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第290話 紅茶とお菓子

 師匠に出された紅茶を飲む。

 少し薄い色の紅茶で緑茶っぽい感じがした。

「これは……」

 アリファーンが目を瞠った。

「ん? どうした? 美味しくなかったか?」

 師匠がアリファーンに声をかけた。

「いえ、父が好きな紅茶だと思ったので」

「国王陛下の?」

 ルーンが首を傾げた。

「そうか。国王陛下は、春摘みの紅茶がまだお好きだったか」

 ぽつりとつぶやいた言葉は多分横にいた俺にしか聞こえなかったと思う。

「そう、この紅茶は希少な紅茶でお高いんだ。じっくりと堪能してくれ」

 みんながぎょっとしてカップを見る。

「道理で美味しいと……対価を要求されたりするんでしょうか」

「うわ、どうしよう。無茶な課題を課せられたら!」

 ルーンとタビーの言葉に、ケンダルとマルコムがどう反応していいか悩んでるよ!

「お前たち……俺を何だと思っているんだ」

 もしかして、師匠って紅茶好きなのかな。銘柄当て出来るくらい。

 だから美味しく淹れられるし、ダンジョンで出るって聞いて喜んだのかも。


 論文のテーマを師匠と相談して決めて、提出する書類に書き込む。

 アリファーン、ルーン、タビーもだ。

 ケンダルとマルコムはまだだけど、先んじて卒論のひな型を作っておくこともできると聞いて、頑張る様子だ。

「ポーション作るぞ」

 師匠の号令にみんなは声を揃えて「はい」と返事をした。


 それからポーション作りと論文の構成、研究資料のまとめ方などを教えてもらい、師匠と一緒に作っていった。

 休憩時間にケンダルの師匠と俺を見る目が、ちょっときらきらしすぎてたので何かあったのか、聞いてみた。

「あのですね。ヴァンデラー先生とルヴェールの農業師の活躍が領民の間で話題になっていて! 父からもいろいろ聞いて、さすが放浪の賢者である先生とその弟子のルヴェール先輩だと思って!」

 まっすぐな尊敬のまなざしが眩しい。眩しすぎる。

「ええと、僕はただ、師匠について回ってただけで……」

「不作問題にご尽力いただいたので! それでなくても、食糧の支援も受けたとか。感謝してもしきれません!」

「そ、そう……」

 その様子を見ていた他の面々の生温かい目は物凄く居心地が悪かった。


 ケンダルは魔法神の土下座を受けてるから神様は知っているけれど、愛し子どうこうっていうのは知らなかったんだっけ?

 精霊王様はものすごくいい方だからなあ。

 敬ってほしいけれど。

「そ、それなら、精霊王様に祈って欲しいかな? メリーディエース伯爵領都に精霊教会が建ったでしょ? 土地の豊かさは精霊のおかげだから、感謝を伝えるだけでも領が豊かになるはずだよ。うちの領も精霊教会だしね。あと農業師は豊穣神様のご加護や祝福が貰えることが多いみたいだから豊穣神様にもお祈りするといいと思う」

 うちのラント、豊穣神様の愛し子だから相当規格外っぽいしね!!

「はい! うちの家族も熱心に祈ってます! 僕もいっぱい祈りますね!」


「うん。よろしくね。あ、あとちょっと早いけれど、ケンダルに誕生日プレゼントがあるんだ」

 俺は、ケンダルに渡そうと思っていた誕生日プレゼントを、鞄から取り出したようにインベントリから取り出し、ケンダルに渡す。

「え、誕生日プレゼント……ありがとうございます! 開けていいですか?」

 ケンダルは渡されたリボンをあしらった箱のリボンを解いて開ける。

「ガラスペン!」

 ケンダルが箱から取り出すと、光を受けてきらきらと輝いた。

「これ、ヴァンデラー先生の持っているペンに似てる……」

 めちゃめちゃ嬉しそうな顔をしたので、俺はぐっと拳を握った。

「ほんとだ」

 マルコムも横でそれを見ていた。

「マルコムにも誕生日に贈るね」

「あ、ありがとうございます! え、でも、いいのですか?」

 目が、お高いんですよね、と不安に揺れていた。

「前、僕の誕生日を祝ってもらったし、お返しだよ」

「……ありがとうございます」

「まだ、贈ってないけど……そうだ、マルコムはどんなのがいいの? 色とか」

 マルコムの好みって知らないんだよね。一応髪の色と思っていたけれど。

「火属性に憧れがあるので、赤か……弓と相性がいいのは風属性なので、ルーン先輩の持っているペンにも少し憧れてしまいます」

 そうか、この世界でも風属性は緑の色のイメージなんだ。

 そういえば風の上級精霊のアイレは緑色の髪だったな。


「わかった! そっちのイメージで作ってみるね」

「……作る……?」

 マルコムは首を傾げた。

「ガラスペンはルヴェールの独占産業で、作ったのはルオだ。ルオはほいほいと人にあげるからなあ。俺のガラスペンはルオの作ったガラスペン二本目だ」

 師匠のは精魂込めて作ったよ!

「わ、私のは一年待ちでした」

 ルーンが言う。そこは献上が絡んでいたからなあ。

 あの時に二人は俺がルーンにガラスペンを贈ったのは知ったけれど、そういえば製作者とは言わなかった気がする。二人以外みんな知ってたものね。

 ケンダルがガラスペンをじっと見ている。

「師匠が持っているのに似てるのがいいかと思ったんだけど……」

 好み聞けばよかったかな?

「はい! すごく嬉しいです!」

 ケンダルが涙ぐんで、俺に言った。

「よかった。ペン先が欠けたら直すから、言ってね」

「はい!」

 ケンダルが頷く。

「じゃあ、俺たちからは紙とインクだな!」

 タビーが言う。

「そうですね! 私の時もみんなからいただいたし」

 ルーンがすかさずにこにこして言った。

「もちろん私も贈らせてもらっていいかな?」

 アリファーンも続く。

「みんなの誕生日にはここで、お菓子を振舞おう。とりあえず、今日もだな」

 師匠が笑って言ってルーンの時と同じようにお菓子を出してくれた。

 師匠の屋敷の料理長謹製だ。

 とっても美味しかった。


 その後、ケンダルにはみんなから紙とインクが贈られた。


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