第259話 これからのこと
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まずケンダルが床にへたり込んだ。床についている手が震えてる。
「ぼ、僕は何を見たのでしょうか……」
精霊王様と魔法神だね。
「ちょっと慣れたが、普通はないな。神に招かれるのは」
平静を装っている師匠だけど、ちょっと足が震えている。
(畏れ多いって顔を手で覆うところよ。主)
カルヴァが言うと師匠が片眉をあげた。
「畏れ多い!」
両手で顔を覆って叫んだ師匠に、ケンダルがびっくりしていた。
「え、それ、魔法神様に土下座された僕が言うセリフでは」
「確かに」
思わず頷いてしまった。
(とりあえず、ちゃんと座って話をしたらどう?)
カルヴァがそう言ったので俺と師匠は頷いた。
(王様、ちょっとしょんぼり)
ラヴァがそう言ってきた。
「なんで?」
(みんなに迷惑かけたから?)
「そうかなあ? 精霊王様は何も悪くないんだけど、むしろ迷惑かけてるような気がする」
「申し訳ない」
あ、師匠が土下座しちゃった。
師匠を宥めて場所を居間に移し、師匠が淹れた紅茶と料理長が焼いた焼き菓子を摘まみながら、話し合いをすることにした。
正直俺がいていいのかなとは思う。でも最初から巻き込まれてるし、師匠も俺がいて当然という感じなので、とりあえず付き合おうとは思っている。
しかし、お茶を飲んだきり、沈黙が続いているんだけれど、大丈夫?
距離感が掴めないとか、そんなのじゃないよね?
仕方ない。ここは俺が一肌脱ぐか。
「師匠、訊いてもいい?」
「なんだ?」
「師匠のご家族ってケンダルのお父さんだけなの?」
「いや、もう一人兄がいて、そっちには呪いをかけてないみたいだな。両親は亡くなっている」
「そうなんだ。その、もう一人のお兄さんはやっぱり絶縁してるってこと?」
「ああ。そうだな……」
「仲は悪かった、っていうことなの?」
「いや、子供の頃は仲は良かった。もう一人の兄とは家を出るまでそんなに悪くなかったが、父と俺は最悪に仲が拗れてな。貴族学院までは父は金を出したんだが、それ以降さっぱりで、いろいろあって、なら、縁を切るって感じになったんだ」
もしかして、これが守銭奴の原因?
「ケンダルのお父さんとの仲は……」
「ちょっと恨まれてるから……」
「デリケートな問題だから今は聞かないけど、解決しないとダメだからね? じゃあ、そのもう一人のお兄さんと連絡を取って間を取り持ってもらったらどうかな?」
「……そうか! そうだな」
師匠、なに、その全然思い浮かばなかったって顔!
そして俺はケンダルの方を見た。
あれ? ラヴァがケンダルの膝の上に。
「あの、ルヴェール先輩はこの子とお話ができるんですか?」
「え?」
「さっき、話しかけてたみたいだから気になって……」
顎の下を指で擽られて気持ちよさそうなラヴァに、じと目を送ってしまった。
俺は思わず、師匠を見た。
「従魔だからな」
師匠がそう説明した。
「そうか、テイマーは意思疎通ができるってホントだったんだ」
「そうだよ。ラヴァは従魔だから……」
なんとなく、ばれそうな気もするけれど、師匠が従魔のままで説明しないなら、いいか。
「では、とりあえず一通り説明と対策が終わったから、課題の方を片付けよう」
「ア、ハイ」
師匠の言葉に俺とケンダルは仲良く返事をした。
みっちり師匠に教えてもらい、ケンダルが帰る時間になった。
「次に会うのは学院か?」
師匠がケンダルに声をかける。
「はい、よろしくお願いします」
そう言うとケンダルは馬車に乗り込む。
「じゃあ、また研究室で」
俺は手を振った。
「はい、では」
ケンダルを乗せた馬車が走り出し、小さくなった。
雪がちらついてきて俺と師匠は屋敷に戻った。
それから俺は二冊の魔道具基礎編を読み終わり、冬休みも終わりに近づいていた。
師匠は手紙と書類で埋もれ、目の下に隈を作っていた。
(主、ガラスは?)
「そうだ! ガラスだ!」
魔道具とポーションに時間を取られすぎていた!
「待て待て、ガラスを作るなら、これを使え」
師匠がなにかの器具を差し出してきた。
「ランプの土台だ。シェードを作るならこれを参考にしろ。あとで魔道具を作る時、サイズとか、必要になるだろう?」
「師匠、ありがとう!」
それから学院が始まるまで、ガラス三昧ができた。
もちろん、基礎編は全部読破したよ。
次の投稿は明日になります。
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