第274話 訓練場
「お帰り。コランの研究室にいるとか、聞いたが……なんだか、妙な雰囲気だな」
メインデルトが師匠とケンダルの顔を交互に見る。
「もう、魔法は使えるぞ。ケンダル」
師匠がはっきりと言った。
「ほ、ほんとです、か?」
「ああ。魔法神がそう言っていただろう?」
「はい……はい!」
ケンダルの目から涙が零れ落ちる。
「魔法が、使える?」
メインデルトの眉が顰められた。
「ケンダルは魔法職をもらっていたのに、生活魔法しか使えなくて……魔法神?」
メインデルトが首を傾げている。師匠、話してないんだなあ。
「せっかくだ。魔法を使ってみるか? ケンダル」
「は、はい!」
そして全員で、騎士の魔法訓練場に移動した。
「大分、騎士も入れ替わっていて、団長くらいかな。コランが訓練を受けていた頃にいた騎士は」
「そうか……そういえば母様は元気なのか」
「ああ。この間ピートが持ってきたポーションがよく効いて……」
はっとした顔をしたメインデルトは師匠を見た。
「正直、母様を発見した時は長くないかと思ったが、王都から仕入れたポーションで持ち直して、小康状態を保っていたんだ……もしかして、作ったのはコランか?」
「ポーションは錬金術師や薬師なら必ず作る基本のアイテムだ。出来上がって納めた後、どこに買われたかはわからない。個人的な依頼がなければ」
「そうか。そうだよな。あのポーションは上級に近いポーションだったように思う。だが、安かったんだ」
「……そうなのか? 師匠が総ギルド長の頃は全体的に安すぎた値段設定だったからな。今は高いだろう?」
「……お前がぼったくりの賢者と言われるのはそういうことか?」
「効果の高いポーションを作るには素材の値段も高いんだよ。それを師匠は……まあ、それで助かった命もあるなら、善行かもしれないが、俺は組織の経営も考えないといけないからな。ギルドに所属する錬金術師から搾取はできないよ」
「そこは領地経営にも言えるな。農民から税を取ると、非情な領主と言われるが領主にも国に納める税金があって、安すぎる税は街道の保守も滞る。今回の不作にはうちの財政官が悲鳴を上げたよ」
「不作に関しては打つ手はある」
師匠は言い切った。
そこで、結界が張られている的が立っている広場に来た。
ルヴェールの鍛錬場はもっと何もない感じだけど。ここが師匠が小さい頃剣術とかしてたところか。
小さい頃の師匠ってどんな感じかなあ。可愛い感じ?
「ルオ、なににやにやしてるんだ。見本で魔法を撃ってもらうぞ」
「はい」
メインデルトが騎士たちに話をしている。その内の一人が師匠に向かって歩いてきた。
「コランダム様! お久しぶりです。ご立派になられて。ご活躍のお噂は聞いております」
「久しぶりだな。俺が知っているのはまだ若かった頃だが……団長になったんだな。噂は忘れてくれ。魔法をケンダルが撃つから結界の外にいてくれ」
「ケンダル様が。わかりました。結界の外に出てなるべく距離を取れ」
団長が騎士たち(魔法師も含む)に訓練場から出るように言う。
入れ替わりに俺たちが中に入った。
「まずは初級から。ケンダルは火属性だったな?」
問われてケンダルは頷いた。俺たちは的の前に立つ。
「ルオ、抑えめにファイアを撃て。くれぐれも、抑えめにな」
「はい! ファイア!」
いいとこを見せようと思ってつい力が入ってしまった。
バスケットボールくらいの火球が的に勢いよく飛んでいってドオン! と音を立てて着弾。的は焦げ落ちた。
「ル~オ~」
師匠が怒りの目で見た。
「修理代はルオが出すこと」
「ええええ!??」
他の人たちがぽかんとした顔で見ていた。
ケンダルもだ。
「ルヴェール先輩、風属性と時空間属性と土属性じゃなかったんですか?」
そうだった。学院ではそれで通してた。
「属性はないけど、従魔が火属性だから勢いが出るんだ。ね? ラヴァ」
ラヴァがしたり顔で頷いた。そして、口を開けて炎を吐いた。
ゴオオオオっと火炎放射器のように勢いがあるブレスはもう一つ的を消し炭にした。
師匠が手で目を覆った。
ふんすっと鼻息荒くドヤ顔をしたラヴァの頭を撫でるしか、俺に選択肢はなかった。
「あれも追加だ」
「はい」
次の投稿は明日になります。
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