第301話 夜間戦闘
(主!! 来たよ!)
頭の中に響くラヴァの声に起き上がる。
隣のタビーを起こしてテントを出た。
結界の魔道具が仕事をしているはずなので、腰のポーチの塗料玉に手を伸ばす。
「敵襲か?」
「うん。俺がとりあえず、迎撃するから、タビーはみんなを起こして」
「わかった」
塗料玉を6個、風魔法で宙に浮かばせる。
イメージは師匠の使った攻撃魔法だ。
空中にいくつもの魔法陣が浮かぶさまは目に焼き付いている。
(ラヴァ、どこにいる?)
ラヴァが精霊の目を借りて潜んでいる敵チームを教えてくれた。
「了解。塗料玉、スタンバイ」
飛び込んでくるタイミングを狙う。
よし、来た!
相手チームが飛び出して、塗料玉を投げようとする腕に俺は風魔法レールガン改良型で塗料玉を打ち込んだ。当たっても痛くないよ。
「え!?」
「わっ」
「嘘!!」
「ええ?」
「うっそだろ!?」
「ひえ」
悲鳴が上がって、黄色の塗料が着いた手を見て呆然とする相手チームの面々。
「はーい、終了!」
ラヴァが肩で、ふんすっと鼻息荒く得意げにしてた。
「演習終わったら、魔力いっぱいあげるね!」
(わーい!)
飛び上がって喜ぶラヴァの鼻先をツンと突いた。
「ルヴェール先輩、スゴ……」
「どんな攻撃魔法なんや」
「えええ?」
「なんの魔法なの?」
テントの方から何やらドン引きしている声が聞こえた。
そういえばこの魔法、今のチームメイトに使ってるところ見せたことなかった。
(主、なんか集まってくるよ?)
塗料玉を回収していると、ラヴァが伝えてきた。
「え?」
俺はあたりを見回した。
うっすらとライトの光が木々の間から見えた。
「敵が集まってきているみたいだ。各自円形に陣を組んで、辺りを警戒! 塗料玉を準備!」
俺は風の盾でみんなを守る。
まあ、一、二個は当てたいけどね。
「なあ、どう考えても、びかーって奴のせいじゃないか?」
タビーにこそっと呟かれた。
「あ。いるってわかっちゃったから?」
「多分なぁ。混戦になるんじゃないか?」
「鉢合わせになったらやり合うよねえ」
(ラヴァ、孤立しているチームはどっちの方?)
ラヴァは鼻先を向けて方向を教えてくれた。
「みんな、あっちからくるチームは鉢合わせしない感じ。そのほかは、ここに来るまでに数が減っているかも」
みんなが頷く。
「来たよ!」
飛び出してくる相手チーム。そして投げられ塗料玉は結界と、風の盾がキャッチ。
どうやら残りのチームの大半はここに向かってきているようで、一晩中、襲撃は続いた。
その中に、アリファーンとルーンのチームもいた。
「何や、小鳥連れてはる!?」
ラウノがアリファーンの肩にいるチーに気付く。
『チチ!!』
さすがに空気を読んで話さなかったチーに成長を見た。
そんなチーは塗料玉がアリファーンに投げられると健気に盾となったが、体が小さいので、余波がアリファーンに当たり、終了。
ルーンも、それに気を取られ塗料玉を受けて終了。
結局、俺たちに打ち取られてしまった。
王族への忖度?
知らない子ですね。
夜明けに照らされる拠点の惨状。
マーキングされた人たちは連れ出されていないから、その踏み荒らされた足跡やなんかで、周りが荒らされたように見えた。
結界の魔道具が、テントを守ってくれていたけど、地面には黄色の塗料があちこちに飛び散っている。
環境破壊じゃないの? 水で落ちるって言ってもねえ。
「今のでいったん襲撃は終了だね。みんな、辺りに気配はないよ」
(うん。人が集まっている気配は森の外だよ)
「そうか。森の外か。ん? 森の外?」
(師匠、来た)
「よー、お疲れさん」
朝日に白い歯が輝いていた。
「し……ヴァンデラー先生」
「ここを片付けて、森を出ろ」
「え?」
「合同演習は強制終了だ」
みんなが「は?」と首を傾げた。
「6組以外、全員脱落したからな」
師匠の言葉にみんな顔を見合わせた。
「え―――!?」
俺たちの声に、鳥がバサバサと飛び立っていった。
採点役の講師が涙目になった、夜間の大乱戦。
最後まで全員無事だったうちのチームがぶっちぎり首位になっていた。
お読みいただきありがとうございます。
面白いと思われましたら☆応援(評価)お願いします!
ブックマークもぜひ!




