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第208話 瘴気

評価、ブクマありがとうございます!

おかげでランクインしました!!

「檻はフェリシア特製。声が聞こえないように結界を張ってるよ。コルが」

 前に植物の蔓で縛っていたより、動き回れる空間があるのが少しはマシな扱いではあるけれど。

「まあ、魔法に関しては俺の方が得意だからな。さて、聖属性付与」

 師匠の伸ばした手の前に大きな魔法陣が光って結界を覆った。

「これで結界内は一時的な聖域だ。浄化の効果が増す」

 そう言いながら師匠は『浄化』と唱えた。

「瘴気に侵されているのならこれで何とかなるはずだが」

 しばらくすると、エルフたちが苦しみ始めた。

「え?」

 そして彼らの身体から黒いもやが立ち上り、消えていく。

 え、あれが瘴気?

「本当に瘴気が……」

 レカルが呆然と見ている。


「完全にとはいかないか? 結構強くかけてるんだけどな! もう一回浄化!」

 バタバタとエルフの人たちが倒れていく。最後まで苦しんでいたのはルーンが父さんと呼んでいたエルフだった。

「これで全部浄化したか? ルオ、精霊王様に声をかけてくれ」

「は、はい! 精霊王様! 瘴気を浄化しました!」

『うん。ありがとう』

 精霊王様が気配を強めるとぞくぞくと背筋が震える。

『あなたたち、起きなさい』

 祝福の光が降り注ぎ、彼らは起き上がった。


「……!」

「……!!」


 彼らが何を言っているのか、防音の結界で覆われていてわからないけど、多分精霊王様の声に驚いてるんだろうな。

『あなたたちが住む森も私は祝福しているよ? それでは満足できないのかい?』

「い、いえ、とんでもない!」

 声が聞こえた。どうやら師匠が防音の効果を切ったらしい。結界自体はまだある。

「ありがたいことです!」

『それだったら、もうルヴェールに迷惑はかけないでくれるね? 私はいつもあなたたちをちゃんと見ているから』


「せ、精霊王様……」

「おおおお」

「わかりました! 決して迷惑はかけません!」

『他の里のエルフたちにも言ってくれるね?』

「はい!」

 全員が声を揃えて返事をした。そして五体投地した。

 エルフはみんな五体投地が好きなの?


『ルオ、コランダム、レカル、ありがとう』

 精霊王様が俺たちに祝福の光をたくさん振りまいて気配を消した。

 そして光が消えたらレカルも五体投地していた。

 ちょっと!

「いや、つい」

 レカルは照れながら起き上がった。

(檻は消していいのかしら?)

「そうだな。だが結界は張っておこう。飛び掛かられたら困る。コル、まだ解除しないでくれ」

「わかった」

 檻が消え、広場に五体投地しているエルフがたくさん。

 これはこれで面倒のような気がする。

 俺の脳裏にはルーンがストーカーになった姿が思い出された。

 まさか、ね。ないよね?


「さて、老害ども。目は覚めたか?」

 レカルが相変わらず冷たい。

「なっ……老害だと?」

「そ。年を取りすぎて、瘴気に侵された老害。頭が固定観念で凝り固まって現実を見ない理想主義者。エルフは何も偉くはないけれど、偉いと思い込んでいる馬鹿。違うかい?」

「おいおい。そこまでにしてやれ」

 師匠がぽんとレカルの肩を軽くたたく。

「ルヴェールに宣戦布告をしたのはわかっているな? 本気でかかってくるなら、俺が里を滅ぼすが、いいか?」

「なっ……宣戦布告など!」

「精霊王様に祝福をいただいた方々に争う気は……」

 エルフたちはおろおろとし始める。

 あの強気はどこに行ったの?

 そして師匠の後ろから見ているとひとりのエルフと目があった。


「……愛し子だ!」

「なに?」

「ほんとだ! 全身が光り輝いて……」

「なんという神々しい」

 今度は俺に向かって祈り始めるやら、五体投地するやら。どうしたの?

「そんなに僕光ってる?」

(主はいつも素敵!)

「ありがとうラヴァ」

 エルフたちが騒めく。

「なんと精霊と契約を?」

「人族なのに?」

「素晴らしい」

 ちょっと涙流さないで!


「目の曇りが取れたってことか」

 レカルがぼそりと呟く。

「とりあえず魔法契約だ。お前たちから一人金貨一枚もらったうえでこの紙に署名だ」

 師匠!

 エルフたちはお金を持っていなかったので借用書にも署名する羽目になった。

「これは魔法契約書代だからな。そもそも、慰謝料か賠償金請求するくらいの事態だぞ」

 師匠が滾々とエルフに諭していた。

 俺が精霊と契約してるのを漏らさない魔法契約だ。それにルヴェールに手を出さないことも書かれている。師匠は全員に契約書を書かせてその紙をインベントリに仕舞った。

「さて、これで解決か?」

 師匠がふうっと息を吐き出してエルフたちを見た。


「そうだね。もうルヴェールに手出しはできないしね」

 レカルも頷いた。

「里には自力で帰ってくれ」

 送らないんですね。師匠。

 エルフたちはこくこくと頷いていた。

「ああ、そうだ。精霊が見えなくなったのはいつ頃だ?」

 師匠が足を止め訊く。


「精霊が見えなくなった?」

「そうだ。見えなくなっていなくなったと勘違いして……」

「見えなくなっただけなのか?」

 エルフたちは気が付いてなかったのか、そう口々に言った。

「ああ、確か、交易にくっついてきた光神教の司教が出入りするようになってからかな?」

「精霊教会の側に光神教の教会が作られてから?」

「人族が頻繁に出入りするようになってから、だと」


 エルフの言葉に師匠は少し考えこんで頷いた。

「わかった。もう迷惑はかけるなよ」

 ひらっと手を振った師匠は転移したところまで戻ると言って歩き出した。

「後始末は任せていいか?」

「いいよ。もともと僕たちエルフ族が迷惑かけたんだしね」

 レカルはフェリシアと手を振って俺たちを見送ってくれた。

 とりあえずは一件落着となった。



次の投稿は18時になります。


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