第246話 休みだったらよかった!
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屋敷に帰ってきてお風呂に入った後、すぐに眠ってしまった。
思ったより疲れていたようで、目が覚めたら翌朝だった。
「おはようございます」
「おはよう。よく眠れたか?」
「はい」
朝食を食べに食堂に来た。すでに師匠が座っていてスピネルに給仕を受けていた。
師匠の顔色は悪くもなく良くもなくという感じだった。
そこそこ眠れたのだろうか。
祝福の水を飲んでいるはずだから、回復はしていると思うけど。
夕食を食べずに寝ていたせいでお腹が空いている。席に着くとラヴァがちんまりとテーブルの上に乗っていた。いつの間に肩から下りたの?
最近ラヴァは一緒に食事を取りたがるようになった。
小さな皿に、俺と同じメニューを少しずつ載せてくれて、それを出してくれている。
「師匠、助けに来てくれてありがとう」
「いや、当然のことをしたまでだ」
「ううん。それでもだよ。思ったより早く出られたし」
「そこは精霊のお導きだな」
「うん。感謝をしなくちゃね。お願いがあるんだけれど、いいかな?」
「なんだ?」
「お祈りする祭壇が欲しいかな。芸工神様と、精霊王様、……魔法神?」
「泉に簡易な祭壇を作っただろう? それを使えば……」
「ううん。そこそこちゃんとしたのじゃないとダメなんだ! それにあの祭壇は水の精霊さんのだもの」
「水の精霊に捧げものをするためだったな。でも、急にどうした?」
「加護をくれた神様にお礼のお祈りが必要だって思ったの。でも、王都には光神教の教会しかないんでしょ?」
「ああ、そうだった。他の神様に祈るなら光神教の教会は使えないしな。あの教会は光神様しか祀らない一神教だからな」
「え、でも加護に他の神様の名前とか、出るの知ってるんでしょう?」
「属神とか僕扱いかもしれないな」
「うわ~やっぱり精霊王様と芸工神様を信仰する!」
「そうだな。実際、色々していただいてるからな。わかった。一階の空いた部屋に作ってもらうことにしよう」
師匠が魔道具の手紙を出すとサラサラッと何かを書いて飛ばした。
「とりあえず早く食べなさい。遅刻するぞ」
「はい!」
マナーに気をつけつつ食事を終えて、慌てて支度をして馬車に飛び乗った。師匠は少し後に出るとのこと。
「結構ハードな合同演習だったんだから、一日休みにしてくれたっていいと思います!」
(おやすみ?)
「そう、お休み」
俺はラヴァに馬車の中で愚痴った。
「おはよう、ルオ、ちゃんと来たな! 最後の方、青い顔してたから心配したぞ」
教室に入るとタビーが元気よく迎えてくれた。
「おはよう。タビー。昨日はぐったりしてたけど、よく寝たからね。ほんと、合同演習の次の日がお休みじゃないのが不思議だよ!」
「それなあ。俺も思う」
(おはよう)
ラヴァもタビーに右の前足を上げて挨拶した。
「ラヴァもおはよう」
ラヴァは挨拶すると俺の肩から机に乗り、そのまま丸まった。
「あれ? 眠いのかな?」
「眠いのかも?」
今日は合同演習の反省会。組ごとでレポートを出せということだった。
採点が間に合ってないとか、そういうのじゃないよね?
「やあ、みんな。昨日ぶり」
指定された場所に行くと、コスティとヤニスがいた。コスティが微笑んで手を振っていた。
「コスティ先輩、ヤニス先輩、昨日はお疲れ様でした」
「お疲れ様でした!」
俺とタビーは元気よく挨拶をする。
「あ、ルオ、ちょっとだけ話があるんだ。いい?」
コスティが手招きするので、少しだけ離れたところで、立ち話をすることになった。
「その後体調は大丈夫かい? ケンダルが来たらケンダルの様子も聞くけど……」
「疲れたくらいで、特に異常はありません」
「それならよかったよ。……話そう、話そうって思ってたんだけど、タイミングがなくて。まあ、ちょっと外聞のいい話じゃないから迷ったんだけど」
「なんでしょう?」
「南の貴族家は辺境伯を寄親にしてまとまっているんだけれど、その中でケンダルの実家は中堅どころなんだ。今はケンダルの両親が伯爵位を継いで、領主になっている。そのケンダルの家はヴァンデラー先生の元の家で、色々あったらしいんだ。親世代なら詳しいことを知ってるらしいんだけど、僕らはね」
あ、これ、師匠のお家事情の話だ。
「いまだに禍根があるらしいんだ。特に今は不作が続いていて、南の貴族家はどこも苦しくて、西の侯爵家から支援してもらってるし」
「え、不作は解消したって聞きました」
「西はそうらしいね。東の直轄領も立ち直りつつあるとか聞いたけれど、南は主産業の葡萄やオリーブが立ち枯れたり、麦の収穫量が激減したりしてる。それもあって、支援してくれないから、向こうは恨みを持っているんだとか噂を聞く」
「支援してくれないから? もしかしてヴァンデラー先生の実家に先生が?」
コスティが頷く。
絶縁している家に支援する? 普通はないよね?
師匠は実家のこと何も言わないし、ルヴェールのことや俺や錬金術のことで忙しいし、恨み言言っている暇ないと思うんだけど。
「先代が亡くなった時も色々言っていたらしいんだ。でも、ケンダルは何も知らないらしい。ヴァンデラー先生と血の繋がりがあることも。憧れだって言ってたしね」
その辺魔法神が絡んでそうだなあ。うーん。
「ケンダルは血縁者って知ったらアワアワしそうです」
「確かにね。ちょっとした老婆心だから、忘れてくれてもいいよ」
「はい。ありがとうございます」
そこで話は終わって、席に戻るとケンダルとマルコムがちょうど来たところだった。
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