第303話 力技
ラヴァと工房に来た俺はまず、炉に火を入れた。
(僕! 僕の出番!)
ラヴァが喜々として薪の上で踏ん張る。
可愛い。
「ありがとう。ラヴァ」
それからポーション作り。
ポーションは錬金釜で作る。
二時間ほど使って、二十本のポーションを作り終えた。
「よし。次はガラスだ」
ラヴァのおかげで、いい頃合いに炉があったまっていたので、ガラスの材料を入れて融けるのを待つ。
その間に作業場の整理をして、何を作るか考える。
魔道具のランプ作りがひと段落したけれど、あれはアートではなくて工芸品なんだよなあ。
もっともっと、美術品になるような作品にしたい。
ランプといえばガレとかなんだけれど、あの作品の真似をするならいろいろと準備が必要だ。
錬金術で何とか……できるのかな?
とりあえずスケッチでもしてみるか。
細かい彫刻をする道具は作ってもらっているし。
金とか銀はダンジョンでもらった鉱石の中にあったから、いけそう?
いろんな手法を使っているんだよな。
一個一個再現して、慣らしていこうかな。
立体的な模様を作る。題材は何がいいかな。
ガレは植物や昆虫がモチーフだったけれど、精霊とか幻獣とかはなんか危なそうな気もするし。
頭の中で『わふっ』という幻聴を聞いた気がした。
(主、僕、このままでいい?)
ラヴァから念話が来た。
「あ、もう大丈夫だよ」
充分にガラスは溶けた。色ガラスにするかどうか迷っている。
そういえばラメ入りガラスもあったな。
この世界ラメなんかあるんだろうか?
あの原料は魚の鱗とかだった気がする。魚の鱗なら、料理長に頼めば手に入りそう。あとは雲母とか、金属だったかな?
ガラスに混ぜて融けない素材はなんだろう? 温度に気をつけたらできるだろうか?
錬金術で、できたりするかな?
面白そう!
とりあえず、ガラス棒を作っていこう。
「師匠!!」
執務室の師匠に突撃した。
「あれ?」
(いないね)
「ルオ様」
背後からスピネルの声が聞こえた。
「あ、スピネル。師匠はどこにいるかな?」
「まだお休みです。もう少ししたら、起きてきますよ」
「そうなんだ。起きたら相談があるって伝えてもらっていい?」
「はい。かしこまりました。お茶の時間ですが、ティールームにお茶を用意しますか?」
「お願いします!」
スピネルの淹れたお茶を飲んでいると、師匠が現れた。
「なんだ? 相談って?」
師匠の顔は朝より元気になっている。よかった。
「ガラスの中にね。キラキラした物を入れられないかって思って」
「キラキラしたもの?」
「細かい金箔みたいな感じ?」
「金箔でいいんじゃないか?」
「そうじゃないの。なんていうか、もっとお安い素材が良い」
「お安い素材」
「金箔ってお高い素材でしょ? フューミングに使ったら原価が結構なお値段になったし、違う素材を考えてるんだ」
「……いい傾向だ。安い原価で高額に売りつけないとな」
うんうんと頷いて、スピネルの淹れた紅茶を飲む師匠。
「師匠、言ってることがぼったくりなんだけれど」
「いやいや。違うぞ? 技術代っていう付加価値がその差額に含まれているんだ。魔力も使ったら、高価になるのは当たり前だ」
「まあ、できる限り吹っ掛けるのは商売の基本だと思うけど」
「だろう。まあ、需要と供給のバランスもあるから一概には言えないがな」
師匠、錬金術師だよな。商売人じゃないよな。
いや、商品作って売ってるから商売人といえるのか。
「魚の鱗できらきらしたのあるかなあ?」
「んん??」
「ああいうちょっと光る素材を加工して、そういうの出来ないかなって思ったんだー」
「光る鱗?」
「お腹とか光っている魚の鱗」
「ああ、何となくわかった」
光ものって奴だね。
「それをこううまい具合に出来ないかって思って」
「なるほど、捨てるような素材を有効活用しようってわけだな」
「ちょっと違うけど、そうだね」
「魚なら、今夜料理長が魚料理にするって言ってたぞ」
「ほんとに!?」
料理長に鱗をもらった。浄化して箱に入れた。
師匠と一緒に工房で錬金釜を使って加工することにした。
錬金術はイメージだ!!
「ラメになって! 加工!」
「願望のような詠唱だな」
突っ込まないで!
錬金釜が光ってだんだん光が消えていく。
錬金窯の底に残ったのは砕けたキラキラ光る小さな破片。
ラメだ!
「やった!」
「……え、そういうのでいいのか?」
「いいの」
師匠が何とも言えない顔をしていたけれど、いいんだ!
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