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第178話 ハンスのガラスペン

評価、ブクマありがとうございます!

リアクションも嬉しいです!

 師匠を伴って細工室の扉をノックした。

「どうぞ」

 師匠が扉を開けて中に入る。続いて俺も入室した。

「献上品ができたと聞いたが」

 作業場の前に座っているハンスの右肩の上にガラスの精霊が浮かんでる。なんとなく上機嫌な気がする。

「は、はい。これです」

 布を敷いた木箱の上に置かれたガラスペン。


 透明な直線の軸のライン。美しいクリアガラスの周りを取り巻くレースのような白い模様。それが伸びる先の頂点にフュージングを施した赤いガラスの中に花びらが浮かぶ球体がついている。

 ペン先は書き味は太目で真っ直ぐのラインが全体をシャープに見せている。

 白いレースの模様は前世であった、レースガラス技法に似ている。

「レース編みを見て、模様に使えないかと思ったんです。色ガラスのつくり方はわかっているので、透明なガラスと組み合わせたら、綺麗かなと思って」

 繊細な白い筋がレース編みの模様を形作っている。7本の線が絡み合って頂点に向かう。

「この技法でグラスや皿も出来そうです」

「なるほど。それをセットにして売ることも出来そうだな」

 師匠の目がギラリと光った。

「このレースに似た模様を作る技法を特許申請しよう」

 やっぱり!!

「白じゃなくても作れるか?」

「あ、はい」

「では、王様は赤い色がいいだろう。火属性を表すし、王様は赤みがかった金髪に琥珀色の目だ。王妃様は青がいい。金髪に青い目だからな」

「わかりました」

「素晴らしいな」

 師匠が手に取って光に当てている。透明なガラスの軸は透き通ってどこまでもクリアだ。

 ハンスすごい!


「では、このガラスペンはルオ様に」

 え? 俺?

「このガラスペンはルオ様がいらっしゃらなければできなかった。ですから、ぜひルオ様に使って欲しいのです」

「いいの?」

 俺はハンスと師匠を交互に見た。

「ハンスの気持ちだ。受け取ってやれ」

「ありがとう! すっごく嬉しい!」

 この世界のガラス職人の作った初めてのガラスペン!

 すごいよ! ハンス! 俺すっごく大事にする!

 ハンスは照れて嬉しそうに笑った。

 そして倒れた。

「ハンス!?」

(契約してくれたよ!)

 ガラスの精霊がぐるぐると嬉しそうに飛び回っていた。


 精霊ってこんなにグイグイ来るの?

 そう言えばラヴァも食い気味にカプリだった。

 アースもアームもだし……カルヴァはちゃんと聞いてきたけど。

 あ、師匠が顔に手を当てて天を仰いでる。

 その気持ちすっごくわかる。

 上級精霊って少ないはずなのに俺の周り多すぎない?

 

 ともかくもチャロを呼んでハンスを運び出してとりあえず本館の客間に寝かせた。

「ガラスの精霊、相当タイミングを図ってた気がする」

 師匠が紅茶で気を落ち着かせながらこめかみを揉んでいる。

(仕方ないわ~魔力が増えるのを今か今かと待っていたんだもの)

「そんなに執着してたのか。精霊ってのはそういうものなのか?」

(ううん~私もね。あんまり人間の中で生活してたわけじゃないから詳しくないけれど、ルオのおかげで祝福の地が活気づいているでしょう? そうするとね、精霊教会が建てられたのもあって、私たちに、人間の気持ちが聞こえてくることがあるの)

「精霊のもとに?」

 師匠がカルヴァに訊ねた。

(そうよ。祈りは糧になるの)

「魔力のようなものかな?」

(信仰ね。信仰を集めると格が上がるの)

「格……」

(人間たちはよくレベルって言うじゃない? あれに似た感じね。存在の格が上がるの)

「では、最大宗教の光神教は……」

(う~ん……その辺は何とも言えないわね。私たちは精霊王様が最上と思っているけれど。ともかく精霊はそういった糧をくれる人間を好きになるし、何かしてあげたいって思うのよ)

 じゃあ、ハンスはずっとガラスのことを考えて、祈りを捧げていたのかもしれない。

 素晴らしい作品が作れるようにと。


「精霊は恵みをくれる存在だったな」

(うふふ。美味しいお酒が飲みたかったらもっと私を崇めなさい!)

「もちろん、これ以上ないくらい崇めているよ。カルヴァ。ありがとう」

 師匠が真剣にカルヴァを見つめて言うと、カルヴァは照れたのか高速で師匠の周りを飛び回った。

(主がそう言うなら、頑張るしかないわね!)

 デレてる! 最高にデレてる!

 二人を見てると頬をツンツンとラヴァが突いた。

「ラヴァ、なあに?」

(僕、もっと頑張る!)

「ラヴァ、僕もたくさんラヴァのこと好きだし、崇めてるよ!」

 ラヴァは一瞬固まって俺の肩から頭に移動してそれを何回も繰り返して、襟巻きになった。

 そのラヴァの頭を撫でる。

(主、大好き!)

「嬉しいよ。ラヴァ」

 俺はぎゅむっとラヴァを抱きしめた。


次の投稿は明日になります。


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