第250話 礼拝室(二)
評価、ブクマありがとうございます!
師匠が礼拝室に頻繁に通うようになったとカルヴァに訊いた。
こっそり見に行った時、師匠は魔法神の像を清めていて、そっと立ち位置を変えていた。
その後に神様の像が増えて、魔法神の像は四番目の位置に収まっていた。増えた神様の像を祀る際に祭司と師匠が相談した結果だった。
俺としては色々魔法神に対して思うことはあるけれど、師匠への愛が暴走した結果(大変迷惑だけど)で、これから魔法神が償うとか、師匠との関係性が改善されれば、口を出すことでもない。
あとはケンダルにかけられた呪いの解除をどうするか問題。
これも師匠の気持ちが第一で、俺がどうするのかと聞くわけにもいかない。
血がつながっている方が拗れる問題もあるしね。
とにかく、その問題は頭の片隅に置いて、研究室でのポーションの研究と学院の単位取得、時々ガラスで日々が過ぎる。
そんな中、座学の試験が近づいてくる。
「頼む! 今年も勉強会を開いてくれ!」
「でも、ギードはルヴェールにいるし、師匠は忙しいし。ちょっと聞いてみる」
タビーが両手を合わせて拝むように頭を下げた。タビーは成績悪くないはずなんだけれど、毎回座学の試験前に真っ青になるんだよね。
「座学の勉強?」
「試験対策ですか?」
アリファーンとルーンが首を傾げる。
「ほら、タビーは暗記系苦手だって言うから……」
「暗記系ならもう、繰り返し読んで覚えるしか……」
アリファーンがタビーを心配そうな目で見てから言う。
「そうなんだけど……」
タビーが肩を落とす。
「とりあえず聞いてみるから、ちゃんと勉強しておいてね」
俺がそう言うとタビーは「はい」と力なく頷いた。
「ああ、構わないぞ。明後日休みだろう」
「師匠は忙しいでしょ?」
「まあ、二時間くらいなら見るぞ、あとはスピネルに頼んでおく」
「師匠、ありがとう!!」
研究室に戻ってきた師匠に頼み込むとあっさり引き受けてくれた。
「ヴァンデラー先生、ありがとうございます」
「私の研究生だしな。成績は悪いより良い方がいい」
「ありがとうございます!」
「馬車を迎えに行くように手配するからそれに乗ってくるといい」
そんな話をタビーと師匠がしていると、ルーンとアリファーンが物欲しげな目で見ていた。
「あれ? 二人の成績って上から数えて五位以内に入ってなかった?」
「ヴァンデラー先生の授業を受けたい!」
アリファーンとルーンが口を揃えて言った。
「ルーンはともかく、アリファーンはいろいろ難しいんじゃないか? 許しがあれば、構わないが……」
師匠が首を傾げて言った。
「絶対、許可を取ってきます!!!」
アリファーンの気迫に全員黙った。チーも絶句していた。
そして、定期試験前の休日、紋章は掲げてないけれど、手を出したらヤバい感じの馬車と、タビーとルーンを迎えに行った馬車が屋敷に入ってきた。
アリファーンのお忍びの馬車で、玄関に横づけするとさっとフードで顔を隠したアリファーンが降りてきて、中に入った。それを見届けると一緒に二人来ていた護衛の騎士さんは、使用人棟の一階に待機しに行った。馬車は帰る時間に迎えに来るとの話だった。
「いらっしゃい」
俺と師匠が迎えに出るとアリファーンが頭を下げた。
「ご招待ありがとうございます」
後ろに並んでいた使用人に衝撃が走った。王族の会釈はそりゃあ、驚くよね。
それに続いて入ってきたルーンとタビーが少し引いてる。
使用人が全員で並んでたからだ。仕方ないんだ。王族を迎えるから!
「お邪魔します……」
「ご招待ありがとうございます」
俺と師匠は苦笑して、応接室に三人を通した。
お茶を出して落ち着くと、師匠の講義が始まった。二年目を迎えて難しくなった数学、言語学、紋章学を範囲を一通り教えてもらった。
二時間で走り切った。
一休み(お昼)してからテストをして覚えてるか確認して、覚えてないところを徹底的に覚えろという勉強方法だった。
最後に試験問題を渡して自己採点するようにとのお達しだった。
精霊組とチーはどこかに遊びに行った。
休み時間に探したら礼拝室にいた。
「すごいね。光神教の教会では見られない神様をお祀りしているのかい?」
アリファーンが驚いている。
「精霊教の祭司様にお願いして整えたんだ。精霊王様にはお世話になっているし」
『本物の神気が感じられるで! 我も敬って……』
「チー、おいで」
チーがアリファーンの肩にダッシュで乗った。
「せっかくだからお祈りしていく?」
「そうだね」
「はい!」
「はー、凄いな」
全員で祭壇前に進み跪いた。そして祈る。
『みんな、愛し子と仲良くしてくれてありがとう』
しばらくして礼拝室に響く精霊王の声と祝福の光。
そして、俺は何もなかったことにして立ち上がった。
「勉強に戻らないと……」
「ルオ、これはとんでもないよ」
アリファーンに詰め寄られた。
ルーンは感激で涙を流している。タビーは苦笑しているけど、肩にアームが乗っていた。
「ルオだから、仕方ねえな」
タビー、言わないで!
そして季節は秋から冬へと移っていた。
次の投稿は18時になります。
この章はこの話で終わり、次から新章になります。
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