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第264話 準備

評価、ブクマありがとうございます!

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 夏休暇まで一カ月を切った。

 師匠は執務室で眉間に皺を寄せている。俺は帰る日までの準備に忙しい。

 みんなにお土産買ったり、ガラスを作ったり、ガラスを作ったり、ガラス……だったらいいなって希望だった。

 魔法陣いっぱい描いたりランプ作ったりが多くて、純粋なガラス作品というのは作れていない。

 切子グラスも作りたいんだけどな。せっかく道具もそろってるのに上手く時間が作れない。

 やることが多いよ!


 ケンダルとマルコムには師匠が俺と一緒にケンダルの実家の方にお邪魔するとは言っていた。

「下の兄は今、別に家を構えていて男爵位を貰ってるそうだ。まずはそこを訪ねる。場所はメリーディエース領の王都側だ」

 師匠は地図を広げてトントンと指で叩く。

「転移で行くからケンダル達よりずっと早く着く」

 そう言うと師匠は俺をじっと見た。

「この際、転移魔法覚えてみるか?」

「はい?」

 いやいや、そんなちょっと散歩行くかみたいなトーンで言わないで!

 師匠以外には使えない魔法でしょう?


「属性も魔力も充分持っているんだからできるだろう」

「そういうもの?」

「魔法はイメージだからな」

 転移のイメージってどんなの? 前に師匠に転移してもらった時あっという間に景色が変わってたって思っただけだものな。

「全然わかってない顔だな」

「わからないから仕方ないと思う」

 そう言うと師匠はうぐぐと唸った。

「これもマジックバッグと同じ時空間属性だからな。空間を把握することが大事なんだ」

「空間を把握か」


 前世だと地図や車を運転する時とか言われるよな。混雑したところでもぶつからずに歩けるとか。

 俺は腕を組んでう〜んと唸り、師匠を見た。

「全然わかりません」

 師匠は手を額に当てて目を瞑って眉を寄せた。

「俺もすぐ使えたわけじゃない。ゆっくりやるか」

「お願いします」

 とりあえず空間把握から始めようということになった。


 それはそれとして、メインは師匠と家族の仲直り。

 そして呪いの解除だ。

(呪い子の呪い解ける?)

 ラヴァが顔を覗き込んで鼻先で俺の鼻先をツンと突く。

「どうかなあ。こればっかりは本人次第だからね」

(本人次第?)

「人の気持ちって本人にもわからない時ってあるんだよ」

(そうなの? 難しいね)

「そうだよ。難しいんだ」

 下手すると拗れるから、他人が口を出すとよくなかったりする。

 今回は師匠が甥のケンダルのために自分と向き合う気持ちになったようだから、そうじゃなかったら多分師匠は実家に行くことなんてなかったと思う。

 俺が一緒にいることで師匠の役に立つならついていくから。

(師匠と家族が仲直りできますように)

 それから毎晩祈りを捧げた。


 休みまでに師匠の実家に行く準備とかいろいろした。

 野営の道具とかあったけど、野営するんだろうか。


「じゃあ、ルオ、休み明けにな!」

 タビーが一番先に出ていく。

「ルオ、また」

『チチ!』

「またね、ルオ」

 アリファーンとルーンは連れ立って帰っていった。

 なんでも休みの間、ルーンは王城のアリファーンの客として招かれているそうなんだ。

 確実に取り込もうとしている気がする。 

「ケンダル、マルコム、またね」

「はい。ルヴェール先輩もお元気で!」

「はい、また」

 ケンダルたちは南から来ている他の学院生と馬車や護衛を融通しあって帰るとの話だ。すでに馬車の迎えが来ているので、このあとすぐに帰る予定だということだった。


 そして待っていた馬車に乗って屋敷に戻った。

 師匠は仕事をすませてから帰ってくるから多分夕方だ。

 しばらくガラスを弄ることが出来なくなるのでガラス管とか作っておこう。

 工房から戻ったらちょうど師匠が帰ってきたところだった。


「はー疲れた」

 最近師匠の目の下の隈が取れないな。

 ポーションとかで治らないんだろうか?

「お帰りなさい、師匠」

「ルオ、ただいま。明日、朝食すませたら出発だ」

「はい。師匠、今夜はちゃんと寝た方がいいよ? 目の下真っ黒でイケメンが台無し」

「イケメン?」

「容姿が抜群に良い男性のこと」

「はい?」

 師匠は自分の顔が美形の自覚はあるんだろうか?

 騒がれるから、とは言ってたけど、顔が良すぎるからとは言ってなかったよな。

「俺の顔はどうでもいい。そうだな。最近あまり眠れてなかったからな。ゆっくり……」

「カルヴァ、今夜は搾り取っちゃって」

(任せて!)

「おい、ルオ……」

(さすがの私も我慢ならないわ! 今日はちゃんと寝なさい!)

「……わかった。心配かけてすまない」

(私だけじゃないわ! 屋敷のみんなもよ。でもスピネルは同罪だから、謝らなくていいわ。大体彼のせいだし)

「いや、それは違うんだが」

 カルヴァと師匠の微笑ましい言い合いを横目に俺は夕食のために食堂に向かった。


 なんだかんだと師匠はちゃんと眠ったようだった。

次の投稿は明日になります。


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