第276話 ルヴェールに帰れる!
「お腹空いた」
グーとなるお腹を押さえて俺はベッドに倒れ込んだ。
(お腹空いた?)
ツンツンと俺の頭をラヴァが突く。
そのタイミングでコンコンとノックの音がした。
慌ててベッドから降りて扉を開ける。
「ルヴェール先輩」
「ケンダル」
「夕食はどうするか聞きに来たんですけど、食堂か、部屋か……」
夕食の言葉が俺の空腹にヒットした。
「夕食!! 師匠が手が離せないから、こっちの部屋に運んでもらっていい? でケンダルは僕に何か聞きたいこととか? どうぞ、はいって」
普通、夕食のお伺いとかは使用人がするものね。
ケンダルを部屋に招き入れて、椅子を勧める。この部屋にはテーブルセットがあって、二脚の椅子と小さめのテーブルが置いてあった。
「え、あ……失礼します」
ケンダルは遠慮がちに中に入った。
「あの、ありがとうございます!」
ケンダルは頭を下げた。
「ダンジョンのこととか、いろいろ、多分、ルヴェール先輩は僕にしてくれて……」
「いやいや。ケンダルが頑張ったからでしょう。ダンジョンは巻き込まれただけだし」
「でも、それでもありがとうございます」
「師匠の甥のことだからね。手伝うに決まってるよ」
「それはあんまり実感がないんですが……」
そう言えば甥と知った後も距離感があまり変わらない二人だ。
師匠は時たまむずむずしてるのわかるけど、自分からは言わないんだよな。
「ほら、呪いの件があったし、師匠は照れ屋さんだから、なかなか甥っ子と戯れるとか出来なかったんじゃない? もう懸念事項もなさそうだし。おじちゃんって呼んであげると喜ぶかも」
「おじちゃんとは呼べないですよ。せ、せいぜい、叔父上、とか」
あ、ケンダルの口元がむずむずしている。
「師匠と会ったら、確認して言っていいか訊いてみたら? それなら呼べるでしょう?」
「は、はい!」
嬉しそうにするケンダルは、本当に師匠を慕ってるんだなって思った。
ケンダルが出ていってからしばらくして夕食が届けられた。
さすが伯爵家、美味しかった。
野菜はどうやら不作の関係でないのか、出されなかったけれど、ジャガイモのポタージュは優しい味で美味しかった。
これ、もしかしたら、ルヴェールのジャガイモかな? 支援物資はルヴェールからって言っていたから。
食事が終わった頃、師匠が転移して帰ってきた。
「とりあえず、ルヴェールに行って、食糧を譲ってもらってきた」
「え、ずるい、師匠! 僕も帰りたい……」
「そうだな。転移していったり来たりするとしても、ルヴェールからでいいだろう。明日、ルヴェールに帰ろう」
良かった! 帰れる!
「食事、こっちに運んでもらったんだ。少し冷めちゃったけど」
「ああ、食べる」
師匠は、食事が終わった時に、少ししんみりした顔になった。
「懐かしい味だ」
ぽつりと言って、使用人を呼んで下げてもらうと、メインデルトに話があると伝言していた。
暫くして呼びに来た使用人について、師匠は出ていった。
俺は寝る支度をしてベッドに潜り込んだ。
(寝るの?)
「うん。もう僕にすることないしね」
師匠が師匠のお母さんに会うのに立ち会わなくたっていいしね。
先にルヴェールに帰してもらおうかな。
翌朝、朝食の席で師匠に「俺は照れ屋さんではない」と言われて、思わずケンダルを見たら、苦笑していた。メインデルトや、初顔合わせのケンダルの兄たちは生温かい目で見ていた。
俺に文句を言っている師匠の頬がほんのり赤くて、ちょっと口元が緩んでるのは、見なかったことにした。
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