第266話 メリーディエース領
森を出ると街道が通っていた。広い街道で、どうやら王都へ続くようだった。
「こっちだ」
師匠が迷いなく歩きだして、道を進む。時折馬車がすれ違い、荷馬車もゆったり通りすぎる。冒険者のグループらしき人たちも歩いていた。
「結構人通りがある街道なんだね」
「ああ、この街道は辺境伯領に続く交易路だからな」
「へえ」
初めて見る景色についきょろきょろする。
「日差しが強いね」
「ああ。ルヴェールより南に位置してるからな」
しばらく歩くと町が見えてきた。
雰囲気や規模はこじんまりしていて村よりも大きく、領都規模の街よりは小さい感じだ。石壁に囲まれていて門には門番が入る旅人を検めていた。
町に入るともっと活気があると思っていたけれど、人々の顔は元気がない。
(精霊、少ない)
ラヴァが教えてくれる。
確かにきらきらした小さな精霊は少ないように思えた。
冒険者のギルドカードを出して、門を通り過ぎて町に入った。
「さて、馬を借りるか。こっちだ」
「あ、うん」
師匠を追うように歩くと馬の嘶きが聞こえた。厩舎があるのが見えると、その前に人がいた。
「すまない。馬を貸してほしい」
「いらっしゃい。何日くらいかな」
師匠が交渉していると、何となく馬と目が合った。
馬がじっと俺を見ている。
馬房の柵があるから、出てこれないだけで、出られたら寄ってきちゃう。囲まれた学院の時と一緒になるかもしれない。俺は厩舎に入ってはいけない。
見つめあっていると交渉が終わったのか、店の人が師匠を厩舎に案内する。
「どうした? 来ないのか」
「僕が入るときっと集まってきちゃうと思う」
「馬に好かれる奴か。わかった。待ってろ」
しばらく待っていると父の魔馬のブルーに近い体格のしっかりした馬を伴って戻ってきた。しっかりと鞍と鐙がついている。
「行くぞ。乗るのは町を出てからだ。ここからそう遠くないから馬で行けば半日で着く」
「わかった」
頷いたとたん、馬にベロっと顔を舐められた。
やっぱり。
その様子を見て店の人が俺に声をかけた。
「気難しいそいつが懐くとは。あんた、馬に好かれる体質なのかもなあ」
はい。好かれます。あと精霊にめっちゃ集られます。
町から外に出て、二人乗りをする。
「いくぞ。ちゃんと掴っていろ」
師匠が手綱を引き、足で合図をすると馬が走り出す。
街道の両脇に丘陵が緑のじゅうたんを見せるはずが、所々土がむき出しになっている。収穫したのだろうか。
「この先からブドウの木やオリーブの木が見えてくる」
師匠がそういったけれど、枯れたような木が立ち並んでいる様子は、確かにただ事じゃないと思われた。
その木の周りにうっすらと瘴気が見えた気がした。
時折り、馬を休憩させながら大体半日ほど走っていると、集落が見えた。
「あの村だ」
少し高い丘の上から見た柵もない集落。葡萄の木の間に家が点在していた。
師匠はじっと村を見つめた後、馬を促して村に向かった。
その中で比較的大きな家の前で止まって師匠が降りる。
「降りてそのまま待っていてくれ」
手綱を渡されて、その場で待った。
師匠はその家の玄関へと向かっていった。
次の投稿は明日になります。
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