第296話 合同演習の始まり(三年目)
第三階層に到達した。
そこでも危なげなく魔物を倒し、休憩を挟んで、戻ろうということになった。
ラヴァが索敵をしつつ、二階層への階段まで戻っている時だった。
(後ろ! こうもり型の魔物!)
後ろ? 振り向いた俺は思わずサンドブラストを発動してしまった。
オーバーキルと気付いた時にはもう遅かった。
耳に響くキーンという悲鳴を上げて消えていった魔物。
そしてドカッという落ちる音。
あ、やば!
宝箱落ちた!
慌てた俺はインベントリに仕舞って証拠隠滅した。
宝箱、インベントリに仕舞えるんだ……。
もう、ダンジョンの精霊さ~ん!
「ルオ、サンドブラストは過剰戦力だから」
タビーに怒られた。ダンジョンの環境破壊と呼ばれる禁忌の魔法を使ってしまった。
「ごめんなさい」
「慌てると、魔力の配分を間違えて攻撃してしまい、後に響くから落ち着いていこう」
タビーが言うとみんなが頷く。
「あはは。魔石落ちたかな。拾うから少し待って」
砂の中から小さな魔石を拾い上げた。
魔石もあったよ。
「素材はない感じか。仕方ない。さ、進むぞー」
タビー頼もしい。
そうして無事、ダンジョンを出て、馬車でみんなを送った。
「じゃあ、また」
「しっかり休めよ!」
「はい! お疲れ様でした!」
「ありがとうございました!」
「ほな、また!」
「ごきげんよろしゅう~!」
みんなを見送って、タビーがまた乗り込んだ。
タビーを送っていくのだ。
「なあ、聞いていいか?」
「うん?」
「宝箱、落ちなかったか?」
「見てた!?」
「音がしたからな。みんなは気付かなかったぽいけど」
「あー、うん」
「こうもりの魔物で、宝箱が落ちる、と」
俺は背中に汗をだらだらと掻いた。
「あ、うん。まあ、タビーは精霊のこと知ってるし、多少はいいか」
ダンジョンの精霊さんは多分、普通に、の意味はあまりわかってないかもしれないから、タビーにフォローを頼むしかないかも。
「は? ダンジョンに好かれている?」
ダンジョンの成り立ちと精霊に関してはともかく、ドロップ率に関しては話した。
「好かれちゃってるんだよね」
肩を竦めて見せた。精霊さんたちにはもう、ほんとに好かれている。
「……まあ、ルオだからな……」
「僕が討伐すると、ちょっと良い物が出ちゃうんだ」
宝箱を取り出して見せた。ちょっと豪華な外装だった。
「いや、ちょっと良い物ってレベルじゃない。ものすごく良い物だぞ」
宝箱自体が価値が高そうだったのをタビーが見て突っ込んだ。その宝箱を開けたら鉱石が詰まっていた。ここは俺が鉱石好きという情報が精霊界隈に回っていると思われる。鉱石はミスリルや宝石混じりだった。
「僕だって、色々苦労したんだよ!」
「あー、うん。わかった。ルオは地図と索敵に集中してていいよ。ラヴァ、不意の襲撃には俺に警告出してくれるか?」
「ラヴァ、僕からも頼むよ」
(わかった!)
タビーを送り届けて、屋敷のベッドに入った時には、俺はあっという間に眠ってしまった。
「ダンジョンの下見はどうだった?」
翌朝の師匠の目の下に隈が見えた。また仕事が詰み上がっているのかもしれない。
「特に目立った問題はなかったかな? みんな落ち着いていたよ」
「そうか。よかったな」
師匠が目を細めて俺を見た。
「うん。あとは連携の訓練と、魔道具なんかの点検を受けたら準備は終わりかな」
「順調なら、心配はないか。油断せず、最後まで頑張れ」
「はい!」
ダンジョンの精霊の歓待具合はもう、当たって砕けるしかないかも。
「今日は一緒に行こう」
「はい、じゃあ、急いで支度してくるね」
俺は荷物を取りに部屋に戻った。
それから二日後。
「ポーション準備よし。魔道具よし」
俺は一つ一つ指差し確認する。みんなの荷物だ。
点検を受けた荷物も返ってきた。
「食料とかも大丈夫だね?」
みんなが頷く。
「よし、馬車に乗ろう」
それぞれに分け、学院が用意した馬車に乗る。
組ごとの馬車で、北の森のダンジョンまで向かう。
「いよいよ、始まるね」
「そうだな。みんな、落ち着いていこう」
俺の言葉に続いてタビーがみんなに声をかけた。
それにみんなが頷き、「はい」と揃った返事が返った。
俺の学院生活で、最後の合同演習が始まる。
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