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第220話 中央広場

 イオと王都見物に来た。

 俺もあまり観光とかしていなかったので、楽しみにしていた。

 市場を回り、中央広場に出る。市場のにぎやかさは前と変わりはなかった。

 中央広場の噴水の周りでは少し裕福な人々が思い思いに過ごしているようだった。

 この世界はやっぱり階級社会らしくて、住み分けがされているみたい。

 王城に近い辺りは上級階級というか、裕福な平民までしか来ないらしいんだ。

 青空が広がる雲一つない晴天。お昼に差し掛かったこの時間帯はやはり暑い。


「やっぱり少し暑いね」

 汗がじんわり額に浮かぶとそれをハンカチで拭う。

 湿度はあまりないから、べたべたすることはない。

(主! 冷やす? 冷やす?)

(あ、うん。お願いしようかな?)

 ラヴァが食い気味に言ってくる。肩にいるのに首のあたりに移動してひんやりした体を俺に摺り寄せた。うーん、冷たくて気持ちいい。

(では私はそよ風を)

 風の精霊アイレが俺たちの周りに風を吹かせた。

 熱気が払われて、涼しくなった。

「涼しくなったよ! ありがとう」

 イオが小声でお礼を言っている。

「ああ、ルオ坊っちゃん、風属性持ってましたね」

「あ、うん」

 ウォルトがにこにこしながら俺に言ってくる。

 使ったの、アイレなんだけど、まあ、いいか。


「ルオ坊っちゃん」

 ウォルトが少し硬い声で俺の名を呼ぶ。

 前方から白い帽子をかぶった女の子が走ってくる。広いつばを両手で押さえながらなにかから逃げるように。

 俺は避けたけれど、ぶつかってしまったイオが女の子を抱きとめるように支えた。

「きゃっ」

「大丈夫?」

 イオが女の子に天使スマイル全開で声をかけた。

 俺からは女の子の顔は見えないけれど、多分見惚れてるに違いない!

「だ、大丈夫です」

 涼やかなやや幼い綺麗な声で女の子は答えた。

 よく見ると足首まであるデザインは地味目だけど、上等な水色のドレス。

 ルヴェール染めだ。

 爵位の上の方の貴族の子供かもと、そう思った。

 まだ生産量が少ないから、下の爵位の家まで広まってないはずなんだ。


「いたぞ!」

「おい、その子供をこっちへよこせ」

 小綺麗にしているけれど、どうも育ちの悪さがにじみ出る二人組だった。この中央広場には似合わない人種だ。言ってるセリフも破落戸みたいだ。

 イオも不穏な空気を感じたのか、女の子を自分の後ろに隠した。

 ウォルトが俺たちの前に出る。

「なんだ。あんたたち。穏やかじゃないな」

 ウォルトの手が腰に差した剣の柄に伸びる。

 それに気づいたのか、睨むような表情から、愛想笑いになる。

「いや、その子供は俺たちの家族なんだ」

「はぐれて探してたんだよ」

「ち、違うわ」

 怯えた声に視線を向けると首を横に振って、イオの服を握っていた。

 その手が震えている。

「違うって言っているよ」

 そう言うウォルトが警戒態勢に入った。護衛の騎士達もさりげなく近づいてきている。


「迷子なの?」

 イオが女の子に聞いた。

「みんながあの人たちの仲間から逃がしてくれたの」

 護衛が逃がしたってことかな。

 うちの護衛の騎士が俺とイオの両隣に立つ。もう一人も女の子の後ろにいる。

「どうやら、悪い人みたいだよ。ウォルト」

「子供を追いかけまわすのは悪い奴って相場が決まってますけどね」

「いいからよこせよ!」

 我慢できなくなった男の一人がナイフを抜いた。

「よし、正当防衛成立」

 ウォルトが剣を鞘ごと抜きざまに側頭部を横から打ち付けた。

 男が右に吹っ飛ぶ。石畳を転がってナイフが男の手から離れた。右にいた騎士が素早くナイフを拾い上げ、男の上に足をのせて抑え込み腕を後ろ手にし拘束した。

「ひ」

 吹っ飛んだ男のやや後ろにいた男も、短剣を手に持っていた。

 やや怯えた表情のその男をウォルトが剣で腹を突き、くの字になったところを手刀で首を叩いて気絶させた。

 ウォルト凄い!

 俺の脇にいた騎士が気絶した男を押さえる。

 その直後に警備兵がやってきた。どうやらスピネルが通報してくれたようだった。

 俺の側にいたのにいないと思った。さすが気配を消すの上手いよね。

 二人の男は連行され、警備兵はウォルトに話を聞いていた。

「その……」

 護衛のことを聞こうとした時だった。


「で……お嬢様!」

 やや年配の女の人とその後ろにウォルトくらいの歳の男性が走ってきた。

「アマンダ!」

 この子の保護者みたいだ。

 女の子はイオの服を離して、アマンダと呼んだ女の人の腕の中に飛び込んだ。

「あの……あなた方は……」

 ウォルトもスピネルも警備兵に対応している。ここは俺が対応するべきかな。

「その子が変な人たちに追われていたようなので、うちの護衛が追い払いました。怪我とかはしてないと思うので、大丈夫だと思いますが……」

「ありがとうございます! 私はアマンダと申します。お名前を」

「僕はフルオライトと言います。弟はアイオライト」

「アイオライトです」

 イオがニコッと笑って自己紹介する。

「ありがとうございます! お礼をしたいのですが、どちらに……」

「いいえ、ご無事で何より。お礼は感謝の言葉で十分です。僕たちももう行かないといけないので」

「うん。王都見物の途中なんだ」

「そうですか。本当にありがとうございました」

「ありがとう」

 女の子が顔をあげてお礼の言葉を笑顔とともにくれた。ものすごく可愛い顔立ちでくりっとした青い大きな目が印象的だ。イオと同じくらいの歳だろうか?

「うん。気をつけて、さようなら」

「さようなら」

 イオと一緒に手を振って見送る。あとからやってきた騎士っぽい護衛に囲まれて女の子の姿は見えなくなった。


 警備兵から解放されたウォルトとスピネルが戻ってきた。

「二人ともありがとう。みんなもありがとう」

「ありがとう!」

 騎士たちにもお礼を言って王都見物を続けた。

 美味しそうなお菓子を売っているお店があったのでお土産に使用人の分も買った。

 突発的なイベントがあったけど、久しぶりのイオとのお出かけは楽しかった。

次の投稿は18時になります。


本日、ドラゴンノベルスから書籍第二巻が発売になります!

本屋さんや通販サイトでご購入いただけると嬉しいです!!

よろしくお願いします!

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