第289話 最終学年
「ルオ、だいぶ身長が伸びたんじゃないのか?」
そんなことを言うタビーも、十センチは伸びた感じがする。俺も伸びたから目線はあんまり変わらないけど。
「タビーもだよ! その代わり成長痛が酷くて……」
そう言いながら俺は膝あたりを擦る。
「あーわかるわ。俺も夜苦しんでるからな」
タビーもなのか!
急に伸びると、みんなそうなっちゃうのかな。
「家族はすぐ直るって言ってたけどなあ」
苦笑しながらタビーは鼻の頭を掻く。
「僕、もう一月以上痛いんだけど……」
はあ、とため息を吐く。
(主、ほんとに大変)
(ラヴァ、ありがとう)
ラヴァの慰めに頭を撫でた。
「とにかく最終学年だな。研究室の論文もあるし」
「そうだね。取れる単位は最速でとらないとね」
「そうだなあ」
タビーの眉間に皺が寄った。
「タビー、勉強できるのにどうして勉強苦手なんだろう」
俺は首を傾げた。
「やればやるけど、できるだけ避けたいものってあるだろう? ルオだってダンスと乗馬は嫌がるじゃないか」
「も、もう単位は取れたからいいんだよ。あとは三年次に必須の講義の単位のみだから!」
「まあ、俺もそうなんだけどさ」
「僕、上級学院に行くかも。タビーは?」
「行きたいんだけどなあ。騎士か、文官系か、悩んでいるんだ」
「魔法学院は?」
「魔法学院は土属性だと不利じゃないか?」
「そんなことないよ。極めればどの属性だって凄いんだから」
「うーん、ルオが行くとしたら魔法学院か」
「そうだね」
師匠が賢者だし、師匠が卒業したのって魔法学院だったって聞いてるからね。
そんなことを話してたら担当講師がやってきた。
今年もモレー先生だった。
「今年は卒院に向けて卒院に必要な単位の修得と卒院論文を手掛けることになる。卒論のテーマを来週末までに私に提出するように」
テーマかあ。もう決まってるからそれを書いて出せばいいんだよね。
今日は連絡事項を聞いて終わりだ。
「研究室行こうぜ」
タビーが鞄を持って立ち上がりながら言う。
「うん」
俺も鞄を持って立ち上がると研究室のある棟を目指す。
「休みはゆっくりできたのか?」
「ちょっと忙しかった。師匠と一緒にあっちこち飛び回った」
「あーお疲れさん」
「課題が一番大変だったけど」
「同意するわ」
「だよねー」
そんなことを話しながら研究室の扉の前に着いた。
ノックをして扉を開ける。
「ルオ、タビー久しぶりだね」
「ルオ、タビー! 元気そうですね」
(久しぶりやな)
アリファーンとルーン、そしてチーが出迎えてくれた。
アリファーンとルーンはいつものテーブルに座っていて、チーは相変わらずアリファーンの肩に止まっていた。
「ルオ、タビーだいぶ身長が伸びたんじゃないのか?」
そういうアリファーンも、大人びた顔つきになっている。
「アリファーン、ルーン立って! そして横一列!」
「え、あ?」
ルーンが落ち着かなく視線を俺とアリファーンに向ける。
「ルオ、第二王子殿下に言うセリフじゃないんだけど」
タビーが苦笑しながらも、アリファーンの横に立つ。
「お友達だからいいんだよね? アリフ」
アリファーンの横にルーンが立ち、その横に俺。
「あ」
まずアリファーンが気付いた。
「あ?」
タビーも気づく。
「うん?」
そしてルーンが気付いた。
「わ、私だけ変わりませんね」
がくりと肩を落とした。
ルーンはエルフだから、成長速度が違うので、仕方ないと思う。
「きっと将来はレカルみたいにかっこよくなると思うよ」
俺はちょっと毒を吐く青年のエルフを思い浮かべた。
「お前らなんで、横一列に並んでいるんだ」
「師匠、朝ぶりです! 背比べ?」
部屋に入ってきた師匠に挨拶をする。
「ヴァンデラー先生、お久しぶりです。ルオの言う通りですね」
アリファーンが頷いて挨拶をする。
「ヴァンデラー先生、お、お久しぶりです」
「ヴァンデラー先生、お久しぶりです。そうです。ルオがどうしても比べたいって」
タビーが俺が言い出したのをばらした。
「まあ、そういう年頃だから仕方ないのかもしれんが、幼児とやっていることは同じだぞ?」
師匠が呆れた顔で言った。
まあ、そうだよね! 大きくなるの気にするの5~7歳の頃だものね!
「せっかく伸びたからつい」
「わかったわかった。さあ、みんな座れ。来てないのはケンダルとマルコムか?」
そう師匠が言うと扉が開く音がして二人が飛び込んできた。
「遅れました!」
「すみません!」
ケンダルとマルコムは息を乱して入ってきた。
「二人とも、別に遅れてないから大丈夫だ。座って待っていろ」
そう言って奥の部屋に引っ込んだ師匠。
しばらくすると、紅茶のいい香りが漂ってきた。
師匠ってマメだよなあ。
俺、紅茶を上手く淹れられるようになるのかな?
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