第232話 未来の夢
評価、ブクマありがとうございます!
師匠へのプレゼント案を考えつつ、座学や実習で単位を取るために勉強を頑張っている。
さすがに師匠みたいに飛び級まではできないだろうけど、研究室での時間が多くとれるように頑張るつもりだ。
そして一番苦手とするのが今年出てきた紋章学。暗記なんだよ。
「わからんな。記憶術っていうスキルがあるだろう」
予習でうんうん唸っていたら、師匠が呆れた顔で言った。
「記憶術」
ぽかんとした顔をしてたんだろうな。師匠が呆れた顔をした。
「記憶術を使えば瞬時に覚えられるだろう? そういうスキルだ」
師匠のいうことにハッとしてスキルを意識した。
そして、手元の紋章学のテキストに目を落とす。
そうすると今まで目が滑っていた紋章の形と、それがどこの家の紋章で、誰の持つ紋章なのか、するりと頭に入ってきた。
「え、すごい」
「ルオはスキルを使わなくても覚えられるはずなんだが……努力が報われる形で生えたスキルだろう? 記憶術は。俺は覚えてるぞ。貴族年鑑を必死で覚えていたのを」
そうか。努力が報われる世界なんだ。
「スキルになるのかどうかは資質にもよるが、頑張ってた結果だ。大いに活用しろ」
「はい」
ぽんぽんと軽く俺の頭を叩いて師匠は手元の書類に視線を落とした。
俺の学習状況を見ながら書類仕事もこなしている。
師匠は凄い。
俺は弟子として師匠のようなこんな素晴らしい人になれるんだろうか?
もっと頑張らなくちゃ。
よーし! 紋章学、頑張るぞ!
俺は記憶術を駆使して紋章学のテキストを記憶していった。
ひと段落して師匠を見ると、手紙を凝視していて眉の間に皺が寄っている。カルヴァは一緒にその紙を覗き込んでいた。
ちなみに俺が勉強している時、ラヴァも一緒に勉強しているらしい。
肩の上でテキストや本を覗き込んでいるからね。
「師匠?」
なにか難しいことが書いてあるのだろうか?
「あ、終わったのか?」
「うん。なにか心配事?」
「いや、これを見ろ」
師匠が見ていた手紙を俺に渡した。よく見ると、紙には何も書かれてない。裏も見るが白紙だ。
そして、手触りが和紙とは違うことに気付いた。
「この紙、和紙より表面が滑らかだ」
「合同で和紙を作っているだろう? 材料も限られているし、他の素材で作れないかと新しい紙を開発中なんだ」
そうか。大量に作るには材料が大量に必要だもんね。乱獲したら絶滅しそうだし。
「それで、それぞれの領で紙の材料を探して鑑定持ちに鑑定させて紙の材料になる素材を特定している最中らしい。その紙もそのうちの一つだ」
俺は紙の手触りを確かめるようにそっと表面を撫でた。前世で言う上質紙の手触りに似ていた。
「和紙も、色々な和紙を開発中らしい」
「そういえば模様が入ってたね!」
「ああ」
「綺麗な和紙が出来たら僕も欲しいな」
西の領地全体が紙の一大生産地になる日も近いのかな?
ガラスもルヴェールの代表的な産業にしたい。紙のように生産する人が増えて、ハンスのような芸術品を作る職人がたくさん出て、そして、どの家にもガラスの窓があって、そんな世界にいずれはなるだろうか。
ううん。
師匠に言ったじゃないか。
窓ガラスが、誰の家にもあるようにしたいって。
誰もが手軽にガラス製品を買えるそんな世界でないと、俺がガラス工芸作家になる夢は多分、叶わない。
そうだ。ガラス工芸作家になる前にガラスの技術向上とガラス製品の普及を目指さないといけないんだ。
ハンスは頑張ってくれているけれど、他の領地ではガラス製品はどんな扱いなんだろう。
いずれは他の都市を回ってガラス製品の状況も確かめたい。
それには師匠のように、冒険者として世界を巡るべきなんだろうか。
「そうだな。そこは領主様に聞いてみよう」
「うん! 次にルヴェールに帰ったらすごくいろんな種類の紙に倉庫が埋もれてるかもしれないね」
「いや、紙は今飛ぶように売れているから倉庫は空かもしれないぞ」
「それはもっといいね!」
「がっぽがっぽだな」
(もう、主はすぐにそれを言うんだから)
(がっぽがっぽ~~)
ラヴァが変な節つけて歌った!
「お前たち」
師匠がジト目でカルヴァとラヴァを見た。
俺はお腹を抱えて笑い転げたのだった。
次の投稿は18時になります。
書籍第二巻ドラゴンノベルス様から発売中です!
特典SSペーパー付の店舗様もありますので
公式ページまたは作者のX(@sakuyan_08)をご覧ください。
今月発売のgood!アフタヌーン8号に樺ユキ先生のコミカライズ最新話が掲載されます!
マガポケ、コミックDAYSにも公開されますのでよろしくお願いします!
なお、コミックス第三巻が8月6日に発売決定です。




