第277話 帰ってきた!
師匠は俺の寝ている間に部屋に戻ってきたらしい。
朝食は食堂で食べて欲しいというので食堂へ案内してもらったら勢ぞろいしていた。
メインデルトと綺麗な奥様、ケンダルの兄二人とケンダル。
そして師匠。
ケンダルは、俺と話したことを師匠に話したらしい。
朝食は新鮮な野菜と加工した肉、ジャガイモのポタージュにパンだった。
師匠が持ってきた食糧かな。
ケンダルの兄たちが、尊敬の目で師匠を見ていて、師匠も照れているのがわかる。
ああ、よかったな。
本当によかった。
家族水入らずの場面で、俺がいていいのかちょっと悩むけれど。
和やかに食事を終えた後、師匠はいよいよお母さんに会うらしい。
ルヴェールに先に送ってもらえるといいのにと思っていたけど、それはないみたいだ。
なぜか俺も連れて行かれて、師匠のお母さんの部屋に向かう。
ノックすると、どうぞ、という声が聞こえて、使用人が扉を開けてくれる。
師匠に続いて部屋に入ると、ベッドで半身を起こしたショールを肩にかけた老婦人と、同じくらいの老婦人で、侍女のお仕着せを着た人が隣に立っていた。
「母様? アンナ?」
「久しぶりね。コラン。会えて嬉しいわ」
「坊ちゃま、お久しぶりでございます」
アンナと呼ばれた侍女は軽く頭を下げた。
師匠が近づいて、お母さんの手を握る。
「無事で、よかった」
「私は、一命をとりとめたけれど、起き上がれなかったのよ。背中のどこかが傷ついてしまったのに、そのまま回復したから。コランのくれたポーションで、だいぶ良くなったわ。さすが私の自慢の息子の作ったポーションね」
「母様……」
「ただ、寝てばかりいたから、歩くのは難しいわ。なので来てもらったの」
「ポーションなんかいくらでも作る。歩けるようにする」
「まあ。ありがとう。コランは優しくていい男に育ったわね。コラン、その後ろにいる男の子は誰かしら?」
「ああ、俺の弟子なんだ。フルオライト・ルヴェール」
「初めまして。師匠にはお世話になってます。フルオライト・ルヴェールです。師匠にはルオって呼ばれてます」
「コランダムの母、ベリル・メリーディエースよ。これからもコランダムをよろしくね」
「はい」
それからしばらく話をしてお暇した。
思ったより元気そうでよかった。前を歩く師匠の肩が震えていて、しばらく後ろでゆっくり歩こうかなって思う。
師匠は客間でいったん落ち着いてからルヴェールに帰るって言った。
そろそろ家族に会いたい。
(ルヴェール帰る?)
「うん。帰るよ!」
頷くとノックがあった。
「俺だ。開けてくれ」
「はい!」
扉を開けると師匠だった。
「ルヴェールに戻ろう。一応、挨拶してからな」
「もちろん!」
このまま部屋から転移したら、大騒ぎだものね。急に客人が消えた! とか。
師匠と二人、メインデルトやケンダルたちに挨拶をして、屋敷を出た。
人のいない木立の中に隠れて転移した。
目を開けると懐かしい空気。目の前に見えるのは俺の農場。
リンゴの木やオリーブ、ブドウの木、コーンにコメ。トマトに、枝豆。
「帰ってきた!」
(帰ってきた!)
俺とラヴァは両手(足?)を突き上げた。
「ああ」
笑いながら頷く師匠。
(ふふ、リンゴの木を見てくるわ!)
カルヴァはリンゴの木へ文字通り飛んでいった。
農場の中を通っていくとラントがいた。
「ラント、ただいま」
「ルオ様、ヴァンデラー卿、お帰りになったんですね」
(愛し子だ!)
アースとラントの足元にわらわらといる土の精霊。農場越しに見える霊峰。
ルヴェールだ。
走って屋敷に向かう。扉の前で、イオが素振りをしている。傍にウォルト。
「イオ! ウォルト! ただいま!」
やっと帰ってきた!
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