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第302話 強制終了の翌日

「まさかルオの組が合同演習を強制終了してしまうとはな」

 師匠が夕食の席で笑っている。

 集まってきちゃったんだから、仕方ないのでは。

「旦那様の弟子は旦那様に似るのでございますね」

 スピネルがスープの皿を置きながら言う。

「え、どういうこと?」

 師匠に俺が似る??

「……あー、俺が学院にいた時に、相手を倒しすぎてな。日程を短くしたことがあってな」

「それはもう、鬼神のごとき所業だと伺っております」

 どう考えても、師匠が頑張りすぎたって事しか浮かばないんだけど!

「まあ、あの時は若かったから……」

 師匠が視線を逸らした!

「頑張っていらした様子はすぐに瞼の裏に浮かびます」

 スピネル、からかってない?

「忘れてくれ」

「いえ、大切な思い出ですから」

 スピネルの目が優しく細められる。

 スピネルは、学院時代の師匠を知ってるんだな。

 俺のように怒られたりしたんだろうか?


「スープが冷める。食べよう」

「はい」

「神と精霊に感謝を」

「神と精霊に感謝を」

 祈ってから食事に手を付ける。

「明日は休みだ。日程が短くなったからな」

「そうなんだ! やったー!」

「ルオ、食事中だぞ? 大声は控えるように」

「ごめんなさい」

「まあ、気持ちはわかる。工房で、ガラスを弄ってもいいぞ」

「!!!」

 口に入れていたスープを咽ないように飲み込む。

「いいの?」

「空いた予定だからな。ポーションも作るんだぞ」

「はい!!」

 ガラス、ガラス作っていいんだ!!

 やったああ!

 今度は心の中で叫んで、食事を終えた。


「何を作ろうかな~」

 休み明けの学院の予定を確認して、ある程度予習をする。

 明日のガラス作りに向けて、余計な邪魔が入らないように事前に出来ることはするんだ。

 それでもガラス作りのことを考えて、ペンが止まってしまうのは許してほしい。


(主、魔力!)

 ラヴァが鼻息荒く頬を突く。

「あ、そうだね。寝る時にいっぱい持っていっていいからね」

(やったー!)

 ラヴァが飛び上がって喜ぶ。

(主、早く!)

 目を輝かせているラヴァにそれ以上抵抗できず、机の灯りを消して、着替えてベッドに向かった。

 ベッドサイドの灯りは俺の作った魔道具だ。

 それを消して真っ暗になると、ラヴァがぼうっと浮かび上がる。

「ラヴァ、存分に」

(主! 大好き!)

 大好きの前に『の魔力が』と聞こえた気がするけれど、今回はラヴァの活躍があってこそだから、仕方ない。

「おやすみ、ラヴァ」

(おやすみなさい!)

 首の痣が熱くなったのを感じると、意識が落ちていった。


 朝、小鳥のさえずる声に目が覚めると飛び起きた。

「ガラス!!」

 その声に枕もとで寝ていたラヴァが飛び上がる。

(!???)

「あ、おはよう、ラヴァ。ごめん。びっくりさせちゃった?」

 ラヴァを掌で受け止めて、鼻筋を指で撫でた。

(おはよう、主。ちょっとだけびっくりした)

「ガラス作っていいって言われてたからついね。ラヴァにも手伝ってもらいたいんだけど、いい?」

(もちろんだよ!)

 ラヴァは手の上でくるくる回った。

 俺は窓を開けて空気を吸い込むと、着替えて顔を洗い、部屋を出た。

 日課の鍛錬を済ませて、食事に朝食室に向かう。朝食室に入ると、目の下に隈ができた師匠がいた。


「おはよう、師匠。目の下凄いことに」

「ん? 最近頑張りがきかないのか?」

 師匠は指で目の下に触れる。

(寝不足なのよ!)

 カルヴァが怒り気味に言う。

「仕方ないだろう。合同演習の採点は休み明けまでなんだから」

(もう! ルオも活躍するのはいいけれど、採点しやすく動いてよね)

「んん??」

 カルヴァの怒りが俺に飛び火した。

「あー、混戦になっただろう? あれで、ポイントが誰かわからないケースが出て。映像記録と照らし合わせていたんだ」

(それと、精霊に訊いてたの!)

「ええ?」

 精霊に訊いた? それをしたのはカルヴァだよね?

 中級や下級の精霊は話ができないもの。

(塗料玉が一番最初にぶつけた人を割り出して、それが終わったのはさっきよ)

「師匠、お疲れ様。寝た方がいいんじゃないかな?」

「あー、そうだな。食べたら少し仮眠する」

(まったくよ! ちゃんと寝てくれた方がいいんだけど、仕方ないわね)

「起こしてくれると助かる」

(わかったわ。私に任せて!)

 カルヴァはやっと気が済んだのか、定位置の師匠の肩に座った。

「僕は工房でポーション作りをした後、ガラスを作ってるよ」

「わかった。ほどほどに頑張れ」

「はい」

 俺と師匠は朝食を和やかにすませた。

 師匠は執務室へ、俺は工房へ向かった。


「ラヴァ、ガラス作りだ」

(うん!)

お読みいただきありがとうございます。


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