思う。時間かかると思うんだ。ハンスたち、鏡作るのと瓶作りでほぼ手が空かないって嘆いてるし」
「人手不足はどうにもならないな」
「うん」
「わかった。三つくらいなら、付与魔法は俺がかける。ポーション代から引くからな」
「え? う、うん」
俺の経費か〜まあ、この杖もらったし。仕方ないかな。砂まみれになった師匠はカルヴァにからかわれてるし。
じゃあ、防護用のガラス作らないとね!
粉塵とか、換気とかにも配慮しないと。師匠、ほんとにごめんなさい。
その後出来上がった防護服に俺はファンタジー世界の神髄を見た。
「もう、面倒だから、付与魔法で結界にした」
消防隊員が着るような一式と思ってくれていい。帽子に布の覆いがかかって顔以外を保護する。防護眼鏡は俺が何とか形にしたゴーグル型。ハイネックの長袖の服(これは何でもいい)を着て、お魚屋さんのような前掛けのエプロン。手には長めの手袋。長靴。ズボンは長いのなら何でもいい。
そう。帽子・エプロン・手袋・長靴をセットで全身防護型の結界が展開される防護服。
どこの国に攻め入るの? これ、兵士にも応用できるよね?
「ヴァンデラー卿、ちょっと話があるんだが」
父に連れられて行ってしまった。
換気も前世の工場にあるバキューム型の魔法陣を使った魔道具が置かれていたよ。
師匠、凄いけど、高価なんじゃない?
それと一緒にエアーブラシ型のサンドブラスト用の機械を魔道具で作ってくれた。風魔法の応用だって。金属部品は鍛冶工房の苦心の作だそう。吹き出し口を作るのががものすごく大変だったとか。ありがとうございます!
箱の中で作業すれば大掛かりな防具はいらなかったことに気付いたけど、どうしよう。すっかり忘れてたよ。ごめんなさい、師匠。
結局、箱型の作業用の密閉容器を作り、それに結界を張り、隙間から砂塵の漏れを封じて、手袋型の保護具の結界と相互作用するようにし、安全性を向上させた。
バキューム型の換気装置もちゃんと繋がっていて、その先の箱で粉じんは回収される。クリーンの魔法の応用だとか。
砂塵の吸い込みはないはずだけど、一応マスク型の呼吸補助具も作った。
ガラスを作業面に使ってるけど、結界と強度向上の魔法が付与されていて透明度もばっちり。
ほんと、師匠凄いなあ。というか魔道具凄いよ!
そして作った、ルヴェール領の酒蔵の瓶。
ハンスが涙目になっていた。
薄く綺麗な丸みを帯びた瓶。それにルヴェール領の紋章がサンドブラスト技法で底面に描かれている。
和紙によるラベルはそれぞれのお酒の名前と俺が父と師匠にプレゼントしたラベルの絵が描かれている。
「ルヴェールの蒸留酒を広める時が来たな」
「ああ」
父が言って、師匠が頷く。ローワンや母も頷いていた。
集まった職人たちの目にもうっすらと光るものが見えた。
その日、ルヴェール領の発展に寄与する特産品の一つが生まれたのだった。
次の投稿は18時になります。
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