第294話 恒例
ダンジョン。
それは不思議な場所。
魔物の胃袋とか、世界とは別の空間にある場所とか、色々言われている。
今もなお、どうしてダンジョンが出来るかわかってないんだけれど。
俺たちはその神秘の断片を知っている。
『愛し子~~~~~!! ひ、久しぶりだよぅ~~~~~』
ビタン! とラヴァに叩き落とされたのはダンジョンの精霊だ。
(僕の主に抱き着いちゃダメ!!!)
ダンジョンマスターな精霊は瘴気がある一定以上溜まると、生まれてくるそう。
ダンジョンの精霊のことや瘴気の浄化装置なことを精霊に教えてもらったとは言えない。
「まあまあ」
俺は苦笑してラヴァを宥める。
(愛し子だから仕方ないわねえ)
カルヴァが師匠の肩の上で笑いながら言った。
「相変わらずだな」
苦笑している師匠。
そう。ここは王都のダンジョン。
こっそり転移で師匠に連れてきてもらった。
「精霊さん、お願いがあるんだ」
ラヴァと戯れていたダンジョンの精霊がぱっとこちらを見た。
『な、なにか、欲しいのぅ? アダマンタイトとかミスリルが欲しいの? そ、それともぉ、宝石とか?』
「いやそういうのじゃないんだ。今度学院の行事で来るから、去年みたいに他の冒険者と同じ扱いにして欲しいんだ」
俺がそう言うとがっかりした感じで肩を落とす。
「そのう、僕だけ特別扱いになるとね。変に思われちゃうから……」
『ひ、久しぶりに来てくれたから、歓迎したいのにぃ』
前もお願いしたんだけどなあ。
「わかった! もう少し頻繁に来るから今月いっぱいは歓迎無しでいてくれると嬉しいな!」
ダンジョンの精霊はぱっと顔をあげると嬉しそうに空中でぐるぐる回った。
『う、嬉しいぃ~いっぱい来てくれるのぉ』
「うん……」
『い、愛し子が来てくれるとぉ、みんな喜ぶからぁ』
みんなってダンジョンの精霊たちってことかな?
「そっか喜んでくれて嬉しい。その時は普通にダンジョン攻略するからね」
『転移じゃなく会いに来てくれるんだぁ』
「そういうことになるのかな?」
『た、宝箱にぃ、鉱石、い、一杯詰めておくねぇ』
「ほどほどで……」
スライムドロップはなしでお願いします!
『今日はぁ、遊んでいく?』
期待に満ちた目で見てくるので、頷くしかなかった。
とりあえず、五階層を探索した。
ドロップ率はそこそこで、これなら大丈夫そう。アイテムは鉱石が多かった。
「……普通の感じ、だよね」
「普通とは?」
遠い目をしないで、師匠。
もっとたくさんダンジョンに来た方がいいのかな?
「そうだ。精霊さん、またフェニックスも来るから……」
『ひぃ』
神気は苦手だったみたいだしなあ。
チーの神気はあんまり感じないんだけど。
「ラヴァも殺意が高いな」
師匠がポツリと言う。そう、ラヴァもダンジョン攻略参加中。
ブレス一発なのが、殺意高めって言われるのかも。
もちろん、周りに一般の冒険者がいないのが条件だけど。
(僕、いっぱい倒す)
「ラヴァ、ありがとう。あれ、そういえばカルヴァは……」
師匠の肩に乗っているカルヴァを見た。
(あら、私はお酒造り専門だもの!)
そうだよね。わかってた。
結局、ちょっとドロップ率高め、鉱石多めの結果だった。
夜行ったからあまり時間をかけてということはできなかったしね。
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