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第298話 野営地

 みんなの寝息が聞こえる。

 灯りはつけていないから、肩にいるラヴァの輝きと、ダンジョンの不思議でぼんやり見えるのだけが頼り。

 索敵係のラヴァが何も言ってこないから、魔物はいないんだと思う。

『愛し子』

 ぽんと目の前にダンジョンの精霊が現れた。

(ダンジョンの精霊さん)

『ど、どうだった? ふ、普通の歓迎だったかな?』

 もじもじと両手を握っている様子に俺がうんと頷くしかなかったのは仕方ない。

(もう少しお邪魔しているからね。よろしくね)

『うん!』

 俺の周りをぐるぐる飛び回る様子はカルヴァを思いだした。

 そういえば、精霊はよく空中にいるなあ。

『い、愛し子と同じくらいの人間がいっぱいいるけれど、ま、前と同じなのか、な?』

(うん。僕の通っている学院のダンジョン体験ツアーなんだ)

『ツアー?』

(遠足とか、かな?)

『遠足?』

(うーん、学院のお勉強の一環かな。冒険者と違ってダンジョンを知ることが目的だから)

 合同演習はそんな感じだからね。

 旅行っていうものはないかもしれないな。

 魔物も強盗もいるし。

 平民はお金がないしね。

 もっとお金を持てるようにならないと、ガラス工芸品なんかは一部の貴族の道楽になるんだろうな。

 現に鏡やガラスペンはそんな感じだし。


 ダンジョンの精霊はラヴァがいる肩の反対側に座った。

『じゃあ、ま、魔物の配置は激しくした方が、い、いいかな?』

(んん?)

『ま、魔物を狩りに、き、来たんだよね?』

(ダンジョンだから、そうだね)

『ま、魔物が、で、でないと、つまらないと思う、から?』

(た、確かに?)

『も、もっといっぱい、湧くように……』

(いや、いまくらいで充分体験できてるからね!)

 あぶない!

『そ、そう?』

(うん。精霊さんの心遣いがわかってすごく嬉しいな!)

『……!!……』

 ダンジョンの精霊が俺の顔の周りをめちゃくちゃ高速で飛び回る。

(そろそろ、交代の時間だから、またね)

『い、愛し子! また来てね!』

(うん。また)

 手を振ると、ダンジョンの精霊がぱっと消えた。

(ダンジョンの精霊、主に懐きすぎ)

「まあまあ」

 ついラヴァの頭を撫でる。

 肩越しにタビーのジト目と視線が合った。

 お・き・て・た!


「お、おはよう?」

「おはよう」

「ぼ、僕寝るね」

「ああ、頑張るわ」

 黙っててくれるタビーに友情を感じる!!

「なんか、変なこと考えてないか?」

 タビーのジト目が直らない!

「ないない」

 俺はまたあとで説明だなと思いながら、仮眠を取った。


 タビーに起こされてみんなが体を伸ばしたりしている。

「よし、後は戻って、予定してた野営地に向かうからな!」

「はい!」

 タビー、頼もしい。

「じゃあ、出発!」

 これは俺。

 俺は地図を広げて、帰り道を指示していった。

 程よい感じで魔物が襲ってきて、ダンジョンの精霊に感謝した。

 ハードモードになりそうだったからな。

 良かった。止めて。


 無事ダンジョンを出た。

「6組です」

 俺は代表してプレートを返した。

「一番だな。怪我とかも問題なし。野営地に向かってもいいぞ」

「はい」

 預けていた荷物を受け取って、森に入る。

「よし、予定の野営地に向かうよ! ついてきて」

 ここは俺とタビーが誘導する。

 向かう場所は一年の時に拠点にしたところ。

 地図を見て向かう。


「魔物はそんなにいなさそうだな」

 ダンジョンから出ると、タビーの肩にアームが乗っていた。

「そうだね。ラヴァどう?」

(いるのは、あっちにホーンラビット)

 右方向をラヴァが示す。タビーにそう伝えるとその方向の茂みが動いて何かが飛び出してきた。

「ホーンラビットか」

 飛んできたホーンラビットの角を、タビーが盾で受け止めて、そのまま盾で、地面に縫い付けて首を落とした。

「先輩、凄い」

 思わずという感じで二年のルッソが呟く。

「俺は盾術士だからな。盾を持った方が楽に戦える。特にホーンラビットは角が地味に攻撃力高いからな。受け止めるより避けた方がいいかもな」

「はい」

 ルッソが頷いた。

 俺が生活魔法で浄化と水生成で血抜きをして、ホーンラビットを袋に詰め、野営地に向かった。

 無事野営予定地に着いて、荷物を下ろす。


「日が傾く前に準備を終える。テントの設営を開始する」

 俺が指示出しをする。今回は女子と男子でテントを分けた。

 夜の見張りは二交代。女子も二交代で頑張ってもらう。

 慣れている俺やタビーが助言をしてテントを張り終え、ホーンラビットを解体した。

 女子の方が割と平気な顔をしていた。

「あかん~」

 ラウノが近くの茂みに消えた。

 解体、見たことがなかったのか。

 竈を作って拾った枯れ枝に火を点した。

 鍋を上に置いてお湯を沸かす。離れたところにいる採点の先生が何やらチェックをしていた。

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