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第258話 根暗なおじさん

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「ちょっと根暗なおじさんの声がここへ来いって言ってました」

「根暗なおじさん?」

 師匠がぽかんとした顔をした。

「僕も、ちょっと自分でおかしなことを言ってるとは思うんですが」

(僕じゃないよ?)

 ラヴァはもっと可愛い声だよね。ケンダルの肩から俺の肩へ移動してきた。

『私は言ってないよ?』

 精霊王様の声はさわやかなイケメンボイスだ。

『わ、我だ』

 魔法神! 根暗なおじさんと言われてちょっとショックを受けたのだろうか。声に元気がない。

「魔法神……」

 俺が呟くと師匠が目を手で覆った。

「確かに根暗なおじさん……」

 師匠も、呟いた。

『……ッ』

 魔法神が息を詰めたのが気配でわかった。きっとガーンという字を背負っているはず。

「魔法神?」

 ケンダルが首を傾げた。

「ああ、魔法神様は俺に加護をくれた存在だ」

 師匠が頷く。

 ケンダルが二度目の気絶をした。

『これが普通の子供の反応なんだね』

 精霊王様が感心したように言った。

 ちょっとみんな介抱して!


 ケンダルはすぐ目を覚ました。

 礼拝室にも椅子はあるのでそこに寝かせた。

「あ……すみません。何度も」

「いや、普通神の声を聞いたとか驚くだろうしな。ほんとにな。俺も気絶したい」

 師匠、心の声が漏れてる! 俺だって、神様に会ったら驚いたよ!

 まあ、気絶はしないかも。

「ヴァンデラー先生も声を?」

「あ、ああ。そうだ。その魔法神様の件で言わないといけないんだが……」

 師匠が汗をだらだら流している。

『その、我が呪いをかけたのだ。愛し子の血筋に』

 魔法神の声だ。

「え?」

 ケンダルが呪いと聞いて青ざめる。

『そこは、ちゃんと目を見ていった方がいい』

 精霊王様の声が響く。礼拝室だったところが、神域になる。精霊王様が招いてくれたようだ。


 広がる花畑。感じる神気。精霊王様と、正座した魔法神。

 そして魔法神がケンダルの前で土下座する。

『我がそなたの父とそなたら子供に魔法を使えない呪いをかけた。この呪いは愛し子と仲直りをすることでしか解けない』

「愛し子?」

「俺だ。魔法神様の愛し子らしい」

 様はつけなくていいのでは。俺の中では魔法神の株はストップ安だ。

「ちょっと昔、家族と揉めてな。色々あって、メリーディエース伯爵家から除籍をしたんだが、それを魔法神様が見咎めて、兄に神罰を落とした……で、合ってますか? 魔法神様」

『う、うむ』

「神罰……」

 ますますケンダルの顔色が悪くなる。

「その神罰は魔法が使えなくなる、というものだ。生活魔法は範囲ではないから使えるが」

「魔法が使えないのが神罰?」

「そうだ」

「僕が欠陥魔法師だからじゃなく?」

『お主はなかなか優秀な魔法師となれる素質がある。その……我の神罰がなければ、だが』

「そっか……」

 ケンダルは泣き笑いのような顔をしていた。

「父とヴァンデラー先生が仲直りをするとこの神罰が消えるということ?」

『うむ』

「きっと仲直りするから、待っていてくれ」

「はい、ヴァンデラー先生」

「そこはコランダム叔父さんとかでは」

 俺はつい突っ込んでしまった。

「叔父さん……お兄さんでは……」

 師匠が苦虫を噛み潰したような顔をした。

「無理あると思う」

 師匠が膝から崩れ落ちた。


『それから……不作は我ではない』

 魔法神がきっぱりと言い切った。

『不作はまた原因が別のようだよ』

 精霊がいないとか、そういうことなのかな?

「とりあえず仲直りだけど、ケンダルのお父さんは領地にいるの?」

 俺はケンダルに訊いた。

 手紙という手もあるけれど、ずっと絶縁状態なら直接会って話す方がいいと思う。

「はい。滅多に王都には出ません。行くとしたらフルーヴ辺境伯領くらいです」

「仲直りするためにはメリーディエース伯爵家まで行かないとダメってことだね」

 俺が言うと師匠が立ち直って起き上がった。

「……夏までに何とか会えるようにしたいが……」

 師匠が考え込んだ。

「夏は領地に帰るので、一緒に行きますか?」

 ケンダルは精霊王様と魔法神を視界に入れないように視線を背けていた。

「ああ。俺も手紙を書く。訊ねることは言わないといけないからな。拒否されるだろうが」

「わかりました」

『よかった。頑張りなさい』

 精霊王様の声で元の礼拝室に戻った。


次の投稿は明日になります。


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