第291話 弓と風のガラスペン
師匠にガラスペンの販売状況を聞いた。
ハンスが出荷しているガラスペンは上級貴族、いわゆる伯爵家上位まで販売しているんだとか。
やはり献上されたものと同じ品質のものをということで今も予約待ちだとか。
それにより、弟子の作品でもいいから早急に欲しいという客に対しては少し値段を下げた形で売っているそうだ。こちらは中位貴族、伯爵家中位から子爵家上位中心に売れているそう。
それでも、やはり予約が殺到していて、かなり待つそうだ。
下位貴族には高根の花だということだった。
「え、一年以上待ち?」
そんなに待たせてるの? 商機逃さない?
「鏡やルヴェールの酒瓶とか、他にもいろいろあるからな。ハンスはガラスペンに集中させたそうだ。見習いも増やしたそうだが……間に合ってないのが現状だな」
「僕も作る?」
「……いや、ルオは学ぶことがあるだろう?」
「僕にも作らせて? それくらい領地に貢献したいし……」
欲しい人、そんなに待たせたくないよね。
「……ガラスが作りたいんだろう?」
「もちろんだよ! 学業に影響が出ない範囲で! 作るから!」
「……販売本数は年に四本。オークションにする」
「ええ?」
「すぐ欲しいなら飛び付くだろう? 貴族なんてものは値が張れば張るほど、所有欲を満たすものだ」
にやっと笑う師匠の心が伝わってくる。がっぽがっぽって言ってるよね?
「ええと、じゃあ、季節ごとに一本?」
「大きいオークションは年二回だからそこに二本ずつだな」
「王都で? いつ開催されるの?」
「王都だな。夏と冬だ」
「そうなんだ。今からだと冬かな?」
「いや、来年の夏に向けて準備しよう」
「来年?」
「これからしばらくは単位や卒論に時間取られるのを忘れてないか? マルコムのガラスペンの作製もあるだろう?」
「あ、そうだった」
せっかくだからいい成績で卒院したい。
「上級学院に行くなら試験対策もしないといけないからな」
「行くなら……魔法学院?」
「俺はそこを出ているからな。推薦しやすい」
錬金術を学ぶなら魔法学院がいいだろうな。師匠の弟子だしね。
「うん」
ルヴェールに帰るのは遅くなっちゃうけど、まだ、いろいろ半人前だから仕方ない。
師匠は凄いから超えるなんて言えないけれど、さすが賢者の弟子とは言われたいしね。
まずはマルコムのガラスペン。
残っている必修単位。
それから卒論。
頑張らないと!
マルコムのガラスペンは風と弓のイメージにした。
蛍光色っぽい緑をフューミングで出す。
先に向かって細くなるクリアガラスの中に流線型を模した線が風の通り道を表すように浮かぶ。ほんのりと緑に見えるガラスの中に蛍光色の5つの線が映える。
「どうかな? ラヴァ」
(綺麗! 主!)
「ラヴァも頑張ってくれたおかげだね」
(僕頑張った~!)
くるくる回るラヴァが可愛い。
「今夜は魔力多めに吸っていいよ」
(やった~!)
「いつもありがとうね」
(うん!)
思わず頭を撫でてしまった。
マルコムの誕生日にガラスペンを渡した。
「凄い」
マルコムの表情がガラスペンを見て驚きの表情になった。
「弓と風がテーマだよ」
「あ、ありがとうございます! ルヴェール先輩! 大事にします!」
「これは俺たちからだ」
タビーが代表で、紙とインクを渡す。
「よーし、紅茶とケーキで祝おう」
師匠が淹れてくれた紅茶と、栗を使った焼き菓子でお祝いした。
うちの研究室はみんなガラスペンの所持者になった。
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