第196話 交渉(二)
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「契約はアリファーン殿下と、というのはわかっています。ええ、物凄く契約したがっているのはわかってます」
師匠が悪い笑顔を浮かべている。
アリファーンが物凄い顔で師匠を見て……じゃなかった。俺たち全員師匠を見ていた。
『ええと、私は見守っていていいんだよね』
精霊王様が困惑していた。
(だ、大丈夫だと思うわ、王様)
カルヴァが視線を逸らしつつ言う。
(主、王様見ていていいの?)
ラヴァがくりんと顔をこっちに向けて聞く。
(う、うん。いいと思うよ)
(いいって! 王様!)
『あ、ありがとう』
精霊王様って本当にいい人だな。
『だ、だからなんやねん』
「ええ、だから、アリファーン殿下からも条件をつけなければ対等な契約ではないでしょう。そして、ガラスの小鳥がどうしても必要であると言うなら、対価として何をくださるのか、教えていただきたいのです」
ずいっと師匠がフェニックスに近づく。
『りょ、了解や! アリファーン、どんな条件がええねん』
アリファーンが物凄く困った顔をした。
「……ええと、初代王との約束は守ってもらうことと、他人の前では必ず小鳥の真似をすること。世界の秘密は洩らさない」
師匠がフェニックスを見てからアリファーンに向き直る。
「アリファーン殿下、本当にそれでいいんですか?」
「え……」
師匠、本当に悪い顔している!
「加護とかいただかなくていいんでしょうか?」
『もちろん、加護は当然や!』
「え……、私は別に……」
「要りますよね! ええ、王家ご家族全員に!」
「あ、全員なら欲しいです」
アリファーン!
『アリファーンだけやあかんのやろか』
「私は家族と同じがいいので」
『わかったわ。ほな、両親と兄弟姉妹でええんか? 従兄弟までは勘弁やで』
「それで大丈夫です」
なんでアリファーンの視線が師匠の方なんだろう。そして師匠もなぜ頷いてるんだろうな。
「ではアリファーン殿下との契約の取り決めは決まりました。そしてこちらです」
師匠がインベントリから俺の作品を出した!
『依り代や!』
いや、俺の作品だから!
「ルオ、これを」
師匠がおもむろに俺に手渡した。
俺の作品!
大切に両手で受け取る。
フェニックスの視線が追いかけてくるんだけど!
「あげないよ」
『えええ!? そこは渡す流れやろ!?』
「対価は? という質問に答えてませんが」
あ、師匠が低い声に。威圧もしている。霊鳥に威圧!
『あんさん、えげつないな』
「対価は?」
『いや、せやかて……』
危ない! 某高校生探偵の名前を言いそうになる!
「対価は?」
『ええ……』
俺は手元の小鳥をしみじみとみる。
前世の思い出が絡んだ小鳥だったから手放すのはちょっと寂しい。
なんで俺、国旗の鳥に似せようと思ったんだろう。
「ルオ、……ルオ?」
呼ばれてた!
「は、はい!」
「そうだな。手放すのは悲しいよな」
師匠が俺の肩に手を置いてうんうんと頷いている。
小芝居?
「君は君の都合で、全く関係ない人の大切な物を盗ろうとしているんだよ?」
アリファーンも参加した!
「ルオはガラスにほんとに思い入れがあるんだ」
タビ―!
「そ、そうですよ! 私にすっごく綺麗なガラスのアクセサリーを作ってくれました!」
ルーン!
「対価は?」
『……何がええんや』
譲歩した!
師匠の目がギラリと光った!
「錬金術師でもあるので、素材としてその羽を」
『抜けた奴でもええんか?』
「結構です。取ってあるんですか?」
『塒に放置やからなあ』
「君、うちにきたらちゃんと掃除するんだよ」
アリファーン!
「ではまずはそれで」
『まずって……』
「今のは今までの使用料です。ルオは魔力も搾り取られていましたから」
『ぐぐ……』
「今後十年は抜けたら羽をもらいますのでもって来てください。ルオの工房でいいです」
『わかった! 持っていけばええんやろ!』
「魔法契約書に詳しく記しますから後で署名ください」
『わかったわ!』
「それでは譲渡条件ですが……」
うわ~師匠の弁舌が冴えわたる。フェニックスが息も絶え絶えだよ。
『魔法神の愛し子で商業の神の愛し子ではなかったはず……』
精霊王様の聞いちゃいけなそうな呟きが聞こえた!
魔法契約書にフェニックスが署名して終了。
俺はしぶしぶとガラスの小鳥を渡した。
『ではアリファーン血を一滴貰うで』
アリファーンはナイフで指を少し切って血を垂らした。
それをガラスの小鳥に受肉したフェニックスが舐めとり、フェニックスとアリファーンが光った。
『これで契約は成立やで! まずは名前を付けてくれへん?』
「名前?」
『主は名をつけないとあかんねん』
そこは精霊との契約と同じなんだね。
「では……チーで」
『は?』
「チー」
『え?』
「チー」
『我の名前はチーや!』
半ばやけくそになってる気がする!
「チーここに乗って」
アリファーンが肩を指でとんと示すとフェニックス改め、チーがダッシュで飛び乗った。
「可愛いね」
指で頭をアリファーンが撫でると、チーの頭の上と目にハートが見えた。
チーがアリファーンを好きすぎる件。
『終わったね。私は戻るよ』
ほっとした精霊王様の声が響いた。
「ありがとうございました」
俺と師匠は声を揃えてお礼を言った。
(ありがとう!)
(ありがと! 王様!)
(ありがとう)
カルヴァとラヴァとアームもお礼を言った。
「さて、屋敷に戻るぞ! 帰りは薬草を採取する!」
師匠がほっとした顔をして歩き出した。
周りはもう、いつもの森で、神気は消えていた。
次の投稿は明日になります。
フェニックスの扱いがちょっと……と思われる方もいらっしゃると思います。
でも考えてみてください。
あれはチーです。
エセ関西弁をしゃべる赤い小鳥です。
これから躾けに苦労する第二王子殿下を労わってあげてください。
よろしくお願いします。
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加筆いっぱいしましたのでぜひご覧いただきたいです!
師匠も活躍!!
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ちなみにチーは出てません。




