第231話 癒し系
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「来てたか」
「こんにちは、ヴァンデラー先生」
「こんにちは」
「こんにちは」
「こんにちは師匠」
師匠が研究室に戻ってきてアリファーンを皮切りにみんなで挨拶する。
「その紙……ああ、今年から説明を省いて紙に書くだなんだって言ってたな」
「これ手書きなの?」
紙をぺらりと摘まんでひらひらとして師匠に見せた。
「写本は素晴らしい技能で、羊皮紙で書かれた本の価値を高めているんだが、それも金がかかる」
師匠、口を開くとお金が絡むな。
「この和紙は羊皮紙の二十分の一の値段だが、まとめ買いをすると割引がある」
そんな売り方してたの!?
「和紙は羊皮紙より書きやすいし、インクを乗せやすい。そこで、芸術の講師が木板を彫り込んでインクを押し付けたら和紙に絵が写ったって報告があったんだ」
木版画だよ!
「今回はそれで反転する字を彫り込んで何枚も作ったんだ。前回と演習内容が変わったからな。手元に残せる方がいいだろうということになった」
木版印刷だよ!
「師匠、それ、特許申請案件では?」
俺は師匠が必ず言うかなと思って聞いてみた。
「してるだろうな。まあ俺が口出しする案件じゃないからな」
「僕、てっきりその場で特許書類差し出してるかと思った」
「ルオならともかく、いい大人の講師なんだから、自分で気づくだろ?」
「そうかあ」
特許特許と言ってくるイメージしかないけど。
「それに俺に金が入ってくるわけじゃないしな」
「確かにそうですね」
ルーンが思い切り頷いていた。
ルーンも守銭奴の仲間入りをしたようだ。
「さて、今日もポーション作りだ」
「はい」
そして俺たちはポーション作りに励んだ。
合同演習が終わると師匠の誕生日が近づく。
なにかいいものがプレゼントできないかと悩んでいる。
俺にできるのはガラスで何かを作ること。
アクセサリーか、もっと実用的なものか。
ベッドに寝っ転がって考える。
アクセサリーと言っても、男性だし、身に着けられるものは限られている。
(主、悩んでいる?)
「うん。ちょっとね」
(僕、力になる!)
「ありがとう。嬉しいな」
(何悩んでるの?)
「師匠にプレゼントする品物は何がいいかなって」
(プレゼント!! 僕嬉しかった!)
「そうだよ。喜んでもらえるものがいいなって思って」
(僕、僕を作ってもらったの、一番嬉しかったよ!)
「そうかあ。作ってよかったな」
師匠の喜ぶものってなんだろう? グラスとか、ガラスペンとか、喜んでくれたけど。
師匠はそういえば何か好きな趣味とかあるのだろうか?
金儲け、とか?
うーん、研究とかは仕事だし、仕事はいっぱいしてるだろうしなあ。
癒し系?
癒し系はラヴァだよな。
(僕、主からもらえるなら、何でも嬉しい!)
「ラヴァ、可愛い」
つい撫でてしまった。
そうだよな。心を込めて作ったら、きっと喜んでくれるよな。
(主~!)
ラヴァがぺろぺろと頬を舐める。
ほんとに可愛い。
いけない。師匠のプレゼントだった。
カルヴァにも何かプレゼントするべきかな?
ぺアの食器、ペンダント、ブローチ、カフスボタン、花瓶、ペーパーウェイト……。
「順番に作るか?」
まだ時間はあるから、色々作って選ぼう。
(主、何か浮かんだ?)
「ありがとう。何とか決まりそうだよ」
(よかった!)
ラヴァが喜々として俺にくっつく。
久しぶりに大量に抜ける魔力を感じて俺は自然と眠りに入った。
次の投稿は明日になります。
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