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第249話 礼拝室

評価、ブクマありがとうございます!

 師匠が実験に明け暮れてる間に祭壇が出来上がった。

 1階のホールを囲むようにある客人の控室の一つを礼拝室にして、祭壇を飾った。

 主神は精霊王、その両隣に芸工神、豊穣神、ちょっと離れたところに魔法神の像が祭壇の奥に安置されている。

「なぜ魔法神様が隅っこに」

 師匠が礼拝室に入ったとたん呟いた。

 礼拝室を作るのにフルク祭司の伝手で精霊教の祭司を招いて祀り方にいろいろ間違いがないか監督してもらったのだ。その際、魔法神は隅っこというかおまけでいいといったのは俺だ。

 そのことは師匠は知らない。

 祭壇を作りたいのは俺だから任せると言ってくれたのでそうなった。

「いろいろあったんだよ、師匠。最初の供物はお酒でいいって祭司様が言ってたので、お供えしてお祈りするね」

(王様、お酒喜ぶ)

(そうね。大好きだわ)

 ラヴァとカルヴァにお墨付きをもらったので、ルヴェールから持ってきていた(師匠が)シードルと日本酒を三本ずつ供えた。


「精霊王様、芸工神様、豊穣神様、お納めください」

 跪いて両手を組んで目を閉じて祈る。

『ありがとう、愛し子』

 精霊王の声だ。

『ありがとう落とし子』

 芸工神。

『精霊王の愛し子、嬉しいわ。ありがとう』

 初めて聞く声だけど、多分、豊穣神?

『我には……』

「魔法神様はだめです」

「ルオ……待ちなさい」

 師匠が祈りの姿勢から俺の肩をがっしり掴む姿勢になった。

「い・つ・の・ま・に、神様と意思疎通を?」

 報連相はどうしたって師匠の目に書いてある!

『魔法神の愛し子、それは、もう、色々あってね』

 精霊王の声が礼拝室に響いていくと、いつの間にか礼拝室ではなく、前に招かれた神域に俺と師匠はいた。

 そこには嬉しそうな芸工神と、美しい妙齢の女性が供物を手ににこにこして立っていた。

 その後ろに悲しそうな魔法神。

 そして俺の目の前に精霊王。

 ラヴァとカルヴァは驚いた顔をして俺たちの後ろに隠れた。

「は?」

 師匠がぽかんとして驚きの声を発する。


『魔法神の愛し子、これから私が説明するので、申し訳ないけれど、静かに聞いていてくれないか』

「は……はい」

 師匠は跪いて頭を下げた。俺もそれに習う。

『魔法神は愛し子が好きで好きで仕方がないらしく、愛し子をずーっと見ていたらしいんだ』

 いわゆるストーキングだね。

『それで、彼は愛し子が好きなあまり、君に不利益をもたらすものに、制裁を加えたと言っている』

「え?」

『愛し子を悲しませるものなぞ、神罰を受けて当然だろう』

 魔法神がぼそっと呟く。

 師匠がそれに驚いて顔をあげた。

『そう、実際に神罰を加えてしまっていてね。そこで、今現在呪いを受けている者たちがいるんだ。さすがに未来永劫子々孫々に呪いが受け継がれるのはやりすぎで、神の立場としても看過できない事態でね』

「その、呪いを受けているというのは……もしかして、私の身内ですか」

『メリーディエース伯爵家直系に受け継がれる、魔法を使えなくなる呪いだ』

 師匠が、はっという顔をして魔法神を見る。

「兄たちだけではなく、子供や孫まで呪われるということですか?」

『メリーディエース伯爵家は長男が継いだだろう? 彼と、彼の子供が呪い子だ。そしてメリーディエース伯爵家を次に継ぐ者の子供、その次の継ぐ者と続いていく。そして直系が途絶えたら、継いだ者の血筋に呪いが移る。それこそ、メリーディエース伯爵家が断絶するまで』

「では、今、呪われているのはデル兄上と、その子供たちということ?」

『そうだね。特にケンダルは魔法師の天職なのに魔法が使えず、非常に苦労しているようだよ』

 精霊王がそう付け加える。

「俺はそんな。確かに、絶縁はしたが、そこまで憎んでなどいない……むしろ憎まれていたのは俺だ……」

 師匠が両手を着く。


『魔法神、解呪の方法を』

 精霊王が魔法神に促す。

『仲直り』

 ぼそっと魔法神は呟いた。短い! この間はもっといろいろ言ってたじゃないか。

「仲直り?」

 師匠が首を傾げた。

『メリーディエース伯爵家当主との和解、復縁だね』

 苦笑しながら精霊王が補足する。

「……わかった」

 師匠が長い沈黙の後、頷いた。

『助力はするよ』

 精霊王が優しく言う。

『私もだ。私にできることはしよう。落とし子を守ってくれてありがとう』

 芸工神から祝福の光が師匠に降り注ぐ。

『私も、私の愛し子がお世話になっているからね。できることはするわよ』

 ラントのことかな?

 俺と師匠、ラヴァとカルヴァにも祝福の光が降り注いだ。

『我も……』

「あ、魔法神様は、とりあえず保留で」

 俺はシャットアウトした。

「ルオ……」

 その瞬間、俺たちは礼拝室に戻った。


「ルオ、あの魔法神の像、あの扱いの理由の一端がわかった気がする」

「でしょ」

「だが、報告がなかったのはダメな点だ」

「……だって、僕が踏み込んでいいのか、わからなかったんだもん。精霊王様に任せた方がいいかなって」

「あーそうだな。俺も、ルオに言ってないことは色々あるからな。わかった。ありがとう。この礼拝室も、そのために誂えたんだろう?」

「ルヴェールなら精霊教会でいいと思ったんだけど、王都はないからね」

「魔法神様ともっと距離を近くしていたら、呪いはなかったのかもしれないな」

 いや、魔法神、お触りは逃げるタイプのような気がするんだけど。それか失神するよね。推しから声かけられた! バタン、とか。

 チーはその点、一直線で駄々洩れだから、かえって扱いやすいかも。

「俺も、たくさんお祈りはすることにしよう」

「僕もいっぱいするよ!」


 それから、礼拝室は屋敷の使用人にも開放された。

 みんな、折に触れて祈ってるみたい。祭壇に供物が置いてあるのを見かけたりするから。

「美食の神様を信仰したいのですが……」

 料理長がこっそり言ってきた。

「武神様をぜひ……」

 護衛の騎士たちからもお願いが。

「わかった。ドワーフの祭司に願い出ておく」

 師匠が取りまとめて精霊教会に手紙を送ったりする一幕があった。


 師匠は仲直りについてはそれから俺には何も言わなかったが、カルヴァは『悩んでるのよ』と言っていた。絶縁まで拗れた関係を修復するのって大変だと思うんだけど。

「ラヴァ」

(主、何?)

「僕、みんなと仲良しでよかったよ」

(仲良し!)

 ラヴァがぺろぺろと頬を舐めてくる。俺は、ラヴァを抱っこしながら、眠りに落ちた。


次の投稿は明日になります。


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なお、コミックス第三巻が8月6日に発売決定です。

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