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第269話 精霊さんの好感度

 入ると入口付近は洞窟型だった。

 薄暗い中を歩いていくと明るい光が目に入ってくる。洞窟の出口に来た。

「これは……」

「え、森?」

 明るい空と、見渡す限りの森。

 生き物の鳴き声も聞こえる。

「自然環境型のダンジョンか。珍しいな。階層を降りるたびに環境が変わるタイプだ」

「道があるわけじゃないから、下の階層に行くの、難しいかも」

 茂みの中から顔を出した魔物はスライム。

「あ、スライム」

 つい、剣で倒してしまった。

『おめでとうございます! このダンジョン、初討伐者です。初討伐のボーナスプレゼ……』

 思い切り頭に響いた声は、ダンジョンマスターの声?

『え、愛し子じゃん! いーとーしーごーーーーー!』

 何かが猛スピードで向かってきた。

 そして顔に当たった。避けられなかった。でも痛くない。

『わーい、愛し子~!』

 顔にダンジョンの精霊が張り付いている。

(はーなーれーてー!!)

 ラヴァが威嚇してるよ。

 ダンジョンの精霊は俺の顔から離れた。息がやっと普通にできる。窒息するところだった。

 ダンジョンの精霊の顔はやっぱり影に隠れて見えない。目だけが光ってる。

 そしてマント。

 テルテル坊主のようなマントはダンジョンの精霊共通なの?


「ちょっと聞いていいか」

『あ、魔法神の愛し子。何かな?』

「初討伐者って聞いたんだが、冒険者は入ってこなかったのか?」

『村人っぽい人たちが入口付近をうろうろしていたけれど、中には入ってこなかったんだ。ここ、ほんとに最近できたから』

 ダンジョンの精霊は俺の顔の近くをぷかぷか浮いている。

『ここで話すのもなんだから、移動しよう』

 そして俺たちは転移した。


 ここのダンジョンマスターの部屋は四角い白い部屋だけど、所々に観葉植物のように植物が置いてある。でも、ダンジョンの精霊さんの側にある植物、マンドラゴラに似てるんだけど、大丈夫かな。

 俺と師匠はお茶のカップの置かれた丸テーブルの前に木の椅子に座っている。

『初討伐の人には宝箱をプレゼントなんだけれど、中身はどんなのがいいかな!? 鉱石? 魔石? アーティファクト? マジックバッグとか、要る?』

「え、スライム斃しただけだから、そんないいの貰っても……んー、鉱物かな?」

 ほんとにダンジョンの精霊の俺に対する好感度がバグってる気がする。

『じゃあ、ヒヒイロカネとミスリルとアダマンタイトの原石ね!』

「え、あ、ありがとう」

 豪華すぎる! しかもテーブルの上に山積みだよ。

 あ、師匠が頭を抱えている。師匠は落ち着くために紅茶を飲んだ。

「美味しい」

『その茶葉は植物系の魔物を倒すとたまに落ちるようにしたよ』

「討伐したい……」

『5階層より下のレアな植物だよ。足が速いから頑張ってね』

 というとダンジョンの精霊はちらりとマンドラゴラを見た。

 ……マンドラゴラを倒すんだね。ほんとに好感度高いなー。

 師匠が苦笑している。


「ところで、このダンジョンの周りは物凄く濃い瘴気が立ち込めていたんだが、心当たりはあるのか?」

『んー、瘴気が濃いからここができたんだけど、ほら、精霊界隈で絶賛嫌われている光神教の神官たちが浄化という瘴気撒いてたのは見たよ。ここ最近は見てないけど』

 光神教かー。

「わかった精霊教の教会を誘致するようにここの領主に進言する」

『いいことだよー。あの教会は僕たちに優しいからね』

「わかった。瘴気は浄化したが、いいのか」

『もちろんだよー。瘴気が濃いところってまた瘴気が発生するから。生き物がいると自然発生するからねー』

「魔物が多いからとかじゃないの?」

『人が多いところの方が多いかなー』

「そうか。ありがとう。またお邪魔するかもしれない。その内冒険者ギルドがやってくるから、よろしく頼む」

「うん。また来るね!」

『じゃあ、入口まで送るね!」

 そして俺たちはダンジョンの精霊に転移で入口に戻された。


「これは、毎回なのか……最近絡んでくるのに遠慮がない気がするな」

 師匠が遠い目をした。

 ダンジョン接待RTAとか。

「僕のせいだよね」

「好かれてるのはいい事じゃないか」

 師匠が頭をぐりぐりする。

「とりあえず一旦屋敷に戻る」

「はい」

 俺たちは馬を借りた厩舎に戻し、師匠の転移で王都の屋敷に戻った。

次の投稿は明日になります。


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