第177話 春から夏に向かって
評価、ブクマありがとうございます!
リアクションも嬉しいです!
「そりゃあ、ルオが言い出したからだろうが」
あ、やっぱり。助手代は俺持ちが永遠に決まったってことか。
「わかりました」
俺がしゅんとしているとぐしゃぐしゃと俺の髪を師匠がかき回す。
「その代わり、金になる新しい論文を出そうと言っているだろう? 研究結果の論文書くのは結構難しいんだ。コツがいるし、誰がやっても同じ結果にならなければいけない。その検証を重ねて条件付けがあるならはっきりさせる。ユニークは特許には向かないし、論文にも向かない」
個人の能力依存はダメってことだね。
でも、マジックバッグって……師匠にしか作れないんじゃなかったかな?
「マジックバッグは鑑定で、時空間属性があれば時間停止がつく、というオプション扱いの説明が出るぞ。魔力量の問題と、素材の問題があるが、他の錬金術師がちゃんと作ることができるのは実証済みだ。ほら」
師匠に羊皮紙の束を渡された。
「俺の書いた論文だ。マジックバッグの実証実験やダンジョン産との比較が書いてある。卒業までにひとつ、マジックバッグを作れ。それが貴族学院にいる間の俺からの課題だ」
「マジックバッグを僕が?」
「俺の弟子なんだから、マジックバッグくらい作れないとな?」
「うう。頑張ります……」
「それと並行に四人での論文。さっさと単位を積み上げて暇を作らないと、ガラスも作れないぞ」
「ガラスは作らないと!!」
「じゃあ、頑張れ。あ、マジックバッグは素材集めからな?」
鬼!!
それからは課題が増えて、俺はますます忙しくなった。
色々な日課の隙間に、師匠の論文を読んだ。
さわりだけでも、非凡さがわかる。
まだ、ほんのさわりだけだけどね!
「マジックバッグか~」
(マジックバッグ?)
「収納鞄だよ。見た目よりいっぱい入るよ」
(僕も入る?)
「生き物は入れられないんだよ」
(入らないの?)
ラヴァは学院に持っていっている鞄の上に乗った。
「ものは大丈夫だから、こういう本とか入れるんだよ」
俺は本を鞄に出し入れした。
(わかった!)
「そろそろ寝ようか?」
(うん!)
疲れていたのかすぐにぐっすり寝てしまった。
春から学年末までは意外と短い。
六月末が最終日で、七月八月は休暇になり九月から次学年に進級する。
ギードとカリーヌは今年の六月で卒業だ。
五月に卒院祭というものが開かれて最終学年の卒院生たちのお披露目及び進路が決まってないものは最後の就職活動になるという大事な行事。
剣の腕に自信がある者は剣術大会、魔法の腕に自信がある者は魔法師大会。もちろん魔法師試験、もしくは上級の魔法学院に行く者が多いからそちらに注力するものも多い。文官を目指すものは各研究室からの研究成果をお披露目する等、まるで体育祭と文化祭が合わさったようなそんな祭りだ。
卒院生がすべて準備をして在院生はお祭りを楽しむだけみたいだ。もちろんその様子をしっかりと見て、卒業の年に向けて準備をするものが多いそうだけど。
「どんなことをするの?」
俺はギードとカリーヌに聞いてみた。
「まだ内緒ですよ」
ギードは困ったように微笑む。
「私は……そうですね。まだ決まっておりません。楽しみにしていてくださいね」
カリーヌは悪戯っぽい表情を浮かべて笑った。
「ええ~わかった。楽しみにする。二人とも、実家に戻るんでしょう? 寂しくなるね」
「え、戻りませんよ。私は家を興しますし」
「戻りませんわ。私、服飾工房がありますもの」
「え?」
「それとも、ルオ様は私たちに実家に戻って欲しいのですか?」
ギードが眉尻を下げて聞いてくると俺は首を横に何度も勢い良く振った。
「二人とも残ってくれて嬉しい!」
そう言うと二人は嬉しそうに微笑んだ。
4月も終わりに近づく頃。
「ルオ様、私なりに満足できるガラスペンが出来ました」
ポーション作りに工房に行ったらハンスに声をかけられた。
「献上用のガラスペン?」
「はい」
「じゃあ、師匠を呼んでくる。待っていて」
ハンスは頷くと、工房の細工室に戻っていった。
「ハンスが? すぐ行く」
師匠を執務室に呼びに行くと、師匠は仕事を中断して一緒に工房へ向かう。
「ハンスが満足できる出来だって言ってたから、相当凄いのができたのかも」
「ハンスが? 滅多にそういうことは言わない性格だから、そうなのかもな」
ハンスの作ったガラスペン。どんなのなんだろう。
すごく楽しみだな。
次の投稿は18時になります。
樺ユキ先生のコミカライズコミックス第二巻が好評発売中です。
書籍第二巻が7月3日発売します!
加筆いっぱいしましたのでぜひご覧いただきたいです!
師匠も活躍!!
もちろん第一巻もドラゴンノベルスより好評発売中です。




