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第200.5話 エルフの里は大騒ぎ(レカル視点)

評価、ブクマありがとうございます!


この話でこの章は終わり、次の話は新章となります。

 精霊王の声が精霊教会の祭司に届いた。

『ガラスの精霊はルヴェールのガラス技術の研鑽によって誕生した。今後も更なる発展を願う』

 精霊王の声を聞いたのは教会始まって以来のことだった。


 その時空気が歓喜に包まれたのを感じた。

「何が起こった」

(精霊王様よ)

「精霊王様、だって?」

(新しい精霊を祝ったの)

「新しい精霊」

(精霊は常に生まれているの。でも、今まで上位の精霊がいなかった生まれて間もない新しい精霊がいきなり進化したのよ)

「そんなことがあるのか? 上位の精霊は時を経ないといけないんじゃなかったのか?」

(そうね。その通りよ。時を経て魔力を取り込んで存在を大きくして進化するの。今まではそう)

「今までは?」


(他の精霊の力と人族の思いが新しい上位精霊を生んだのよ。愛し子の力だからかもしれないわね)

「愛し子?」

(ルヴェールという地に精霊王様の愛し子がいるの)

「他のエルフに知られたら大事だぞ」

(そうね。でも彼には魔法神の愛し子が付いているから大丈夫よ)

「魔法神の愛し子」

(ふふ、貴方と仲のいい彼よ)

「へえ、一所に留まらない彼がねえ。興味深いね」

(あら、行っちゃう?)

「人族にエルフを押さえるのは難しい。魔力は馬鹿みたいにあるからね。ストッパーになりに行こうか」

(うふ、楽しそうね)

「この里を作ってから外には行ってないからね。ちょっとした旅行を楽しもうか。それに彼には借りがあるからね」

(ルヴェールは祝福の地。行くと主は驚くんじゃないかしら?)

「驚くことがあるの? それは凄い。楽しみだな。ああ、でもここから行くと3週間はかかるな。フェリシア、力を貸してくれる?」

(もちろんよ。主のためだもの)


「後のことを頼んで出かけようか。教会にも顔を出していかないとね」

 僕は教会の祭司に事情を聞いた。

「はい。私は初めて精霊王様のお声を拝聴いたしました。素晴らしい神気に体が震えました。精霊たちも嬉しそうにはしゃいでいたようです」

「ああ、空気が震えたのはそのせいか。精霊王様の声が嬉しかったんだな」

「すべての精霊の上に立つ御方ですから」

 精霊教会の祭司はドワーフ族だ。エルフ族の祭司はいろいろと問題が多いのでわざわざ来てもらったのだ。

 この里に住むものは若いエルフばかり。柔軟な思想を持ったエルフだけ選んだつもりだが、どんな種族にもいろいろな考えの者はいる。

 この先また罪を犯すかもしれないが、その時は僕もいないだろう。

(あら、主様は長生きするわよ? 私と契約したもの)

「エルフというだけでも長生きなのに!」

(あら、私と長く一緒にいるのは嫌なの? 主)

「いや、そうじゃないよ? そうじゃない」

 フェリシアが拗ねてしまうのは困る。

(ふふ、冗談よ)


「ああ、それで僕はルヴェールに様子を見に行こうと思う。なんせ、エルフは精霊に焦がれる民族だからね。精霊を見られなくなったものも多い中で、精霊王様のお声を拝聴したなら馬鹿な気を起こす輩もいないとも限らない。人族と問題を起こすのはまずいんだ」

「ああ、ゾイデゥンの里の二の舞にならないとも限らないからですか」

「前回はドワーフ族とだったけれど、人族は今や大陸の覇者だ。そんな人族と揉め事を起こすのは勘弁してほしい」

「確かに。ドワーフ族は人族にも世話になっていますし」

「では、後のことは頼みます。何かあれば手紙を飛ばしてください」

「わかりました。お気をつけて」


 祭司様に見送られて、森をフェリシアの力を借りて突き進む。

 植物の蔓で作った乗り物に乗り、駆け抜けるのだ。森の木々は障害にはならない。木の精霊である彼女の支配下だからだ。

 この精霊魔法があるためにエルフは森の覇者だった。だが今では魔物もろくに狩らず、結界の中に閉じこもるだけになった。精霊と契約できるエルフはもうほとんどいない。

 精霊に見放されたのだと、気付けないのだろうか。


 そして一週間ほどの時間でルヴェールに着く。

「これは……コルの結界か。凄いな」

(村全体を覆っているわ。ああ、凄いわね。この精霊の数)

 ルヴェールは光輝いていた。下級精霊があちこちにいて自由に動き回り、濃密な魔力と精霊王様の神気。そして……

 案の定、エルフが押し寄せていた。

 このエルフたちはルヴェールに一番近い、イエシルの里の者か。

 対峙しているのはコルだ。相変わらず不審者だな。そしてその後ろに少年が三人。ん?

「フェリシア、あの少年の肩にいるのは僕の見間違いじゃなければ霊峰の主だと思う」

(見間違いじゃないわ)

「そしてその隣に土の精霊を肩に乗せた少年と、精霊に思いっきり集られている、火の精霊が肩に乗っている少年がいるな」

(酒の精霊もいるわ)

 あーあれ酒の精霊なのか。コルは酒好きが高じて酒の精霊と契約したのかな。


「父さん! 何してるの?」

 エルフの少年が門へ駆け寄る。その傍には木の精霊がいた。

 ああ、この子は僕と同じかもしれない。

「グフルーンか? 王都にいるのではなかったか?」

「手紙で知らせたじゃない! ルヴェールへお邪魔するって! 何故来たの?」

「精霊教会からお告げがあったからな。祝福の地で、新しい精霊様が生まれたと。祝わなければならん」

「それと、ルヴェールをエルフのものだっていうのは関係ないでしょう?」

「なぜ関係ない? 精霊様の祝福は我らエルフのものだろう?」

『あの地を荒らすドワーフに鉄槌を降さねば。あの地は我らの地だ』

 父とあの男が重なる。

 するりと、その言葉が出た。


「ああ、老害はまだいたんだね」


 植物魔法で彼らを拘束するのにためらいはなかった。


次の投稿は18時になります。


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