第186話 卒院祭(三)
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「も、もう放してあげたら? きっとちゃんと従魔の小鳥だってこと、思い出してるよ。ね?」
俺は苦しそうにしているフェニックスをちらりと見てアリファーンに言った。
「それにこれ以上アリファーン殿下に迷惑をかけるようなら、送還するから」
そう言うとビクリとフェニックスが震えて大人しくなった。
それを見て、アリファーンがそっと手を離した。
『ぷはっ……』
息を吐き出したフェニックスに俺たち五人(師匠はまだ俺の側に立っていた)の視線がフェニックスに集中する。
気のせいかフェニックスの顔にだらだらと汗が流れている気がする。
『……チ、チチッ』
「よし」
アリファーンが厳かに頷いた。王族って感じだった。
「ヴァンデラー先生は、見回りでしょうか?」
フェニックス問題が片付いたアリファーンが師匠に気付いて訊く。
「ああ、まあ、そんなところだ。俺の研究室に本年度の卒業生はいないからな。色々仕事をしなきゃいけないんだよ。問題は起こしてくれるなよ?」
そういう師匠の視線が俺に来るのはなんでだろう?
「わかりました。私は魔法大会を見て今日は終わりです」
「そうなのか。気をつけて行ってこい」
「はい。行こうルーン」
「はい」
二人が去って行くのを見送っているとフェニックスが尾羽を広げたり翼を広げて肩の上を歩いていた。
落ちそう……じゃなくてそれ、求愛行動じゃないの?
フェニックス、そんなにアリファーンが好きなの?
アリファーン、メスじゃないよ? そもそもフェニックスって番うの?
「お前たちも早めに帰れ」
師匠はアリファーンの後を追っていった。もしかして護衛任務とか?
「早めかあ。今日はもう剣術大会もギードでないしね」
俺たちは剣術大会の勝敗表が掲示されている場所に向かった。
(主部屋に帰るの?)
(もうちょっとしたらね)
師匠も卒業祭の間は忙しくて研究室に戻れないからポーション作りは終わるまでお休みなんだ。
「早めに帰ったら、勉強するか」
タビーがぼそっと呟いた。
「え、どうしたの?」
「来年度は内容が専門的になるだろう? 俺はどちらかっていうと体動かす派だから、暗記物は何度もやらないと覚えられないんだよ」
「なるほど」
俺は最近『記憶術』スキルを使うことを覚えた。というか、意識して記憶しようとするとスキルが発動するようになった。
多分このスキルが貰えたの、貴族名鑑と呪文表のおかげなんじゃないかって思う。
ずうっと暗記するために読み込んでたしね。
「覚えるだけじゃなく応用も考えないといけないのかもしれないよ。論文とか」
「論文かあ」
俺がそういうとタビーがため息を吐いた。
「ポーションの論文も書くから、今から慣れておいた方がいいと思う」
「そうだった! そう言えば夏にルオのところ行く口実がすでに論文必須だった!」
「師匠は勉強に関しては厳しいから、本気で取り組まないとダメだと思う」
「いい加減にやってるつもりはないんだけどなあ」
「頑張ればもしかしたら一日くらいはダンジョンに行けるかも?」
「俺、頑張る!」
タビーも現金だなあ。
掲示板の場所についた。
大会をやっている実技棟の前の掲示板に張ってある。普段は授業の中止とか教室の変更などを書いて張ってある場所だ。
「あれ? ギードの勝ち数すごく多い気がする」
「ほんとだ。……負けが一個もない」
負けがない! 引き分けもあるんだ。引き分けの数も少ない。
「凄いな」
「俺も、剣術大会に出たいな」
タビーが目を輝かせた。もともと剣術が得意だものね。
「いいんじゃないかな? それを目標にこれから頑張っていけば……」
「そうだな。ルオはポーションで決まりなんだろう?」
タビーはくすくすと笑って言う。
「卒院祭はそうなるんだろうなって思う」
あれだけ言ってきたからガラスはダメなんだよなあ。
師匠、もっとガラスを作らせて!
卒院祭、ポーションの展示でいいから!
もっと!
あ、そういえばアリファーンの誕生日プレゼント、どうしよう。
王家への献上品と一緒にっていう話だったけれど、献上は夏休みが終わって王都に戻ってきてからになるんだろうか?
アリファーンの誕生日は九月十八日だものね。
フェニックスモチーフのガラスペンにしようかな?
アリファーンの目からハイライトが失われて、フェニックスが喜ぶだけかもしれないなあ。
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