第179話 プリュム
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ハンスは倒れたことにひどく恐縮していた。
「ええと、名前はプリュムと名付けました。ガラスペンに宿っている精霊ですからね」
(僕、プリュム! よろしくね!)
(改めてよろしくね! プリュム!)
カルヴァがプリュムの周りをぐるぐる回っている。
(よろしく!)
ラヴァは俺の肩の上で前足をピッと上げている。
「あーなんというか、ハンス。毎晩気をつけろ」
「ほんとにね!」
ハンスは首を傾げた。
「何をどう気をつけるんですか?」
(そうよ! 主に迷惑かけちゃいけないのよ!)
(主、成長しなくなるから気をつける)
待って! ラヴァ、それどういうこと? 気をつけてくれてるってこと?
魔力制御甘かったかな?
(主、魔力まだ少ない。それに主の成長期、終わってる)
(そういえば私の主もそうね。魔力は豊富だけど)
(魔力いっぱい! 僕いっぱい成長できる!)
それはよかったけど、ラヴァ。
「ラヴァ、加減、してるよね?」
びくっと俺の肩の上で震えた。ラヴァ、精霊は嘘つかないよね?
(僕、時々いっぱい吸ってるかも)
「できれば緩めに。僕、今成長期だから」
(はい)
しゅんとしたラヴァがかわいそうになるけど、ここは我慢!
「ルオの魔力量なら大丈夫だろう。もう。あの頃はまだ小さかったからな」
師匠が俺の頭をぐりぐりする。
俺もうすぐ十三歳になるよ? 前世だと中学生だよ? 頭はそうそう撫でなくてもいいよ?
カルヴァもラヴァもプリュムと戯れてて楽しそう。時々火の玉っぽく見えて夜は怖いな~って思ってたのは内緒。
ハンスはまだ本調子じゃないのでプリュムに程々にってみんなで念を押して部屋をお暇した。
起き上がれるようになったら部屋に帰ってもらう。
俺は今日は休みなので一日工房だ。
まだ髪が乱れていそうなので廊下を歩きながら頭を手で押さえる。
「僕、もうすぐ十三歳になるのに」
「誕生日は六月だったな」
「うん。ハンスにはちょっと早い素敵な誕生日プレゼント貰っちゃった」
ガラスペンだよ! 嬉しい!
自分で作ったラヴァのペンと並べて思い切りにやけた。
インクの開発はまだみたいだけど、藍でできるかな?
「師匠、そういえばインクは?」
「藍に関してはカリーヌが頑張るはずだ」
「母様じゃなく?」
「奥方様はダンジョンで実力を発揮される方だから……」
「母様、マナー完璧って聞いてるけど」
「宮廷作法を持っているらしいが……魔法の師匠が師匠なだけに……」
師匠がはっとして口を手で押さえた。
「マナーはこの際関係ない。美容関係に奔走されているようだから、今回はカリーヌだ」
甘酒とか糠とか、師匠が口を滑らせて……いや、俺だっけ?
「じゃあ、卒業してからだね」
「ああ。その前に卒業祭だが、二人は何をするか決まったのか?」
「内緒って言ってた」
「ギードは領主の勉強もしていたからな。文系の何かか?」
「カリーヌも想像できない。魔法の大会に出そうだけど、光属性は珍しくてあんまり公にしたくないみたい」
「ああ、光属性ってだけで、教会……この場合は光神教だが、寄ってくるからな」
「僕も師匠も使えるけど」
「内緒にしてるからな。それに光属性の女性を狙うぞ」
「え、なんで女性」
「選ばれた聖女って奴だ」
聖女、魔王とかいないんだよね? 必要かな? 一人じゃやれることって限られてくると思うけど。
「なんか、闇を見た気がする」
「まあ、その勘は正しいが、光神教の信者や神官の前では言わないようにな」
師匠が苦笑する。
うちの領地、光神教の信者ってほとんどいないんだよね。精霊教会のフルク祭司様が頑張ってるからだと思うんだけどね。
精霊がたくさんいるせいかも。
ドワーフの人たちが精霊推しだから感化されてるせいもありそう。
「わかった。絶対言わない」
その日はポーション作りに涙目になっていたチャロに師匠が他の錬金術を教えてた。
ポーション瓶は作れるようになったみたいだ。
お金稼げるね。
俺はポーションを作り終えると、ガラスを作っていいとお許しをもらったので、ラヴァと炉に向かう。
レースガラスを作り出したハンスは凄い。透明なガラスも、俺のヒントだけで作りだした。
俺は前世の技術を知っている分先を歩いてるだけだ。
もっと、その先に行きたい。
俺だけのガラスを作りたい。
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