第273話 メインデルト・メリーディエース
「こちらでお待ちください」
使用人に案内され、応接室のソファーで待つ。
師匠の隣に座ったけれど、師匠が緊張してるのがわかった。
暫くすると、ノックの音がして、扉が開いた。
「コラン!」
ダークブロンドに緑の目の師匠より年かさの男性が中へ入ってきた。やや長い前髪を後ろに撫でつけ、襟足くらいの髪だ。騎士に多い髪型だ。師匠より少し高いのだろうか。
どことなく師匠に似ている気がする。ペーテルと足して割ったら師匠になる感じというか。
「デル……兄様……」
師匠が思わずといった感じで立ち上がる。
「すまなかった! 私は……誤解していた。母様から、聞いたんだ……お前のせいではなかったことを……」
がくりと膝を着いた彼はそのまま頭を下げる。
「私は、馬鹿だ。父の言うことを信じて……父は、母以外に興味はない人だったのに……」
「デル兄様、立って。立って欲しい」
師匠が彼の側に行って肩に手を置く。
「許してくれとは言わない。むしろ憎んでいるはずだ。この家から追い出すなんて」
「それは、まあ、いいんだ。俺は、むしろ自由に生きられた。金くらいかな。不自由したのは」
「コラン……」
「今はマジックバッグ一つ作って売ればがっぽがっぽだ。なにも、俺は失っていないよ。許すも許さないもない。仲直りしてくれるよな? デル兄様」
「いいのか? 母を救ってくれたのに、私は……」
「仲直りに来たんだ。復縁を望んでるんだ。俺は」
「コラン、本当に?」
「どちらかというと、迷惑をかけてるのは俺だ」
師匠は、彼の手を取り、立ち上がらせて、ソファーに座らせた。
「いや、なにも、迷惑など……? 私が愚痴を言ったりはしてたと思うが?」
首を傾げた彼は疑問符を浮かべた顔をした。
「待って! とりあえず、僕の紹介をして!」
二人ははっとして俺の顔を見た。
わかるけど、紹介してね!
「こほん。あー、彼は俺の弟子、フルオライト・ルヴェールだ。ルオ、こちらは俺の上の兄、メインデルト・メリーディエース伯爵だ」
「初めまして。師匠の弟子で、フルオライト・ルヴェールです。ルヴェール子爵の嫡男です」
「初めまして。コランダムの兄、今はこのメリーディエース伯爵領の領主をしているメインデルト・メリーディエースだ」
視線を泳がせながら、メインデルトは自己紹介をした。
「貴族学院ではケンダルと一緒に合同演習をしました」
「ケンダルと……」
「ルオはケンダルの一つ上だ。彼は今、俺の研究室の研究生になっている」
「そう言えば、ケンダルの手紙に、コランの名前があったが」
「今、貴族学院で中級魔法の講義を受け持っている」
「……そうなのか。貴族学院で講師か。凄いな」
和やかに話す師匠とメインデルト。絶縁までしてたなんて、見えない。
(これで仲直りなの?)
(仲直り?)
カルヴァとラヴァが首を傾げる。
(呪い解けたのかな?)
念話で二人に話す。いきなり話し出したら、メインデルトに可笑しな子って思われるからね。
そこにノックがされ、ここへ来る時に案内してくれた人が顔を出した。
「ケンダル様が到着なさいました」
「そうか……」
メインデルトが師匠の顔を見る。
「ここへ通してほしい」
師匠がメインデルトに願う。
「いいのか?」
「ああ」
暫くするとノックが響いた。
「父様、ケンダルです。お呼びでしょうか?」
「ああ、入りなさい」
「失礼しま……す?」
扉を開けて俺たちを見たケンダルが固まった。
『愛し子、呪いは解かれた』
魔法神の声が響き渡った。
「今の声は?」
ケンダルが天井を見た。
「声?」
首を傾げるメインデルトには聞こえなかったのかな。
俺には聞こえた。
(よかった、ケンダル)
ラヴァがケンダルの肩に飛び乗った。
「ラ、ラヴァ?」
驚いた顔のまま、ケンダルは中に入って扉を閉めた。
師匠が長く息を吐く。両手を組んでその手に額をつけた。
「よかった……」
師匠が小さく呟いた。
本当に、よかった。
(主、よかったわね)
カルヴァが師匠の頭をポンポンと撫でていた。
次の投稿は明日になります。
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