第253話 比較実験とガラスペン
評価、ブクマありがとうございます!
ケンダルとマルコムが食い気味で契約して、作成したポーションを売ったお金で契約書代を払うことになった。
師匠が二人を連れてきたきっかけは、二人が師匠の担当する中級魔法の講義を受けることになったからだって。声をかけたのは多分、ケンダルが甥だからかなって思っているんだけどそこはどうなんだろう。
ケンダルの呪いを解くには仲直りが必要って言っていたけど、絶縁までした相手と仲直りって難しいよね。
「ルオ、そのガラスのポットというか、土瓶はどうしたんだ?」
「作ったんだ」
「なるほど」
タビーが唸ってから、師匠のところに行った。
そうなんだ。師匠がこのガラスの土瓶を使うんだって言ったから、今セットしてるんだけど。
これも、いろいろとメモとらないといけないんだよね。
比較実験開始。
そもそも、ポーション瓶に詰めてからが勝負なんだけど、全部最上級になったら、比較も何もないと思うんだけどな。
「よし」
ほぼ同時に出来て、ポーション瓶に詰めたら、従来の土瓶の品質は最上級。ガラスの方は最上級+。
んん???
この、+って初めて見るんだけど。
色は……青が濃い?
目視ではあんまりわからない差だな。そこも書いておこう。
「よし」
顔をあげたら、みんながじっと見ていた。
「え、なに?」
思わず驚いて仰け反ったら、師匠がメモを後ろから覗き込んでいた。
「やっぱり、ルオ以外にやってもらうのがいいかもしれない」
師匠はそう言うと俺からメモを取り上げて、みんなに説明を始めた。
(師匠、元気になった?)
(どうかなあ? 問題はまだ、解決してないみたいなんだけどね)
ガラスの錬金器具は師匠から頼まれて、代金と引き換えに納入してかなりの個数になった。
ルヴェールの俺の工房でも使いたいので、時間が出来たら、作っている。
そうだ。
そろそろ、ルーンの誕生日が近いからガラスペンを作らないと。
やっぱりユーグのイメージかな?
ルーンの髪も緑だし。
植物と風のイメージで行こう。
そして、やっと手が空き、工房で管ガラスを作る。
フューミングか、色ガラスで作るのか。
蛍光っぽい色味を出したい。やっぱりクリアガラスに色づけしていく感じがいいかもしれない。
軸は風の通り道をイメージした白い流線がクリアガラスの中に浮かぶようにして、その軸を透かし見た時にうっすらと緑色が光の加減で見えるように。
軸の持ち手部分には滑り止めの効果もあるように木の葉をイメージした彫刻のような模様を入れる。
先端はクリアガラスの中に木の葉を模した模様が浮かび上がるようにしたドロップ型にする。
若木のイメージで軸自体は細くしよう。
よし、デザインは決まった。
「ラヴァ、炎を頼むよ」
(任せて、主!)
ラヴァと一緒に一日かけて作ったルーンのガラスペン。
「できた!」
蝋燭ランプの灯りにきらきら光る美しいガラスペンができた。
徐冷庫に入れて、明日取りに来よう。
箱も用意しなきゃ。
「ラヴァ、ありがとう」
(どういたしまして)
その夜、ラヴァは遠慮なく魔力を吸い取った。
抜けていく魔力の感覚に、久しぶりだと思いながら、眠りに落ちた。
「ルーン! 誕生日おめでとう!」
研究室で、ルーンを見るなり突撃した。
「あ、ありがとうございます……」
ルーンが勢いに引いた。
「俺たちもあるんだよ。はい、誕生日おめでとう」
タビー、アリファーンもリボンのかかった包を持っていた。
一年組はまだ来ていなかった。
ルーンが一つ一つ包を開けた。
「ガラスペン……」
「みんなとお揃いだよ。これでみんなでガラスペンが使えるよ!」
「ありがとうございます。ほんとに嬉しい」
ルーンが涙目になった。
そしてタビーは紙、アリファーンはインクだった。
「ルオは絶対ガラスペンを贈るからな。紙がないと困るだろ」
「インクもないと困ると思ってね」
「みんなありがとう~」
とうとう泣き出したルーンは師匠が来るまで泣き止まず、泣いている最中来たケンダルとマルコムにいじめられたんですかと、誤解されていた。
「誕生日だったか。では俺からは紅茶と焼き菓子を振舞おう。学院には内緒だぞ」
さすがに師匠も、契約書を出すことはしなかった。
出されたお菓子は屋敷の料理長謹製のはちみつを使ったマドレーヌやクッキーだった。めちゃくちゃ美味しかった!
次の投稿は明日になります。
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