第275話 魔法が使えた
理不尽だなと思いつつ、ケンダルに交代。
「詠唱は……」
ケンダルが戸惑った顔で言う。
「え、ファイアでいいよね。師匠」
「まあ、それでもいけるな」
師匠が頷くとケンダルが戸惑った目で見た。
「魔法はイメージなんだ。ルオの魔法を見ただろう? あれをイメージしてファイアと唱えろ」
師匠が言い切る。それを聞いてますます戸惑った顔になったケンダルが、メインデルトを見るが、メインデルトは頷いた。
表情がなにかを決意した顔になる。
「ファ、ファイア!」
右手を前に突き出して唱えると、ぽっと火の玉が掌の先の空間に生まれ、ぽしゅっと飛んでいく。
的に着弾してシュッと消えた。
「で、できた!! 魔法使えた! 父様!」
メインデルトに抱き着いたケンダルを見て、周りの騎士や師匠と俺はうんうんと頷いていた。
「よかったな。ケンダル」
メインデルトはケンダルの頭を撫でる。
撫で方が師匠に似てる。
もしかしたら、師匠もメインデルトにあんな風に撫でられてたのかな?
だからよく、師匠は俺の頭を撫でるのかもしれないな。
「よかった」
ほうっと息を吐きながら、ケンダルたちを見つめる師匠の目は少し潤んでいた。
(よかった)
ラヴァが俺の頭の上に上って念話を伝えてくる。
(そうだね。よかった)
暫く感動のシーンを眺めてから、応接室に戻った。
「母様が会いたがっているんだが」
メインデルトが切り出した。
「別宅から、こっちの本宅へ戻ってきている」
「母様が……」
「もしよければ明日にでも、会ってくれないだろうか」
「もちろん、会えるならいつでも」
師匠が頷くと、メインデルトはほっとした顔をした。
「母様には言っておく。まだ、足腰が弱いから部屋で会ってほしい」
「わかった。明日は何時ごろに来ればいい?」
「泊まっていけばいいだろう? お前の部屋は今はケンダルの部屋になっているが、客間はあるんだ」
「あー、いや。わかった」
「なんだ? おかしな奴だな」
「ルオも一緒にいいか?」
「もちろんだ」
メインデルトは家令に部屋を用意するように指示をし、紅茶を勧めた。
俺と師匠は紅茶を飲んだ。
「頼みがあるんだ」
カップを手に持ちながら、師匠が切り出す。
「頼み?」
「精霊教会を建てるのを許可してほしい」
「精霊教会?」
「光神教は浄化を投げ出したみたいだ」
「は? 寄付はしたぞ? 瘴気が出ているというから、浄化を頼んだんだが」
「逆に瘴気を増やすようなことになったみたいだ。少なくとも、俺が回った畑はみな瘴気が濃かった」
「瘴気が見えるのか?」
「濃くなったら誰でも見える」
「そう、か。とりあえず光神教の司祭に事情を聞くか」
「そうした方がいい。精霊教会は俺に伝手がある。ドワーフと知り合いなんだ」
「ルヴェールにも精霊教会があるけど、師匠の紹介だよ」
俺も付け足す。
「ルヴェールは精霊教会のおかげで、人口も増えた」
「どういうことだ?」
「祝福の儀は本人にしか見せないからだよ。連れ去りがなくなっただけで子供の数は減らない。少なくとも、聖属性の子供を危険にさらすことは無くなる」
メインデルトが考えに沈む。
「わかった。とにかく領都の教会に事情を聞こう」
「よろしく頼む」
それからいろいろ話して、客間の用意ができたからと、部屋に案内された。
「一旦、俺だけ戻る。色々支度しないといけないし、ルヴェールにも事情を手紙で送る。そんなにはかからないが何か聞かれたら誤魔化しておいてくれ」
「はい。行ってらっしゃい」
(師匠、戻る?)
(お屋敷に帰ったんだよ)
(そっか~!)
部屋のベッドに飛び乗り、ぐるぐる走り回るラヴァは、めちゃくちゃ可愛かった。
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