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第184話 卒院祭

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 フェニックス旋風に踊らされている真っ最中だけど、卒院祭が始まった。

 こっちの世界でも五月晴れというのだろうか。

 雲一つない晴天の中、学院長による開会宣言がなされ、お祭りのようなムード一色となった。

 在院生の学年末試験は卒院祭直前に終わり、在院生は純粋に楽しむ期間だ。

 一週間かけて行われ、そのプログラムは正面玄関の大きな掲示板に張り出されている。



「ギード先輩、剣術大会出るんだ」

「え? ギード……先輩が?」

 え、そんな武闘派じゃなかった気がするけれど。

「その間はなんだ? それに先輩ってつけてなかっただろう」

 タビーに突っ込まれた!

「ほら、学院だから上の学年なのに呼び捨てはまずいかなって」

「あ、そういうこと」

 納得したのかタビーは頷く。

「どこから見に行く?」

 タビーに聞かれてプログラムに視線を戻す。が、人の頭でなかなかプログラムが見えない!

「もう少し背が欲しい」

 切実に。


 剣術大会はトーナメント方式ではなく希望者による総当たり戦で勝ち星が多いものが優勝だった。これなら実力を十分に見せられるね。しかも一日に二試合までで最終日に順位が決まるようになっている。

 魔法師大会は自分の得意な魔法を披露する場で、戦いはなし。

 これなら支援系統も安心だね。

 剣術大会と魔法師大会は実施場所が違うけど、被る時間が多くて全部は見られない。文官系の研究展示は常時なんだけど、その学院生がいない時間帯があるから説明が欲しいならいる時間帯に行かないとならない。

 また、変わり種ではサロンを使ってお茶会を開いたり、乗馬の大会とかある。

 乗馬大会は実は人気らしく陰でこっそり賭けを楽しむ人たちもいるとか。

 競馬か。

(主、楽しそう)

(うん。お祭りっぽいからね)


 俺とタビーは結局、ギードが出る剣術大会を見ることにして、それまでカリーヌの展示、刺繍を見に行くことにした。保護者や各機関の関係者も見に来てるので(招待状が必要)普段と違う雰囲気にちょっとドキドキする。


「まあ、ルオ……君、タビー君来てくれて嬉しいですわ」

 カリーヌの間にあーという顔をしたタビーはそつなく挨拶を熟した。

「カリーヌ先輩、素敵な刺繍ですね。これは花ですか? 刺繍の糸の色が青と水色なんて珍しいというか、見たことがないんですけれど」

 展示のパネルに飾られていたタビーが示した刺繍は、ルヴェール染めで染めた刺繍糸で、ハンカチや大判のスカーフの布にルヴェールの風景をまるで絵画のように刺繍をしてある作品だった。

「すごい! ルヴェールの村の風景でしょう? この花はリンゴの花!」

「この青と水色はルヴェール染めの色なんですわ。まだあまり広がっていませんけれど、絶対流行しますわ」

「ダンジョン行ったかいがあるね」

「まあ、それは内緒ですのよ。ルオ君」

「え、そうなんだ?」

「そうなんですの」

 おしとやかに笑ってるカリーヌの笑顔に圧を感じて頷いて下がった。

 だんだん会場が混んできた。ご婦人が目の色を変えて作品を見ていた。

「この色は王妃様が着ていらしたドレスの色! あ、貴方、この糸をどこで……」

「まあ、そうでしたの? この糸はルヴェール染めという手法で染めた糸なんですの」

 あ、カリーヌの目がギラリと光った。

 師匠が金儲けを考えている時の目と一緒だ。

 こういう時の目をしている人に逆らってはいけない。

「タビー行こう。邪魔しちゃ悪いし」

「そうだな。挨拶できたからいいか。しかしわからない俺でもすごいってわかる刺繍だった」

「カリーヌの天職のおかげかも? 言えないけど」

「そうか。魔法大会じゃないのはこっちを職業として選んだからか」

「カリーヌはルヴェール染めの工房を立ち上げた時の開発チームの一人なんだ。母と一緒に頑張ってたからすごいよ」

「ダンジョン……ルオのお母さん……なんか、知らないけど二人そろったら凄いことになる気がする」

「うん。凄かったよ」

 タビーはごくりと喉を鳴らして黙った。

「次、乗馬観よう! な?」

「うん……あ、だめだ。みんな僕に寄ってきちゃう」

「あ……そうだったな」

「他の展示も見ながら剣術大会観に行こう」

「そうだな!」


 他の展示も見た。女子は家政系が意外と多かった。卒院後は結婚とか決まってるのかな?

 男子はそれぞれの所属もしくは所属することになっている研究室のテーマである論文などが多かった。

 魔道具の展示もあった。

 魔道具かあ。

 マジックバッグは魔道具の最高峰なんだよな。あの論文、凄かったもの。

 あれを頑張って作れるようにならないとな。


『がっぽがっぽだ!』


 いや、お金目的じゃないから! 違うから!


「どうしたんだ? そんなに首ふって。目が回るぞ」

「何でもないよ! 次行こう!」

 俺も、師匠の影響を受けてるんだろうか?

 でも、ガラスの研究をするにはお金かかるしな。仕方ないかな?

次の投稿は明日になります。


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